この汚らわしい、美しき世界の感想一覧

北埜とらさん
評価:☆☆☆☆

>この世界のほとんどの人間は、この世界を一点の曇りもない美しい世界だと思っているらしい。

 のっけから自分語りのようで恐縮です。舞台は現代日本だと思うのですが、現代日本が舞台になっていることに違和感を覚えてしまうほどに、この現代日本はどこにあるのだろうかと思うのですよね。いや、「ホームレスの女の子がごみ拾いをして生活している現代日本」がどこにあるのだろうと思うのではなく、「この世界のほとんどの人間は、この世界を一点の曇りもない美しい世界だと思っている現代日本」がどこにあるんだろうと思うんです。ネットを見ていると、今の日本の現状を「一点の曇りもない美しい世界」だと思ってる人ぜんぜん見かけないんですよね。むしろどんどん腐ってだめになっていく日本に対する憂いや諦念が蔓延しているように見えて、そういうものに触れ続けると私にもどんどんそんな風に見えてしまって。私がネットに毒されすぎなだけなのかもしれませんが……。これは見下しているわけでも、だからだめだと言っているわけでもないのですが、アキラさん、若いなと思います。敵視している人々が"この世界のほとんどの人間"だと思っている点。若者らしい視野の狭さと言うか。だからこそ、彼女が若者らしさを持っているからこそ、本作終盤の山場シーンの叫びが強く響いてくるのでしょうね。(という感想を抱いている私が"この世界のほとんどの人間"なのだと言われれば、まあそうなのかもしれません)
 ヤブクロンかわいい! イーブイやピカチュウが席巻している今大会ですが、普段あまりスポットライトを浴びていないようなポケモンの魅力を再発見できるのもポケ二次小説の醍醐味ですよね。そのヤブクロンが「餌代がかからない」と表現されているのがなるほどなと思いましたし、ポケモンセンターの煩雑な手続きでモタモタさせられたり、何より「モンスターボールに入れられて棄てられたポケモンの死骸がごみ収集車から発見される」というニュースが、ポケモンのいる現実世界の壮絶なまでのリアリティに溢れていて、凄いなあと思わされました。
 それまでの鬱憤のすべてを一気に晴らすかのような、 >「いい加減にしろ!」 からの一連の叫びが凄く好きです。ずどんずどんと響きました。このシーン本当にカッコいいなあ。からの、一番最後の一節なんですよね。 >これだからやめられないんだよな。どんなに辛く苦しくても、この世界で生き続けていくことは。 ううん、かっこいいですね。逞しい。泥沼の中で生きている彼女は強いし、綺麗だし、眩しいです。
 この作品がR-15指定になっているのは差別的表現が含まれているからだと考えています。暴力表現でR-15つけてる作品は数あれど、ポケ二次界隈でこういう意味合いでのR-15作品を目にすることは個人的にあまりなかったので、非常に意欲的と言いますか、切り込みづらい場所にあえて挑戦されたという意味で、この作品と作者さんには敬意を表したいと思います。投稿お疲れさまでした!

まーむるさん
評価:☆☆☆☆☆☆☆

最後のバトルからの盛り上がりからのすっきりとした終わり方は、このコンペの中で一番だと思う。

照風めめさん
評価:☆☆☆

世界のクソさや己の無力さ、自己へ向けられる周りからの圧や軽蔑は少なくとも誰もが感じることではあり、そこに正面からぶつかり合った本作は称賛に値します。
特に最後のバトルでヤブクロンが進化して相手を撃破するのはベタですけどカタルシスがあって良いですよね。熱くなります。
さて、本当に申し訳ありませんがわたしはこの作品とは合いませんでした。以下、何故合わなかったかを考察したので書きますが、作品に対する大きな解釈違いの可能性を孕みますので、ズレていたら何言ってんだこいつと流していただければ幸いです。

・敵の配役について
本作は世界や社会への不満ではあり、主人公は一般的には「善」と呼ばれる人たちへの怒りを度々ぶつけていました。しかし、実際に主人公達が戦ったのは一般的には「悪」であるチンピラでした。(チンピラ達もちょっと扱いの雑さを感じました)チンピラ達もこの世界における普通になれなかった落ちこぼれ的存在だと思われるので、主人公とは「一般人」より近い属性にあたると感じます。その両者が戦ったところで、「クソみたいな世界でクソ同士が潰し合ってる」だけで、この世界の人間達からしたらネットニュースにも記載されないような些事に当たります。
その中で必死に主人公が、自分は人形じゃない、こんな自分でもプライドがあって、生きる命なんだ、と叫んだとしても、これは主人公の成長に繋がるわけではなく、世界に一石を投じたわけでもないので、空虚に感じてしまいます。(無論、空虚さを狙ったのであれば大成功ではありますが……)
なので、本作がクソみたいな世界に自分なりに一石を投じるんだ! というテーマの作品であれば、本作の敵は「一般人」の属性に近いもの。いわゆる善良な人間が適切になると思いました。

・主人公の一人称について
本作は随所に主人公の色眼鏡を地の文に感じました。
主人公に対しては言い分への理解こそ出来ても共感はできなかったため、主人公の一人称で語られた世界が常に主人公というバイアスがかかったものになり、素直に受け入れることができませんでした。こういう感性を持ったキャラクターで一人称を成立させるには、もう少し工夫が必要だったと思います。

力のある作品であることに間違いはないので、もう少し読者層を意識した作風にすると評価は大きく変わったかと思います。

ptさん
評価:☆☆☆☆

現実世界にポケモン世界を落とし込んで、その上で汚らわしい世界を見つめる主人公と、掃きだめの鶴のようなラティーシャさんとの出会い
そして胸のすくような汚れた世界に対して差し込む一筋の美しい友情のカタルシス
ポケセン難民にゴミ処理とはいえ仕事とスマホというツールを与えるボスの存在も気になるところです

思うところは多々あれどそれを語るのがこの小説に対する感想にふさわしいものとは思いません
が、良いお話だとは思います

円山翔さん
評価:☆☆☆☆☆☆

 別のところで略語について指摘させていただいたのですが、この物語で「ポケセン」という略語が特に気になりませんでした。地の文がアキラ視点の一人称であること、アキラ自身がポケモンセンターをポケセンと呼んでいることに起因するものと思われます。
 全然違う話かもしれませんが、蓮の花は綺麗な水の中よりも、汚い泥水で育った方が綺麗な花を咲かせると言います。この物語を読んでいて、そんなことをふと思い出しました。私たちが見ているのは綺麗な世界で、その裏にはなにかしら汚いものが隠れていることもある。未だに肌の色による差別はなくなっていないようですし、家を持てない人が少なからず存在するのも本当で。物語の中で語られている事実なんですよね。そういう世界で生きている人や生き物って、蓮の花のように美しく見えてしまうものなのだと思うのです。それは見てくれのみすぼらしさとは関係なく、心の美しさなんだろうなって。ヤブクロンをこういうポジションで登場させているのにも好感が持てました。

ラプエルさん
評価:☆☆☆☆☆☆☆

いやあ、重かった。重かったです、すごくずっしりとしたテーマで…それでも最後、ほんの少ししか問題は解決できてはいないけれども、すっきり物語を締めていただいたおかげでいい気持ちで読了できました。

…けれどもこの作品を読んでおいて、やっぱりいい気持ちだけでは終われません。自分は人を差別したり、臭いものに蓋をして目を背けて生きているんだということを痛感させられました。
ホームレス、びっこ、黒んぼ、過激ながらも身近な言葉。見えています、都会に住んでいれば尚のこと。どうしてそんな暮らしをしているのか、どんな人柄なのか、よく知りもしないまま決めつけで印象をつくって、避けて、見えないフリして生きている。

> 「……だから、そうじゃない世界に生きてるやつは、最初からいないことにされるんだ。目を向けてもなんの得もない、守っても手柄にならない、だからシカトするんだよ。暴漢に襲われるホームレスの女も、足の不自由なイーブイも」

無視、都合の悪いことはシカト。そうやって生きていることを思い知らされたこのセリフ。
これを書けたのはすごいです。本当にすごい。俺からすれば、無意識に当たり前だと認識してしまっていることを、もやもやしてうまく表現できない感じを、文章にして鋭く言い当てている…はあ…すごい…
これを読んですぐに考えを正しまっすぐ生きていくことができるかと問われればそれは難しいですが、このシーンは確かに爪痕を残していきました。素晴らしいです。

いい意味で、「ポケモン」小説でなくてもいいのかなあと思いました。
ホームレス、黒人、捨てペット。全部この世界で起こっていることに置き換えれば、そのまま現実のノンフィクションとしてさえ読めてしまう。けれどもそれでは、題材が重くて読むには少し抵抗がある…俺みたいな人間が少なからずいると思います。
そんな中で「ポケモン」という題材を入れ込むことでとっつきやすさが生まれ、バトルの最中助けに来てくれる存在を描くことでドラマチックな展開になる。読みやすいんですよ、読みやすくてそれでいて、これは現実の話なんだと置き換えて読むことができる。読みやすさと残酷なくらいのリアリティ、これを両立させていることが本当にすごいです。凄まじい力作でした。

夜月光介さん
評価:☆☆☆☆☆

30・この汚らわしい、美しき世界 主張するビンゴ・2

1ビンゴ目

むしタイプのポケモンを登場させる

ストライクが登場しています。

本文を一万五千字以上にする

29000文字。成立しています。

ポケモンを七種類以上登場させる

ニャース ヤブクロン イーブイ コドラ ストライク ユキメノコ ダゲキ……
進化したダストダスも含め、7種類以上は確実にいます。

はがねタイプのポケモンを登場させる

コドラは『はがねタイプ』のポケモンです。

格闘タイプのポケモンを登場させる

ダゲキは『かくとうタイプ』のポケモンです。

2ビンゴ目

イーブイかピカチュウを登場させる

イーブイが登場しています。

劇中でポケモンを逃がす

登録者権利を抹消すると言う意味で『逃がす』と言うのは良い発想ですね。

格闘タイプのポケモンを登場させる

同上

劇中でポケモンを進化させる

ダストダスに進化しています。

ポケモンセンターを出す

ポケモンセンターでイーブイを治療するシーンが描かれます。

ストーリー評価 75点 減点 なし 総合評価 75点

『感想』

斬新な発想と王道的展開。家や親が無くとも、少女は逞しく成長していく。

斬新さと王道と言うものは、『組み合わせる』のが難しいとされています。
王道的展開と言うのは『オールドスタイル』であって、形式から外れない事が多い。
斬新さは枠から飛び出すと言う意味合いが強いので、一見すると相反する要素に見えます。

まず、主人公を『ホームレスのゴミ漁り少女』と言う、社会から忌み嫌われる様な
存在にした事が大胆です。社会から拒絶された存在であるが故に口調が乱暴になり、
他人になかなか心を開かない。そしてバックパッカーの黒人女性と出会い、
人間的に成長していきます。ヤブクロンがダストダスに進化すると言う部分、そして
イーブイが治療を受けて元気になっていく過程と、彼女自身がただ悪戯に
他者を避けるのでは無く、親身になって心配してくれる人間に心を開いて
『親友』になっていく部分を同じ時の流れで書く事によって、
『一緒に大きくなっていく』仲間達の成長物語を書く事に成功していると思います。

悪人をこれでもかと言う程嫌な存在として描く事で、純真な心を持っている
主人公との対比を生み出し、黒人女性の優しさを際立たせる。人間は比較する
生き物なので、こうやって解り易い位比較対象があると小説自体が凄く
読み易くなるんですね。小説が読み易いと言う事は多くの人がとっつきやすいと
言う事なので、それは大きな『武器』になっていると思います。
それと、『何時もと同じニュース』『雑な御役所仕事』と言うシーンを入れる事で
何も変わらない、灰色の世界にいると思っている少女の心情を表現し、
それが黒人女性の登場によって突然カラフルな色合いを取り戻す様な
『主人公の心』をしっかりと表現しているのが印象的でした。

この作品は、上位入賞を狙える作品だと思います。
2位~5位争い辺りは確実かな?個人的にはそう感じました。

ソラさん
評価:☆☆☆☆☆

世の中には明るく輝いてるプラスの部分だけでなく、暗く濁ってるマイナスの部分も存在して例え暗くても濁っていようとも懸命に生き続ければいつかマイナス部分で生きる存在でも輝くことができる!
暗い世界に生きる存在がそのまま暗いままかと言われればそれは違っていて、何かがきっかけで大きく変わることもできる!
そう強く伝えているように感じる作品でした!
明るい世界にいる存在は暗い世界に生きる存在を見てみぬ振りをするという意見は私たちが存在している現実世界でも当てはまり、共感できる部分でしたね。
また障害を持つ生き物だからと捨てる行為は社会風刺の一面を表していて作者さんの強い意思を感じました!

あしゃまんさん
評価:☆☆☆☆☆☆

 目を背けたくなってしまうようなもの、というのは確かにあると思います。そこから目を背けずに、しっかりと描ききったなぁ、と感じました。
 そういうものをも引っくるめて、この世界は美しいんだなと思わせてくれる話でした。

 楽しませていただきました!

乃響じゅん。さん
評価:☆☆☆☆

世界観がいいんですよね。
ネカフェ難民のポケモン版のような、ポケセン難民の女の子のお話。実際いてもおかしくないですよね。
また、彼女の視野の狭さや余裕のなさといった精神状態の悪さも、独白から伺えるのがもういかにもリアルで。そんな中で、ヤブの話になった途端に彼女の中に余裕が生まれるんですよね。仲間思い、ポケモン思いなんですよ。
ラティーシャの登場があまりに都合がよすぎて、なんか騙されてるんじゃないだろうな……と気が気ではなかったのですが、最後までいい人で良かったです。ラティーシャさんとの出会いが彼女の人生を好転させるきっかけになることを願うばかりです。

ただチンピラの行動にいくつか疑問があったので、そこだけが気になったかな、と。例えば後半、一人で復讐に来るという勝ち目が薄くなるような行動を取ったりとか。
「イーブイもヤブクロンみてえな毒タイプになっちまう。俺たちで助けてやんなきゃ、なあ?」のところもちょっとキャラが違うように感じられました。足を引きずっててゴミみてえでお似合いだとか、そういうセリフの方が合ってるんじゃないかなーと思いました。
このシーンも主人公に対する言いがかりをつけたいのはわかるのですが、チンピラ側のスタンス(特にポケモンに対しての)が中途半端な気がしました。彼らがどこまでクズなのかについても精査すれば(イーブイを金に換えて遊ぶ金が欲しいのか、生き物をいたぶりたい趣味があるのか、いっそ生き物を殺してみたい願望の持ち主なのか)、このお話の完成度はより上がるのではないかと思いました。

文章の読みやすさ、作中全体に流れる雰囲気はかなり好きです。最高です。ありがとうございました!!

カイさん
評価:☆☆☆☆☆

この作品はいい意味で、今企画屈指の「これをポケモンでやるか!?」枠でした。重い。テーマがものすごく重いし、実際、作品の表現としてかなりぎりぎりなところを攻めていらっしゃる。つまり、作中に複数見られた差別用語のことです。もはやアウトと言ってもいいかもしれない(※後述)。でも、私がこの作品を「アウト」と評したくないのは、作者様がもちろんそれを承知の上でその表現の使用を選び、R15表記にした、と信じているからです。そういう意味も含めた、「これをポケモンでやるか!?」です。
いやあ……これをポケモンでやるか~~~。すごいなあ~~~。でもこれはやっぱりポケモン小説なんですよね。アキラとヤブの関係が、ヒトとポケモンの関係がすっごく輝いていて、大好きです。ヤブの餌となるごみが少なかったらちゃんとパン買って食べさせてあげるとか、バトルでの息の合ったコンビネーションとか、進化のシーンとか、かなり繊細緻密かつ王道の描き方で、はああぁぁもうぅぅ好き(語彙が溶けた)
そしてこれを腐ったごみのような世界観に置くからこそ、より映えるのでしょうね。汚らわしいごみのような世界で生きる、ごみの形をしたポケモンと人間の美しい関係って、もう対比として完璧な構造じゃないですか。はーすごい。
この作品のメッセージについては、ちょっと軽率に語れないので、いったん置かせてください。けれどもアキラやヤブやラティーシャさんたちの生き様は、輝きは、しっかりとこの胸に刻みました。ありがとうございました。彼らに恥じない生き方を、私も考えられればよいなと思います……。

投稿お疲れ様でした!

PS
差別用語の件についてですが、やはりこの企画には少なからず「表現者」が集まる以上、R15表記だけに留めず文頭または文末に「この小説が差別用語を含むこと」「差別や偏見を助長する意図は含まないこと」についての注釈が必要だったのではないかと思います。
以下、十分な理解をして使う必要があると私が感じた言葉について、列記しておきます。(作者様は十分に理解をされていると思うのですが、万一にでも軽率な表現の伝播がないように、という意図です)

・びっこ
・黒んぼ
・外人

デブ、クソ、馬鹿などの明確な不快語は省略しました。
もちろんいつかの未来、このような言葉はなくなるあるいは「そんな意味を含んでいた過去があったんだなあ」と使われる側が意識しないようになるのが理想ですし、私たちがそうしていかねばなりません。しかし現実はまだまだそれとは程遠く、敵はあまりに巨大でしょう。それこそこの作品で描かれていた通りに。
正直このPSを付けるかどうかは非常に悩んだのですが、この作品自体および作者様、そしてこの表現を作品として受け入れている企画主様への敬意として、苦しい思いで追記したことをどうぞご了承ください。

BoBさん
評価:☆☆☆☆☆☆☆

 タイトルから受けた印象よりも明るくて良い意味でびっくりしましたね……! やっぱり最終的にはハッピーエンドっていうのが僕はやっぱり好きです。その一方で、警察やお偉いさんへの皮肉や、アキラとラティーシャの二人が直面する差別といったシビアで暗めのテーマもあって、それぞれがバランス良く盛り込まれているのがすごいなぁと思いました……!
 ヤブくん可愛いです……! 傘持ってるの可愛いし、イーブイにも優しいし、進化してよりいっそう頼もしくなるしで、すごく将来が楽しみな子ですね……!
 厳しい現実に立ち向かうアキラ達の強さ、響きました! ありがとうございました!

猫村さん
評価:☆☆☆☆☆

好きです(告白)
ポケモンを逃がすっていうテーマをこんなにも現実的で専門的に扱うの凄くないですか?
ヤブがひたすらかわいい。
日本とかアメリカとか、現実よりにしていたのには理由があるのでしょうか

rairaibou(風)さん
評価:☆☆☆☆

 この小説の作者さんは多分小説めっちゃ上手い人だと思うんですよ、これだけ長い話をダレることなくまとめていますし、描写だって素晴らしい。
 ただ、この手の話に持っていくのならば登場人物とストーリーをもっと捻ってほしかったです。最序盤で感じた「あー、こういう話かー」って感じた印象がそのまま最後まで続いてしまいました。こういうテーマでやるからこそ、もっと巧妙にストーリーの中に主張を隠すように展開してほしかったです。
 もう一つよくわからないところは敵役のキャラクターです。この作品は主人公とその相棒の社会的な立ち位置からくる差別や偏見が非常に大きなテーマであるのにも関わらず、その敵役が因縁をつけてきたチンピラとその親分というのが個人的には腑に落ちなかったです。
 この敵役だったら、例えば『大金持ちのお嬢様と白人プログラマー』が主人公だったとしてもなんの問題もなく敵役になれてしまうと思います。このテーマでやるならば『大金持ちのお嬢様と白人プログラマー』には敵対しないけども『ホームレスの女と黒人』だから敵対したと言うような敵役にすべきだったと思います。
 個人的にはここらへんが気になりました。このへんが納得できていれば社会派の小説としてもっと星をつけたと思います。

花鳥風月さん
評価:☆☆☆

ここにきてガッツリ社会派作品!個人的な話、わたし自身も社会派に近い作品を書かせていただいたことがあるのですが、ここまで生々しく、そして真摯に書かれた作品は初めて見た気がします。

ゴミ収集車の中のポケモンの死骸とか、本当にあの世界であり得そうですね。現実世界に近い雰囲気に、心が締め付けられそうになります。
ヤブクロンのヤブくんちゃんかわいいですね。こんなにかわいいゴミ袋がこの世に存在するのかと思うとよしよししたくなります。けなげだ……。

>「申し訳ないのですが、モンスターボールに登録されているトレーナーの同意と同伴がないと、原則として治療は行えないんです」

いやいやいや!!!これはふざけんなって言いたくなりますよ!!世知辛い世の中だなぁと強く思ったワンシーンでした。
ポケモンの命がかかっていても、なお機械的な返しをする現代社会に生きる人。ここすごい対比だなぁって個人的に強く思います。

バトルの描写が上手いなぁってすごく思いました。臨場感をそのままに、それでいてアキラさんの心理描写も盛り込まれていて。ラティーシャさんが助けに登場した時「美人な神様っているもんなんだ……フヒヒ」とほくそ笑んでいました。

>「役に立つだの立たねえだの好き勝手言いやがって! あたしたちはてめえの子供部屋に置いてある人形じゃねえんだ! あたしもラティーシャもヤブも、ペダルもイーブイも! みんな自分が生きるために生きてんだよ! てめえのために生きてんじゃねえ!!」
このセリフすごい好きです。優しいとは言い難い世界ですが、それでも登場キャラ達がみんな必死で生きているんだという熱い思いが伝わってきます。
からのヤブの進化。とても胸が熱くなる展開です。これが美しき世界なのかなぁと個人的に解釈しました。

これは完全に好みなのですが、この物語は主人公の1人称でつづられています。その分、主人公の心情や考えがストレートに書かれているんですよね。
ただ裏を返すと、主人公が終始上からものを言っているようにも捉えてしまいました。こういう人って、周りに1人はいるだろうなとも思いますが、ものすごく共感できるかと言われると「?」と感じたところが多かったのが本音です。
ただ、ものすごくリアリティがあると思います。こういう人間を書くのってすごく勇気がいるかと思いますが、ここまで濃密に書かれた作者さんの技術に脱帽です。
投稿お疲れ様でした!

坑(48095)さん
評価:☆☆☆☆

 世の中のうつくしくない部分を巧くポケモンの世界に重ねて、ていねいに描写されていたと思います。
 お話の軸とはすこしズレた箇所になりますが、お休みが1か月もあるとか、ポケセンおねえさんが型通りの対応しかできないとことか、ちょいちょい心を抉られながら読んでいました。この国ではたらく人間には読むのが辛い……
 私はつい自分のみたくないものや世間的にあまり歓迎されない類のものは小説でも描かないようにしてしまうんですが、この作品では敢えて書いているんだという力強い思いが込められているように思いました。素晴らしいと思います。執筆お疲れ様でした。

Pさん
評価:☆☆☆☆☆☆☆

掃き溜めのような場所でも粗野ながら矜持を持って生きる主人公の姿、その視点から見る世界の様子はモニタのこちら側を強く反映しており、その憤懣に満ちた棘のある言葉の端々がこちらをも突き刺してくるような非常にメッセージ性の強い作品に仕上がっていると感じました。
そうした生活の中で一時の夢のように訪れた話として、このタイトルはとても似合っていると思います。主人公がラティーシャとの出会いを「運命」とまで呼ぶこと、主人公の常の生活の中にこのような美しい経験など滅多にはないこと、そしてこの記憶を支えにしていくことが大げさではないものとして想像でき、最後の一節がすとんと腑に落ちる。この話が美談で終われば終わるほどあの一節が説得力を持ってくるが故に、うまくいきすぎているようにすら見える最終盤の展開でさえするりと飲み込めてしまいます。
家や仕事を持てない「ポケセン難民」やポケモン治療に必要な所有者の承諾など、現実世界での貧困の様子や社会システムの欠陥部分もうまくポケモン世界に置き換えられているのもそうした作品性をしっかりと裏打ちし支えていると思います。
主人公が暴漢に「デブ」「ブス」と罵倒されるシーンでは主人公を無意識にある程度美しい人として想像していたことまでも突かれたように思い、作中の「自分達のような人間は最初からいないことにされる(大意)」という言葉が重く響きました。偏見、抱いている人間は自覚しない……

草猫さん
評価:☆☆☆☆☆☆

凄い......「これをポケモンでやるのか!」という素直な驚きと感心、そして生きていく中での教訓を感じた作品だったと思います。 自分はこの作品を最後に読んだわけなのですが、本当にスッキリする感じでしたね......自分の心も、物語の内容も。
前述の通り、色々な社会問題ををここで引っ張り出してきた事が、やっぱり印象に残りましたね......。 アキラの言う通り、この世界というのは誰もが幸せに暮らせる世界では無い。 矛盾に満ちています。 だからこそ生まれる苦しみに目を向ける必要があると思わされました。
そしてもう1つ。 これは自分にとって深く心に残った事です。 アキラが叫んでいた言葉......例え負けても、這いつくばってでも立ち上がって生きる事。 これは本当に心に刺さりました......やっぱり、日々の生活の中では失敗はします。 何度も苦しみます。 でも、それでも......って事ですよね。 とても心に残り、考えさせられました。
投稿お疲れ様でした!

雪椿さん
評価:☆☆☆☆☆

タイトル通りの話ですね(上手く言葉にできていないようだ←すみません……)。
冒頭だけで内容を察せることができるようになっているのは有難いなと思いました。冒頭で「そういうやつが来るのか……」と思っていると、思った通りそれ系の言葉が次々と。R15はそういう意味でも設定されていたのですね。
モンスターボールに入ったままのポケモンが、そのままプレス機で潰される……。考えてみると非常にアレですね。ニュースにもなっている辺り、この世界では本当に起こっているのだなと真剣に考えることができました。
最後まで読んだ後も、あれこれと色々考えることができる作品をありがとうございました!

早蕨さん
評価:☆☆☆☆

 ポケセン難民とは、また凄い角度から来ましたね。
 実際にポケモンの世界にポケセン難民があるとすると、それってトレーナーと何が違うのなんて思いますが、きっとトレーナーは宿屋に泊まるんですよね。原作にはホテルってあんまり描かれないですが、各町にいくつもあっておかしくないんですよね本当は。
 権力と金を持った奴だけが得をするこの汚らわしい世界で、アキラさんとラティーシャさんの関係性は確かに美しいですが、これを美しいととらえるのはアキラさん視点なんですよね。この物語は社会への不満を持ったホームレスの女性視点のお話だと思うので、どうしても彼女寄りにお話になってしまうので、若干ニュートラルさがないような、そんな気もしました。
 
 バトルのシーンですが、 彼女らにとってあのポケモンバトルは試合じゃないんですもんね。ほとんど生きるか死ぬかを賭けたバトルですし、普通にバトルを見ている時よりも猛烈に緊迫感が出てていいなあって思います。
 アキラさんきっと国保みたいなのにも入ってないんだろうな、なんて……。
 再びラティーシャさんとアキラさんが、立場は違えど持ってる財産は違えど、人種は違えど、その人個人を見れる人のままで美しく再会できる事を祈ってしまいますね。
 投稿お疲れ様でした!

トビさん
評価:☆☆☆☆

アキラのキャラの作り込みがすごくて最初から引き込まれました。言葉の端々や思考の末端までアキラの視点で物語が描かれていると感じたし、アキラからみるこの日本という国や自分を取り巻く環境はリアルの日本を風刺しているのかなと思って読みました。
天気や敵の放つ冷気などで一人称の心情や作品の世界観を表現しているのが上手いなと思います。勧善懲悪や、現代を取り巻くセオリー通り、を真っすぐに表現した意欲作ですね。
アキラがなぜポケセン難民にまったのか、そもそもポケセン難民がどんな事情で生まれてしまったのかは分からないんですが、彼女にとっては今の生活を続けていくことが最善なのだと自分で思えたところが、アキラらしいなと思います。

逆行さん
評価:☆☆☆☆☆

社会風刺系のお話といってもよいのでしょうか。すごく独特な味わいを持つ作品であると感じました。

ただ単に社会を批判する訳ではなく、うまいことポケモン世界に置き換えているのが、個人的には凄く好感を持ちました。

収集車のプレス機でボールごと潰されるポケモンがいるとか、想像すると恐ろしいですね。

他にもそのポケモンのトレーナーでないと、ポケモンを治療する許可が降りないとか、トレーナー情報にアクセスして書き換えすることができる技術者がいないとダメとか、そのあたりがリアルだったかと思います。設定がよく練られているように感じました。このお話を作るときにすごく考えて作ったことが伝わってきます。

最後に不良に襲われてヤブクロンが進化するシーンが熱いなあと感じました。進化というイベントを巧く利用したなあと思います。

それにしてもあれですね。ポケスト25はイーブイをケガさせるお話多いですよね(笑)このお話のイーブイも結構痛々しかったです。足が治らないイーブイというのを差別問題に絡めてきたのも流石だなあと思いました。イーブイというポケモンは確かに人気ですが、バトルで使えなかったり元気に飛んだり跳ねたりはできないイーブイがこのように捨てられてしまうのは悲しいことです。

このお話で「伝えたいこと」というのは非常に明確であり、大変メッセージ性の強い作品であると感じました。最後の段落で語られているとおり、美しいと思われている世界の裏側には、苦難の連続の人生を送っている人がいる。そのことを良く描いている作品であると感じます。

それで、このお話すごく面白いんですよ。面白くて完成度もめちゃくちゃ高いんですよ。ただ、ちょっと主人公の言葉がきつ過ぎたかなあというのが少しありました。

この話の悪役って差別用語使っていたじゃないですか。一方で主人公の方も「クソ」とか「バカ」とか言葉が乱暴で、差別用語ではないものの、ちょっと同じ土俵で戦っている感じがありました。そういう言葉を使うことで主人公の必至さを表現しているのかもしれませんが、ただ一方で少し引いてしまって感情移入の邪魔をしているようにも思えます。

なぜに自分がここに引っかかっているのかというと、昨今何か悪いことした相手とか失言をした相手をネットで執拗に批判する傾向があって、勿論批判すること事態は良いのですが、明らかに誹謗中傷するような物言いだったり、必要以上の攻撃的な発言をしたりするのがとうしても目立つんですよ。ときには、絶対的に悪いとされることをした人には何を言っても良いと思っているかのような発言をする人もいたりします。

それで、この主人公は彼らに比べたらそこまで酷いことは言ってないものの、ちょっと片足突っ込んでいるかなあという印象がしてしまいました。なのでもう少し優しい言葉で社会批判をしてもらえると、主人公に感情移入しやすくなったと思います。すいません、ちょっと、これは自分の個人的な考え方みたいなのがどうしても入ってしまいます。

とはいえそれを抜きにして考えてもこのお話はとても意欲的で、よくぞ書き上げたと思います。主人公が言っていることはもっともで、日本にはまだまだ救わなくてはいけない人がいると感じます。

ポケモン二次創作でこのようなお話はとても貴重で、しっかりと存在感を放っていたと思いました。投稿お疲れ様でした!

しろあんさん
評価:☆☆☆☆

社会風刺が強くきいた、面白い作品だったと思います。ポケモンがボールの中に入ったままゴミ収集車のプレス機で潰されるって怖すぎますね……もし日本にポケモンが存在していたとしたら、これはかなり重大な社会問題になりそうな気がしました……!それ以外にもポケセン難民など、現代で起きている様々な社会問題をこの作品は上手くポケモンと絡めてきていて、あるいみ異彩を放っているように感じました。

アキラとヤブがとても良いコンビですよね……仕事仲間としてもそうですし、普段から二人の仲が良いんだという事を作中の節々で感じ取る事ができました。アキラがラティーシャにヤブとの出会いについて語る所とか、最後辺りのシーンでヤブがアキラ達を助けるためにダストダスに進化するシーンとかすごく良かったです!
ポケスト25で可哀想な目に遭う事に定評があるイーブイですが、まぁとても可愛らしかったですね……可哀想な目に遭ってるのが可愛いとかそういうことではなくて←(( ダストダスが傘を回しているのを見て、きゃっきゃと笑う所が特に可愛くて好きです!最終的にはちゃんとした保護団体に引き取ってもらえて安心しました。
最後のシーンの後でアキラとラティーシャはお別れしてしまうけれども、またいつか彼女達が再会してお互いの近状とかを色々話していたら良いなぁと思いました。
投稿、お疲れさまでした!

水のミドリさん
評価:☆☆☆

ヤブクロンくん傘もってるの? かわいい! でも君の足の長さじゃ意味なくない? 足元びっちゃびちゃにならない? ゴミ袋の中に水はいったら気持ち悪くない? お腹がすいても食べるの我慢しているあたりお気に入りなんでしょうねえ。物語の最後で進化しましたがこれからも手放さないんでしょう、雨から顔は守れるようになったけどシルエットが完全にト◯ロ。
『あこぎな方法』『びっこのイーブイ』『素手ゴロでポケモンをぶちのめす』……ぉおう、読んでてドキッとくる表現ですね。主人公の育ちの悪さや周囲の環境がどんなだったかうっすらと想像できます。うっすら、というのが上手くテーマを通しているなァと思ったのですが、主人公の一人称で描写された“汚らわしくも美しい世界”が、彼女の目を通して読み手に伝えられるのですね。
ラストシーン、進化を経て大逆転ってベタですけどやはりアツい。「そうだよな……ヤブ!!」からの空白三行がめっっっちゃクールなアングルチェンジ! アニメなら絶対ここでOPのアレンジ挿入歌がつけられてるとこですやん! かっこEEEE! しかし欲を言うならばもっと描写が読みたかったですか。セリフに頼りすぎるのではなく、踏みこんだときに跳ねる水たまりとか、口の中に入った泥の味とか、セリフで喋らせるよりも伝わるものがあると思うのですよ。主人公がふくよかだとかけっこう後出しにされた情報ですし、ビジュアルに関する描写はとくにキャラ登場時に書いてほしいです。

 相変わらず降り続ける雨と、人っ子ひとりいない早朝という時間も相まって、まるで世界中にあたしとラティーシャ、それからヤブとペダルの2人と2匹だけが取り残されてしまったんじゃないかと思うくらいの孤独感が、あたしの心の中に重くのしかかっていた。

ここの文章、物語の核心を端的に表していてうまいなあ。瀕死のイーブイを保護してもポケセンで治療が施せない、チンピラを撃退したところで警察は動いてくれやしない。主人公が善行をしようが悪意にさらされようが世界はちっとも変わらない。孤独ですねえ。
そもそも主人公ちゃん、自分の世界を変えたい、ホームレスから脱却したいって考えているのかしら。テレビのニュース番組も毛嫌いして見ない、他人と積極的に関わりを持とうとしない、1杯百円のコーヒーも買い渋る……。『財布は貧しくなっても、心まで貧しくなっちゃいけねえ。』って思っている若い主人公がラスト『これだからやめられないんだよな。どんなに辛く苦しくても、この世界で生き続けていくことは。』って現状で満足してしまっているの、ある意味どん詰まりじゃないですか。ゴミ拾いは早朝に終わるとして、残りの時間はなにしてんの? パチンコ? これだけ他者とコミュニケーション取れる若い労働力は探せば必要としているところあると思うのですけれど、これでいいのかなあ。いやそう杞憂してしまうのは私が“この世界のほとんどの人間”だからなのでしょうか。チンピラが遊び半分で振りかざす悪意に絶望し、こんな悲劇のヒロインを知らない世間様に毒を吐くばかりで、自分の環境を変えようとは思い至らない。それだとしたらこのお話……なんだか救いようがないですよ。ラティーシャさんが「一緒に国へ帰ろう」とか誘ったり、もしくは彼女との出会いで主人公の知見が広がれば明るめエンドだったのですが。そもそも主人公70歳くらいのおじいさんだったら純粋に楽しめたかな。

フィッターRさん

 拙作でございます。今回はこれまでポケストに投稿してきたどの作品ともかなり違う作風の作品になったので、せっかくなので章分けの*を番号にしたりして仮面も深めに被ってみました。それでも『女性同士のバディもの』『行間開けが必ず3行』という特徴はそのままなので、わかる人にはわかったかも。
 以下、いろんな解説などなどを項目に分けて。

○コンセプトについて
 今年の7月、旅行で歌舞伎町のカプセルホテルに滞在した経験が、本作のベースラインになってます。
 いかがわしい店に人が集まる夜が嘘のように思える静かな朝の繁華街が、梅雨の開けていない雨続きの空も相まってやけに印象的で、こういうところを舞台にしたお話を書いてみたいなあ、と思ったのがすべてのきっかけです。
 その旅の直後、貸倉庫を家代わりにして暮らす『貸倉庫難民』のことを取り上げた東京新聞の記事(https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201907/CK2019071802000162.html)を読んだことがきっかけで、ポケモンセンターに暮らすホームレスを主人公にすることを思いつき、話のおおよそのコンセプトが決まりました。あとは例年同様、テーマに合わせてこのコンセプトを加工してお話の骨組みを確立させました。

○タイトルについて
 実は、物語が完成して投稿する直前まで、このお話は、某小人が出てくるアニメ映画のタイトルをもじった『ポケセン暮らしのヤブクロン』というタイトルでした。今も原稿のファイル名はこのタイトルのままです。
 元々、主人公のアキラも『ヤブクロン』と呼ばれて蔑まれている、というような描写をいれることを見越してつけたタイトルだったのですが、字数の余裕がなくてその描写は盛り込む事ができませんでした。
 じゃあこのタイトル微妙だな……と思ったのが投稿直前、すなわち締め切り目前のタイミングでした。そうして2分くらい考えた末に思いついたのが、某宇宙人が出てくる缶コーヒーのCMのキャッチコピーをもじった『この汚らわしい、美しき世界』というタイトルでした。即興で思いついた割にはきれいなタイトルになったなと思っています。

○ビンゴについて
 『ポケモンセンターを出す』というお題があったおかげで、ビンゴの埋め方は結構楽に決められたと思います。
 形そのものに意味を持たせてはいないのですが、せっかくなので以下の条件を設けてビンゴを埋めてみました。

 『縦・横それぞれに、ビンゴした列・リーチした列・3つ埋まった列・2つ埋まった列・1つだけ埋まっている列をそれぞれ1つずつもうける』

 この埋め方、他に誰かやるだろうなと思っていたのですが、結果は誰も同じ埋め方をしていた人はいませんでしたね。
 埋めたマスの条件を満たすこと自体は簡単だったのですが、『原作(外伝作品除く)の地名を劇中に登場させる』というお題を回避することに地味に難儀しました。テレビのニュースが流れるシーンで地名を書かずに済ませるにはどうニュースを切り抜けばいいかを考えるのにはそれなりに頭使ったと思います。ラティーシャの出身地を訪ねるシーンでは、外伝作品の地名であるオーレ地方のアイオポートを使うことで回避しています。

○舞台について
 このお話の舞台になっている繁華街は、物語の原型が出来上がった歌舞伎町のイメージで書いています。作中で度々登場する公園は大久保公園がモチーフになっています。

○登場キャラクターについて
 主人公サイドのキャラクターたちは、このお話のメッセージ性を強調するために、全員『マイノリティである』という面をしっかりきっちり描写することに努めました。
 以下、キャラクターごとのこだわりポイントや裏設定などをつらつらと。

・アキラ
 名前は、ここ数年影響を受けまくっている作家の王谷晶さんからいただいております。
 『学はない』と自称しつつも寿限無の一説を引用したりしているのは、子供のころから貧困層だったわけではないというキャラクターコンセプトを持っているためです。
 肥満体形というキャラクター設定を付けた理由は、現在の先進国において肥満は貧困層に多い疾病であるという現実を反映させたのがひとつ、物語の女性主人公となれば誰もが想像してしまうであろう『痩身の"美人"』ではない、ということを作中ではっきり描きたかったからというのがもうひとつです。どちらもマイノリティであることを強調したいというのが根底にあります。

・ヤブ
 一番最初にキャラクター像が固まったキャラクターです。ホームレスが連れていて不自然にならないポケモンはなんだろう? と考えて、真っ先に考えついたのがプラスチックや金属でも食べて生きていけるであろうヤブクロンでした。傘を差すというキャラクター付けを思いついたのは、進化後のヤブクロンが『トトロのよう』と一部で言われていたことからの発想です。
 もともと彼は進化する予定はなかったのですが、物語のメッセージをちゃんと伝えるために彼が進化することになりました。詳しくは後述。

・イーブイ
 ビンゴのお代消化のために種族が決まった子です。作中でも書いていますが、障害を持っていたがために捨てられた子です。
 最初はこの子がお題の消化のために進化してラスボスをやっつけるつもりでお話を作っていたのですが、この子が進化してラスボスをやっつけてしまうと、結果としてアキラたちの『役に立ってしまう』ことになり『みんな誰かの役に立つ立たないでなく、自分のために生きているんだ』というメッセージが薄れてしまうと思ったので、最終決戦には敢えて欠席させ、代わりに生きる目的がアキラと一致しているヤブを進化させることにしました。

・ラティーシャ
 名前は海外のネーミングサイト『Behind the Name』(https://www.behindthename.com/)を利用して付けました。アフリカ系アメリカ人特有のお名前があるってこのサイトで初めて知りました……
 最初はアジア系アメリカ人にしようかと思っていたのですが、アジア系マイノリティの要素は後述の他の要素に盛り込むことにしたため、アフリカ系アメリカ人になりました。
 バディもののストーリーということで、アキラと同じマイノリティの面を持ちつつ、アキラが持っていないもの――バトルの強さやポケモンを助ける技術資格など――を持っているキャラクターとして描いています。

・ペダル
 ビンゴのお題消化のために登場が決まったキャラクターです。格闘タイプを味方サイドにすることを最初にきめて、そこからコジョフーあたりをまずは考えたのですが、主人公サイドのキャラクターにはマイノリティ要素を持たせる、というコンセプトを定めた結果、大日本帝国統治下の朝鮮半島出身の大山倍達氏がモデルになっていることに注目してダゲキを選びました。この決定に伴って、アジア系にすることを想定していたラティーシャの人種をアフリカ系に変えています。
 本当はもっとバトル以外でも出番を増やしてあげたかったのですが、字数と時間の不足のためにあまり掘り下げることができなかったことが残念であり、申し訳なくもあるキャラクターです。

・レインコートの男
 本作のラスボス。露悪こそがカッコいいことだと思っているフシのある、ネットで多く見かけるタイプの悪人というコンセプトのキャラクターです。アキラやヤブたちマイノリティを追い詰めるマジョリティの象徴ですね。
 実は割と締め切りギリギリのタイミングまで、行動原理がなんなのかが自分でもはっきり読めない人物でもありました。そんな事情と字数が足りなかったことも相まって、描き方がおざなりになってしまったかなとも思っています。

〇レーティングについて
 感想投稿で予想してくださった方もいらっしゃいましたが、流血表現も性的表現もないにもかかわらずレーティングをR-15指定にしたのは、作中で否定される悪人の言葉とはいえ差別的表現を含んでいるためです。

〇字数について
 今回、小説コンテスト参加作史上初となる字数の壁への衝突を経験しました。そのために、カットせざるを得なかったシーンがいくらかあります。もしかしたら、コンテスト終了後に完全版を書くことになるかも。

〇BGMについて
 今回は作業用BGMを結構かけていました。すべてウルトラマンネクサスOSTのものです。シーンに併せて聴きながら読んでみるのもいいかもしれません。
・アキラとラティーシャの最初の会話シーン - リコのテーマ
・3.の冒頭のモノローグ - ハート・ブレイク
・コドラ&ストライクVSヤブ - スペースビースト ~Charge~
・ペダル登場 - ネクサス ~Dash~
・テレビを見ながらの会話 - 孤門のテーマ
・雨の中を歩くアキラとラティーシャ - 張り詰めた空気
・レインコートの男登場 - 魔人降誕
・ペダルVSユキメノコ - ネクサス ~Final Fight~
・アキラの叫びとヤブの進化 - ネクサス ~new Biginning~
・ラストのアキラとラティーシャの会話 - 仲間たち

春さん
評価:☆☆☆☆☆
セリさん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
浮線綾さん
評価:☆☆☆☆☆
ばすさん
評価:☆☆☆☆
ポリゴ糖さん
評価:☆☆☆
はやめさん
評価:☆☆☆
レイコさん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
白銀さん
評価:☆☆☆☆☆☆
クーウィさん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
Lienさん
評価:☆☆☆☆☆☆
ionさん
評価:☆☆☆
不壊さん
評価:☆☆☆☆
くちばシュウさん
評価:☆☆☆☆☆
コメットさん
評価:☆☆☆☆☆
砂糖水さん
評価:☆☆☆☆☆☆☆