しがないきのみの感想

あまもさん
評価:☆☆☆
死ぬ場所は選べないし、自分の未来は選べない悲しさ、移り変わっていく世界の切なさを感じました。自分の命運を知りながらも淡々とした語り口で進められる物語が、生物過ぎない、植物感のする雰囲気を常に感じさせて面白かったです。
花鳥風月さん
評価:スキップ
来世でいいから魔法使いになってオボンさんの思念と一緒にユズちゃんを見守るかオボンのタルトの生地になってユズちゃん一家の誕生日パーティーの食卓に並ばれたい。
しがない花鳥風月のことはむしり取って煮るなり焼くなりソテーにするなり丸かじりするなりしてください(断頭台の上で)。
Pさん
評価:☆☆☆☆☆
意志がある以外はまさに一般オボン、そんな「しがないきのみ」の視点から話を進める発想に膝を打ちました。
同じ木になった木の実を「家族」と称し、悲しくなれば「皮のあたりがじゅわっと疼」き、食べられることを「家族に迎えられる」と呼び、そして自分がきのみであることに誇りを持っている。きのみであることをしっかりと芯に持った語り手のオボンが見る世界は、それを一緒に見ているだけでとても面白いものでした。
木にぶら下がったまま春夏秋冬を過ごす植物のスケール、太陽と水のみで生きられるきのみから見た人やポケモン、そして最後の一文と、この語り手を選択したからこその文言が多く見られ、そういった形で余すことなく設定を生かしている点が好きです。
大きな木、落ちるきのみ、虹と多くの要素を読み取ることの出来たお題の絵でしたが、この三つもさることながらきのみについた雨の雫に着目しての作品というのは面白いアイデアだと思いました。
ばすさん
評価:☆☆☆☆☆
命は巡る。生き物はみんなどこかで繋がっているのだなと、
改めて感じさせてくれる作品でした。
きのみはものしりさんです。
某葉っぱの何とかという、絵本を思い出しますね。
あすぺふさん
評価:☆
周りのオボンが食べられていく中、季節が移り変わっていくが、突然現れた悪い人に食べられてしまう。
他のオボンから大事に思われていたそのきのみの失われ方を通じて、命の連鎖やありがたみを感じた作品でした。
葉穂々さん
評価:☆☆☆☆
前世きのみがあれば、今世きのみもある。
美しい最期を遂げられるオボンがいれば、そのまた逆も……

好きポイント
・知的なオボンと対照的な、頭の悪そうなハンター。
・テーマイラストの扱い方。その水滴は、オボン達の悲しみの涙。
・「ぴゃぁー、美味かった美味かった!」
rairaibou(風)さん
評価:☆☆☆☆
・葉っぱのフレディのような教科書に乗っているような優しさとメッセージ性を感じる作品でした。
円山翔さん
評価:☆☆☆☆☆☆
ヒトを、ポケモンを、季節を、家族を、見守り続けたオボンのみの物語。ところどころに音楽用語が使われているのがユニークでした。食べられたきのみが、食べた誰かの「家族
」になるというのと、雨の雫がオボンの涙という解釈が好きです。
ラプエルさん
評価:☆☆☆☆☆
まさか、「きのみ」そのものが主役になる作品が出てくるとは。企画に参加して以来、自分では到底思いつきもしない発想をバンバン出してくる作者様各位に驚かされるばかりです。
あと、「ラルゴ」が音楽用語だって知りませんでした。読み手におっ、と思わせる小説を書くためには、何よりも知識が必要なんですねえ。

きのみさんが物知りなのは、その分他の家族たちと比べて置いて行かれたからなのでしょうか。この世界のきのみがどのように知識を蓄積しているのかは謎ですが、一度実がなればもぎ取られるまでそのままってことは結構長生きしてそうです。
「皮のあたりが、じゅわって疼いた」とか、「ヒトがすくすく生きていくためには、どうしても他の生命から分け与えてもらわなくてはいけない」とか、このきのみさんは相当聡明ですねえ…この文章回し、好きです。

オボンさんがあっさり悪い人間に食べられてしまったのが尻切れ感が強くあまり好きではありませんでしたが、「どんな風に食べられるんだろう」と引っ張って引っ張って勝手に期待してるのは読み手だけであって、実際はどんな終わり方をするかなんてわからない、あっさりと終わるのがむしろ自然なんだなあと二回目に読んで思いました。いくら作品であるとはいえ、劇的で感動的な最期だとちょっとうまくいきすぎですよね。これくらいすっぱりしている方がリアリティがあっていいのかも?
不思議な読後感の、センスある作品でした。ありがとうございました!
うにゃさん
評価:☆☆☆☆☆
たとえその夢が叶わなくとも、誰かの記憶に残ることは出来る。オボンの物語という発想が良かったです!
カイさん
評価:☆☆☆
しがない存在の一個一個が集まって、一つの大きな物語になるんですよね…。きのみの視点を通して、一人の赤ちゃんの成長を描いているのが面白いなと思いました。
水のミドリさん
評価:☆☆
きのみ視点! 誰が思いつくだろうかこの切り口。終わり方も、主人公にあれこれ期待を膨らませておいて悪者に食べられるオチ、なんとも教訓的ですね。突飛な設定からなかなか巧い着地点を見つけ出したと思います。
でも本来きのみって食べられることが目的みたいなところあるじゃないですか。だとすると主人公を食べたのが悪い人間でも、種まで飲みこまれれば本懐だったんじゃないんですかね。文中『彼らはヒトの血肉となり、ヒトの一部を形成する。ヒトの身体の一部という名の、新しい家族となるんだ。』と肯定的に書かれているし、反対に虫食いで『チュウトハンパ』に食べられると不満そうに風に揺られていたともあり、悪者に食べられるのは嫌だ、という部分だけとても人間的な価値観が透けて見えてちょっと違和感あります。あと冒頭で主人公と同じ木に『おとうさんとおかあさん』が実るような書き方してありますけどほんと……? おかあさんってむしろ枝のほう、本体は地面に埋まってるものじゃないんですか。
設定の妙を切り離して考えた時に、この作品に残る魅力は……と考えるとちょっと難しい。魅力的なキャラも出しにくい、アッと言わせるストーリーも作り込めない、となると、他作品を引き合いに出して申し訳ないのですが『境界なきかつをぶし』くらい地の文で読ませるような文章力が欲しくなっちゃいます。
ポケモンオークションってどこでやってるんですかね……? ぜひ私も参加しt(
Ryoさん
評価:☆☆☆
きのみ視点とはまた面白い作品が出てきたな!と、興味深く読みました。
食べられる事を「新しい家族になる」と表現する独特の視線や、きのみとして見つめる四季の変遷の様子など、読んでいるとまるで環境番組を見ているような穏やかな気持ちになりました。
ただ、きのみが同じ場所から全く動けない存在である割には、あちこちの色々なことを知りすぎてしまっているような気がしたので、鳥ポケモンのおしゃべりで聞いたとか、そういう具体的な説明があると良かったかなと思います。
一年を木で過ごして誰の家族になれるかと思いを馳せていたオボンが、いかにもすぎる悪い人にあっさりもぎ取られて食べられてしまうのも無常で良いですし、そこからまた新たなオボンの木として生を受けるのも、話としてきれいに終わったかな、と思います。
でもこれ、もうちょっときのみの視点になりきろうと思えばなれるかなとも思うんですよね。人間視点のいい人と悪い人の区別がオボンにも適用されるのかとか、オボン的には冬にきのみに成らずに落ちてしまうのと、食べられて子孫を残せるのでは、食べた相手が誰だろうと後者の方がいいのでは?とか……
今作で惜しいところまでは行ってるので、もう少し視点を深めたら面白くなるかなと思いました!
しろあんさん
評価:☆☆☆☆☆
きのみだってちゃんと生きている、でも、それ以上でもそれ以下でもない。
そんな大切だけどあっけない事を思い出させてくれるお話でした。オボンのみが主役っていうのが面白い発想でしたね……!
誰かに食べられる事がきのみの運命だけど、折角なら感謝して食べて欲しいという、言葉には表さないけどきのみの願いがよく伝わってきて上手いなあと思いました。私もユズちゃんやそのお母さんみたいに、食べ物にはしっかり感謝の意を込めて頂こうと思いました。良かったです!
終夜さん
評価:☆☆☆☆
きのみさんは途中登場した優しそうなご夫婦に食べられるのだろうか、と思っていたらまさかのポケモンハンター相手だったので衝撃を受けました。
ご夫婦の娘さんであるユズちゃんが立ち寄ってくれたことが、名もなき彼にとっての救いになったと信じたいです……。
照風めめさん
評価:☆☆☆
え、えええ! ハッピーエンドなのだろうか…? それともメリバになるのだろうか…?
ポケモンを厳選する話は良くありますが、きのみ視点でもきのみの厳選があると語るのは面白いですね。
きのみの生き生きとした感情や動きが見えたのがとても可愛らしかったです。
オボンというきのみの一生を通じて喜びや悲しみを感じさせる流れが良かったですね! ユズちゃんも健気で可愛い。
気になる点として、木の実が博識過ぎるのではないか、と思いました。知識の量も勿論ですが、「この世界では」というメタ視点が唐突に紛れることで、ただの木の実としては存在が跳躍しているように思えます。
特に、品種改良のことを知っているのに車のことはそれほど知らない、というのも気になる要素の一つかと思います。
この語り口調でするのであれば、三人称視点か、三人称視点と一人称視点のミックスにした方がそこまで違和感が無かったのではと感じます。
また、いくらハンターが悪者とはいえハンターという人間の血肉となる点では他の人間と変わりがないので、どうしても木の実の感情というよりかは、それを叙述した人間のバイアスが強いと思ってしまいました。もう少し悪者に食べられてはいけない理由(木を切られるとか?)が木の実側にあれば良かったかなと思います。
森羅さん
評価:☆☆☆☆
あのイラストから本当に木の実目線で書くとは!! いや、すみません。揶揄ではないのです。本当に、僕はあのお題イラストを見た時そんな発想は全くできなかったので。その発想が本当に素晴らしく、徹底して無常観で書かれた物語も、自分には書けないものだと、息を吐きました。主人公であるオボンの実が最後本当にあっけなく、「ぼくは、こうして、きのみの運命を、迎えたんだ。」となるのがまたどうしようもなく胸を締め付けられます。そうして最後、ユズちゃんが訪れた時にオボンの木そのものさえも切られてなくなってしまっている。本当に、白骨の御文章を思い出しました。
乃響じゅん。さん
評価:☆☆☆
「皮のあたりが、じゅわって疼いた。」「この季節に流行りだすのは、『むしくいきのみ』だ。」など、独特の表現が目を惹く作品でした。擬音も多用されていて、優しい世界観が表現されているように感じました。
ただ主役のオボンが乱暴に食べられて終わってしまったり、切り倒されてしまったりしているのは、現実のどうしようもなさも感じられますね。
折角なので、最初のオボンに絡めたラストであって欲しかったなぁ、と思いました。あるいは、最初から視点をオボンの木全体の三人称視点で描くか。インパクトはありますが、オボン一個の目線で描くのか、木全体の目線で書くのか、どちらかに統一した方が読後感は良かったように思います。
面白くなる余地をまだ残している作品だと感じました。
はやめさん
評価:☆☆☆
 最後の結末が良いですね。
>雨水の水滴が滴っており、木の下に出来ている大きな水溜まりにぽた、ぽたと落ちている。
>まるで、神様がユズとの再会に涙を流しているような。
 この表現が好きです。しかし、ユズのことをきのみ・木の意思めいたものとして、全体の記憶はある程度共有されていた、という認識でいいのでしょうかね? 神様という表現もされていますし、大きなものが全体を取り巻いているのかなと。
 細かいことを突っ込めば、きのみのメタ視点がかなり広い範囲の情報までキャッチしていたりと、そういうのはあると思うんですが、個人的にはグッと来るような構成のお話になっていると感じたので、このままでも大丈夫だと思います。
レイコさん
評価:☆☆☆☆
 命の循環というものを考えさせられる、私の好きな絵本に木の葉視点の某有名作がありまして、筋書きは一緒ではありませんが自然とそのストーリーの雰囲気を思い出しました。ちょっぴり切なくて、じんわり胸が温かくなるようなお話ですね。元気な赤ちゃんを産めたお母さんがオボンに感謝して、オボンにちなんだ名前をというところで、ユズが出てきたのはちょっと拍子抜けしました。たしかに見た目は柚子色かもしれません。でもユズは別の果実の名前ですから、美味しいトマトで栄養をつけたからリンゴ色のリンゴちゃんにしました……と、例えるならこんな感じの違和感をおぼえました。ここだけ惜しかったです、名付けとは個人の自由で整合性よりもこめられた思いが大切と思いつつも。自分の将来、どんなヒトやポケモンの体の一部=家族になれるのだろうとずっと夢をふくらませていたオボンの実が柄の悪い男に食い散らかされ、その後オボンの実がなっていた木も切り倒されたという事実がやるせないですが、オボンの実たちが残した種が次の世代のオボンへと引き継がれていっていることが示されているラストに、自分で自分の運命を選べないオボンの実たちが浮かばれた気がしました。投稿、お疲れ様でした。
フィッターRさん
評価:☆☆☆☆☆☆
 ポケモンでも人間でもなく、オボンの実視点で進む話というのがおもしろいですね。一度なった実はもがれるまで何年も木に付いている、というともすればご都合主義とも取れる点を、深入りすることなくあっさり流しているところが潔くていいなと思いました。
 主人公の実は最終的に悪党に食べられてしまって、なっていた木もなくなってしまう。それでも彼の仲間から名前をもらった人間が、かつて木のあった場所を訪れる。そしてそれが最後の一文につながる……というラストの展開が、直接的な物質のやり取りにとどまらない、生命のつながりを感じさせてくれます。でも、主人公がなっていた木が切り倒された経緯が語られていなかったので、そこが知りたかったなあとも思いました。
48095/坑さん
評価:☆☆☆☆
 オボンの神様というのがすてきです。
 悪人のお腹の中で下痢にでもさせてやれ、とも思いましたが彼はきっと(仮にそれが可能でも)そういうことはしないだろうなあ。
 読んでいて「はっぱのフレディ」というお話を思い出しました。
春さん
評価:☆☆☆☆☆☆
 オボンさんの一生。
 読みやすくて、ほんわかした気持ちになって、そしてちょっぴり悲しい気持ちになるお話でした。文章全体が読みやすいのは、物語自体に入りやすくなるので、とてもありがたいです。食べてくれる相手は選べない。悪い人にも食べられてしまったオボンが可哀想に感じました。悪い人じゃなくてもあんなヤニ臭そうな黄ばんだ歯に齧られるなんて嫌すぎる。くそう……どっかで事故って頭ぶつけて死ねばいいのに……。
 オボンを通じて、いろいろな人やポケモンを垣間見ている気持ちになりました。動けないし、喋れないけれど、そこにいて、通りずぎて行く人たちやポケモンを見ている。切り倒されてしまいましたが……。ずっとそこにいて、黙って見守ってくれる存在は、たとえ何かしてくれなくたって、心の拠り所となる気がします。私は結構、ゲームだときのみを放置しちゃう方だったので……今度からはもっとちゃんと回収に来るよ。ごめんね、きのみたちよ!
 優しい気持ちになる短編をありがとうございました!
雪椿さん
評価:☆☆☆☆
 まさかの食べられる木の実視点とは。全く思いつきませんでした。運命の残酷さがわかる終わりを迎えてしまった主人公ですが、こうして命は繋がっていく、というのを感じられてよかったです。最後にあのオボンが出会った少女が成長して出てくるシーンも「こうして『物語』は繋がっていく」というものを感じました。
 当たり前だと思ってしまっていることへの感謝を忘れてはならない、心からそう思える作品をありがとうございました!
逆行さん
評価:☆☆☆☆
 とても丁寧で面白いお話でした。きのみの心情を描いた作品ですね。きのみの心情がとても色濃く描写されていたように思います。木の実達は食べられる=死に関して悲壮に思いながらも、食べられることに喜びを感じているっていう所が良いなあって思いました。食べられる側の心情を想像し、ここまで具体的に描けるのは凄いと感じます。 
 しかし主人公は最後悪人に食べられてしまうとは……。うむう世の中はうまくいかないものですね。どうしようもない無常観を感じました。タバコで汚れた歯で噛まれていく描写がなんとも痛々しかったです。男性に強く握られているときに痛いって言ってましたけど、痛覚はオボンにはあるのでしょうか。あるとしたら、食べられるとき相当痛いような気が……。いやきっと、ここでいう「痛み」っていうのは心の方なのかもしれませんね。 
 木の実が一年中腐らないというゲームのメタネタを効果的に利用したのも良かったです。リアルとは違いますが、ゲームの設定を引用しているのでそこまで違和感を抱かせないようになっているのが上手いと思いました。 
 特に「ここがおかしい」って指摘できるような点は見当たりませんでした。完成度の高いお話だと思います。欲を言えばもう一捻りあるとなお良いのですが、無理にやる必要もなく、これはこれで完成しているといえると思います。 
 強いて言うのであれば、終盤で主人公の視点から三人称に移っておりましたが、その際他のオボンが主人公に対する感想を述べてたじゃないですか。あれがちょっと変だったかなあと個人的には。『その在り方に葛藤したひとつのオボン。』という文章がありましたが、主人公が葛藤していたことをいつ知ったのかなあっていう疑問がありました。木の実同士でお喋りできる描写って確かなかったような気がします。(あったらごめんなさい)。同じ木に実っているから思考が共有されているとかそういう感じかもしれませんね。 
 すごく難しいことをやっているなあっていう印象を受けました。作者さんの技量の高さが伺えます。投稿お疲れ様でした!
北埜とらさん
評価:☆☆☆
 これ、発想がめっちゃ面白いなと思いました……!! 人にもぎとられるまで何年も木にぶら下がり続けているきのみ! 原作ゲームの道具のきのみが永遠に腐らないことから着想を得られたのだと思うのですが、いや~スゴイ。初読の時、「このきのみ、同じところにぶら下がり続けているにしてはちょっと世界のことに詳しすぎるんじゃないか……? 何者だ……??」と思っていたのですが笑、なるほど人が集まる場所に何年もぶら下がり続けていたら、そりゃあ知識も増えるでしょうね。私はポケモンもきのみも生物的な側面を強く捉えがちなので、こういった発想は逆立ちしても出てきません。なのでむしろ興味津々でした、面白かったです!
 きのみ視点で描かれるきのみの気持ちが、また面白いですね。きのみは自分の効能を知っていて、食べられることを誇りに思ってる。きのみにとって食べられることは嬉しいことで名誉なこと。だから、選ばれずに何年も取り残される主人公オボンは、ちょっと寂しいような気持ちも抱いている。オボンたちは一応食べられることを「死」と認識しているようなのに(血肉となることを喜びはするようですが)、死なずに生き続けることは寂しいことだと思うんですね。オボン心、複雑だ……そして「血肉となれれば本望」という奉仕精神が凄い。主人公オボンが何年も食べられなかった理由をちょっと妄想していたんですが、「皮のあたりが、じゅわって疼いた。」っていう表現が出てきたから、もしや若干表皮痛んでいたのではないかなとか……笑
 食べられることを前向きに捉えている、誰かの生命につながることを喜んでいる、でも、悪い人に食べられることは、悲しいし嫌だしやるせないんですね。ここがまた面白い。これで、悪人たちが「うわっこのオボン表皮腐ってるじゃねえか汚ねえな!」つって投げ捨てて踏みつぶしたりしたらそりゃあ「うわっ可哀想……」て思うんですが、ちゃんと食べられてても悲しいんだよなあ。つまりオボンたちは、「誰かの血肉となる・生命をつなげる」ことだけじゃなくて、「なるだけ良い魂の命の一部として迎え入れられたい」という願いも持ってるんですよね。「死に方のシチュエーション」にも拘っている。これ、めっちゃ人間みたいですよね。子孫を残すことだけじゃなくて、どんな生き方をするか・どんな死に方をするかが重要。ここまできのみを擬人化するっていう発想は、先も言いましたが私には到達しえない発想なので、ほんと面白いなと思います。
 別のオボンたちの視点が登場し、主人公オボンの死に方を憐れんでいるところ(何年もこの木を~ から ~やるせなかった。までの4行)が、いいですよね。好きです。この展開にするのなら、例えば、主人公オボンが他のオボンと会話をしながら季節を巡っていくような流れにした方が、一層感動できたかもしれないな~と思います(主人公オボンと他のオボンとの関係性はあまり描かれていなかったように思ったので……)。「葉っぱのフレディ」みたいに、それぞれのオボンに名前をつけて……会話をしていた親オボンや友人オボンが良い死に方をしていって、ぼくもあんな風に死ねたらなあ……って生死と己の意味について考える、みたいな。そして主人公の無残な最期を目にした弟オボンは……みたいな……おっ、楽しそう……(妄想中)私葉っぱのフレディ大好きだったんですよ、この作品は葉っぱのフレディみを感じてとても懐かしい気持ちになりました。
 また、せっかくのきのみ目線ですから、きのみ目線的な比喩を入れてみるのはどうでしょうか。「ラルゴぐらいのテンポで」という表現が出てくるんですが、きのみが音楽用語を平然と使っているのはちょっと不自然なので、「そよ風がぼくらを揺らすみたいに」とか……いかにもきのみらしい表現というのを考えて入れていったら、より世界観に没入できると思いました。細かい部分ですが、

>ただひとつ、面白いことがある。
>この世界のきのみは、基本的によっぽどのことがなければ長持ちする。

 この場所も、とてもメタ的な視点になっているんですよね。この世界のきのみは「他の世界」のことなんて知らないはずなのに、あたかも「他の世界のきのみは長持ちしないこと」を知っているみたいなんです。きのみの気持ちになって生死観や輪廻観を描きあげる部分は非常にうまくいっていると思われますので、細部の表現まできのみ目線でブラッシュアップしていけば、より素敵な作品に仕上がるのではと思いました! 
 投稿お疲れさまでした!
ポリゴ糖さん
評価:☆☆☆☆☆
 きのみ視点というのはとても斬新に感じました。テーマイラストからこうした物語を発想する力は見習いたいところであります。
 音楽のことが出てきたり、クルマだったりナツヤスミだったり、そうした人間の言葉や概念をよく知っているきのみだなあというのが感想です。人間にある程度近いところに生えている木だから、そうした人の話から汲み取っているのでしょうか。そうした想像も膨らみます。
 「彼らはヒトの血肉となり、ヒトの一部を形成する。 ヒトの身体の一部という名の、新しい家族になるんだ。」こういった、彼らのきのみなりの観念とか、「皮のあたりが、じゅわって疼いた。」というきのみの身体らしい表現とか、そういったところにとても力を入れられている感覚を受けました。これで例えば「胸のあたりが」とか書いてしまうと、きのみの胸ってどこのことだ、となってしまいますし、語り手が人でないのならそれに合った表現をしなければならない、ということ、私も胸に刻んでおこうと思います。
 自分が産まれるときに力を借りたオボンの木との運命的な再会とは相成りませんでしたが、それでもきちんと感謝を伝えるユズちゃんの健気さこれは実際に命のつながったことを感じさせるシーンで、見ていて気持ちの良いものでした。
 雨水の水滴を「オボンの涙」「神様の涙」と喩えるところも上手いと思ったところであります。嵐は神の怒りだとかそういった伝承もありますし、すっと入ってくる表現でありました。
 惜しいところがあるとすれば、きのみの一人称からいきなり三人称に移ってしまっているところで少し混乱したくらいですかね。食べられて自我が少しずつ消えていく様子を表現できたりするともっともっと読者に訴えかけるような文章になるかもしれません。 
 とてもよい着眼点でお話を書かれている印象です。生命の繋がりを感じさせる一作でした。
早蕨さん
評価:☆☆☆
 きのみが喋る、ということへの違和感に突っ込むのは野暮なのだと思います。けれどもその違和感を払拭しきれないなと思いました。お話自体は綺麗で、ユズとの再会はとても心にくるし、素敵でした。
砂糖水さん
評価:☆☆☆
リングさん
評価:☆☆☆
わやさん
評価:☆☆☆
灰戸さん
評価:☆☆☆☆
シガラキさん
評価:☆☆☆☆☆☆
さねたかさん
評価:☆☆☆☆☆☆
ionさん
評価:☆
ゾイシアさん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
一葉さん
評価:☆☆☆
不壊さん
評価:☆☆☆☆
猫村さん
評価:☆☆☆
BoBさん
評価:☆☆☆☆☆
秋桜さん
評価:☆☆
浮線綾さん
評価:☆☆☆☆
Lienさん
評価:☆☆☆☆
クーウィさん
評価:☆☆☆☆
586さん
評価:☆☆☆☆
まーむるさん
評価:☆☆☆
トビさん
評価:☆☆☆☆☆
じゅぺっとさん
評価:☆☆☆☆☆
伊雑アゴバルさん
評価:☆☆☆☆☆