骨太なストーリー軸に支えられた、素晴らしいお話でした。ダイゴ少年の挑戦と成長をメインテーマに、サトルとアキラが大変いいキャラ付けをされていたように思います。バトルも大迫力で、手に汗握りました。個人的にSMが好きなので、アローラのポケモンが大活躍していて嬉しいです。ちょっと島巡りの試練っぽくもありましたね。SM→USUMでぬしがヨワシ→オニシズクモに変わった流れも彷彿とさせるようで、とてもわくわくしました。
終わり方も非常に爽やかで良かったです。きっとダイゴのように、サトルとアキラもいつか素晴らしい王になってくれると、期待しています。
あとポチエナとグラエナがすごく可愛かったです。ポチエナにわっと足元に群がられたい…可愛い。

違和感を感じながら
→違和感を覚えながら

オニシズクモがヨワシを倒したというのは、サンムーンでヨワシの群れだった水の試練がオニシズクモに変わったことに起因してのことかなぁと考えてみます。夢を追って挫折した。諦めた。これが怖いから、私は夢を持てないのかなぁとちょっと思ってみました。諦めないでやってみるのも、悪くないんだと、まだそこまでは行けていませんが。アキラさんの言っていることは、確かなんだと思います。やれるところまでやって、駄目だと悟ったなら、その先に進もうとするも一興。諦めて別の道を探すのも一興。そこまで頑張ってきたこと自体は、決して無駄にならないのですから。
こういう人間関係、人とポケモンとの関係がいいなって思いました。

言わばホウエン版試練に島の二人の人間ドラマが重なり、独特のリアリティがあって面白い かったです。
「ダイゴです」と名乗る台詞で、どう言う話なのかが一発で分かるようになっているのが凄いなぁ、と思います。当たり前と言えばそうなのですが、個人的にこの話に惹かれたポイントとなったセンテンスでした。
島の二人もいい味出してるなぁと思いました。
最後、リーグで優勝してチャンピオンになるシーンで終わると思っていたので、ちょっと意外な感じがしました。
スピード感のある描写が、バトルシーンで映えていたと思います。
逆にバトル以外の時も同じ書き方なので、少々読みにくい印象を受けました。一文に一つの内容だけを書くことと、主語を出来るだけ短くすることを意識すると、読みやすくなっていくのかな、と思いました。

若きダイゴさんだけでなくサトルさんとアキラさん、更には島のポチエナ・グラエナたちも加わり一丸となって強敵に立ち向かう……という王道ながらも熱い展開、お見事でした。
とても心地良い余韻が残りました。ありがとうございました。

直向きにポケモンリーグチャンピオンを目指すダイゴと、それを諦めてしまったアキラ、それに憧れたサトルの年の離れた友情物語。
その諦めた夢にわだかまりを残していたアキラは、その夢をダイゴに託して本土に送る。
サトルはダイゴに昔のアキラを重ねていたかもしれないと思いました。
バトルシーンではオニシズクモと戦うグラエナとポチエナたちの群れが、かつて敗れてしまったヨワシの魚群に重ねられていて面白かったです。

温かな空気を感じさせる素敵な冒険物語でした！チャンピオンの知られざる過去を綴ったお話が心に来ました！

強大な力を持った個を相手に、無尽蔵の数で対抗するシーンはとても、良いと思いました。
こいつ、ORASのマグマ団にいたあいつじゃないかと思ってしまうところもｗ
まぶしすぎる人の前に立つと、自分の闇が際立って見えてしまって、嫉妬してしまう、というのは人間の性ですね。最終的には新たな夢を見つけられたようで、ハッピーエンドなんですかね？

島の王「達」と複数形にしただけあり、島の王・巨大オオシズクモとアキラさん、そしてダイゴ少年を島へ連れてきたサトルさんが彼をひとつ成長させるその一部始終が非常に丁寧に書かれていたと思います。
高齢化率が高く若手でもおじさんな漁師たち、小さな漁港、そして意外に資金のある漁師さんと序盤から現実に即した港湾描写がたいへん充実しており一気に引き込まれました。島暮らしのことをとても取材されたのだと思います。
島での畑仕事がトレーナーであるダイゴ少年には新鮮な仕事と映る様子、大人から得た掛け値無しの賞賛への喜び、サトルさんの作るプロ顔負けのお菓子に舌鼓を打つ様、トレーナーとしてオオシズクモに立ち向かう姿。とにかくあらゆるキャラクター描写が生き生きとしていて、少年の成長物語、そして一度は夢破れた大人達の再起の始まりとして非常に完成度が高いと感じました。
マスクネーム、（希望）どころではございません、十分残ってます。素晴らしい。

少年ダイゴの修行時代の、一エピソード。
他シリーズのポケモン・チャンピオン達も、彼のように各地を巡ったのでしょうね。

好きポイント
・食事シーン全般。おいしそう！
・ぬし戦を連想させるオニシズクモとのポケモンバトル。読ませます。
・独力で勝利できなかったダイゴ。後のチャンピオンにも、未熟な時代はある。

今回のAって、原作キャラをモチーフにした話がほとんどなく、Bにしても原作キャラの現在に近い形の話が多かったのですがまさかダイゴさんをこういう形で動かすとは……！
「本当にそんな感じだったんだろうな」って思わせる話の内容でした！
あとケーキとかタルトがものすごく食べたくなりました……サトルくんの作った料理おいしそう……

バトル熱い！ ポチエナたちの出迎えてくれた楽しげな島の船着き場が、嵐の日には誰も寄せ付けないオニシズクモとのバトルフィールドになっている、という絵がわりが緊張感を高めるいい演出になっています。巨大ぬしにみんなで挑むレイドバトル的なのいいですね。戦略とか味方のピンチをカバーしあったりして王道ながら激アツ。オニシズクモの水疱に雨の波紋がひろがる描写よき……。
ダイゴ少年の描写がもうひと声ほしかったですか。物語中盤に彼がデボン社の御曹司だと判明するわけですが、それまでの彼の言動がよくある少年のそれに収まってしまっていた気がします。作者様は主人公があのダイゴだってことを隠してらっしゃるようにも読めませんでしたし、バトル以外にも鋭い観察眼を持っていたり、手持ちのアノプスと土いじりしたり、道端の石を1時間くらい眺めている、みたいなダイゴあるあるが見たかった。
登場人物3人の心理描写が書かれていてとても丁寧なのですが、それゆえストーリーの進行を阻害していた印象。この作品においてはだれかひとり――おそらくサトルのものだけでよかったのかなあ。バトルシーンでタイプ相性の説明を挟むのも勢いが削がれますし、省略すべきところは省略する作者様の小説的戦術感が欲しかったです。

ヌシとのポケモンバトルの多対一という特殊な戦闘描写が上手い。そして、原作キャラの使い方も上手いし、全部が綺麗に印象強く纏まっている。

ストレートに好きと言える作品でした。
ポチエナばかりがたくさん住んでいるヨバシ島の設定も面白いところからとってきたな、と膝を打ったし、幼少ダイゴの大人びた子供らしさが可愛らしく、天性のバトルのセンスはありながらも実戦の経験が足りていないところなどよく描かれていました。
しかし何よりもアキラさんが良かった。一見飄々とした明るいキャラが、実は心の中にドロドロとした鬱屈を溜めている設定がめっちゃ好きなんですよ…！サトルとアキラの島での生活が、一見、大きな不満もなく、ある種の憧れすら抱かせる平和で穏やかなものであったからこそ、アキラの胸中の悔しさや、それに対するサトルの言葉が重く胸に響いたのだと思います。
そして巨大オニシズクモがめっちゃ怖かったですね…！世界設定がリアル寄りな分、重機のような体躯でどんなに傷を受けても機械的に迫ってくる恐ろしさと絶望感がありありと表現されていました。対抗するダイゴやサトル、アキラの戦いも、技の応酬に終始するものではなく、島の地形や住み着いているポチエナたち、グラエナの体色と言った、知識や搦手を使ったものであったことが、強大な野生ポケモンとの対峙への臨場感を与えていたと思います。
それにしてもサトルとアキラは、自分達の夢が潰えても腐ってしまったわけではなく、故郷でしっかりと地に足の着いた生活ができているというのが、凄く尊く立派であると思います。夢を追って、それが駄目でも、人生までが終わるわけではないし、生きていかないといけないし、生きていけるということを、この二人は示していたと思います。この、ヨバシ島というところは、少なくとも私にとっては、決して夢が終わるだけの場所ではありませんでした。ありがとうございました。

まず、タイトルが最高に良いですよね。「王達」なのがもう本当に良いですよね。それはともすれば「井の中の蛙」を思わせます（し、実際ダイゴ少年に嫉妬したりといった描写もありましたので意図されたものでしょう）が、それだけで終わらないのが良いです。「俺が、この島の王だ！」と叫ぶシーンは本当にカッコいい。ここでいう「王」はただ単なる「島で一番強いヤツ」という意味だけではなく、（いわゆるドラクエなんかのＲＰＧ的に言えば）道を示してくれる存在であり、激励をくれる存在であり、最前線で戦う姿を見せる存在なんでしょう。いやあ、良いですね。大人とはかくあれみたいな大人たちの姿を「少年」に見せてくれる。本当に良かったです。
また、島の描写が素敵です。僕は瀬戸内の人間なのですが、多分あのあたりがモデルなんだろうなとニヤニヤしてしまいました。ポチエナグラエナがいっぱいいる島でもふもふに埋もれたさありますね……。

なんて熱い物語だったのでしょう…！そして登場人物たちがみんな、男らしいんですよね…！たまりませんでした…。そしてグラエナとポチエナの戦いのかっこいいこと…！最高でしたー！サトルさんの抱えているものにたいするアキラさんの、一度言葉を飲み込んだ反応、そして、お菓子屋さんの提案。とても大人っぽく感じました。かっこよかったです。

うわ〜〜ヨバシ島に実際に行きたい！
モデルとなった島に観光に行ってみたいなと思いました。
まずみんな根が優しいのがほっこりしますね。アキラの葛藤があったとしても、それでもこんな風によくしてくれるのはダイゴにとっても本当に楽しい経験になったろうなあ、と思います。サトルさんのお菓子も食べたくなる。
文章もとても分かりやすく、読みやすいと思いました。
アキラの嫉妬のところについては、分かる気はします。実際に名のある家の子が周りにいた時、どうしても周囲を含めてもそういう色眼鏡で見てしまいます。にしても敵愾心が強過ぎる気もするので、個人的になんですが、もっとアキラがそういう嫉妬の目を持つ背景を見たかったな、と思いました。
島の王であるオニシズクモとの戦いも熱かったです。野生ならではの強い生存本能をもつオニシズクモ、そして集団の力で戦うアキラ。ポチエナ達がたくさんいる、というのがただの舞台設定だけでなくここで活きてきたのは思わず胸が熱くなりました。
ダイゴもアキラもサトルもみんなそれぞれ違った思いを抱えていたけど、今回の件を終えてみんなが新しい一歩を踏み出せたんじゃないかな、とそんな風に思えました。
きっとダイゴなら、チャンピオンになった暁にまたこの島に訪れそうだなあ。そんな心地の良い余韻が残りました。

「この島に民宿なんてねえし、ポケモンセンターだって当然無い。島民よりも、ポチエナのほうが遥かに多い島だぜ」。このセリフで今年初めに遊びに行った愛媛県の猫島（青島）を思い出しました。ホウエンを九州、ジョウトを関西となぞらえればちょうど瀬戸内に当てはまるしなあと。しかも昔はイワシ漁が盛んだったとか…
でも猫島はヨバシよりもずっと人が少ないですし、あくまでも瀬戸内の島がモデルといったところでしょうか。

アキラさんは夢破れて島に逃げ帰ってきたが故、同じように夢を追い無茶をするダイゴに冷ややかな目を向ける…うーんこの流れはお見事。嫉妬というかなんというか、夢破れた側からすると夢を追う人間はまぶしすぎて、目を背けるだけじゃ足りずに攻撃的になっちゃうんですよね。
そしてこのアキラさんに真っ向からぶつかってくれるサトルさん素敵。「違う、お前は逃げてなんかいない」とか、「この島を、夢の終わる場所にしたくない」とかめっちゃ好みのセリフです。そしてそのあと一人で向かうところがいいですよねえ、安直にアキラさんと「さあ、お前も一緒に来てくれ」みたいな展開にしないところが。あくまでも自分でどうするか決めるように仕向けてるのかなあと。

バトルシーンも素敵でした。まさか序盤でオボンをガウガウしてたポチエナたちも戦いに加わるとは…
バークアウトの応酬、島という圧倒的な攻撃力を乗せた「イカサマ」を決定打に、完全な戦闘不能ではなかったメタング最後の「とっしん」で撃退…これはかっこよかった。すごくかっこよかった。「俺が、この島の王だ！」ってセリフがぴったりです。

夢に破れ、ダイゴのことを御曹司だから約束された道を走る小僧だと見くびっていたアキラさんが、全力で戦うダイゴを見て認識を改め、新たな夢を乗せて再スタートを切る…最高のラストじゃないですか。文句なしの☆７です。素敵な作品をありがとうございました！

　若き日のダイゴ少年のお話。
　ポチエナ達がむやみやたらに可愛いんですが、これは作者さんの趣味でしょうか……可愛い……こいつらお持ち帰りしたい……山のようなポチエナが足もとにすり寄ってくるって何その天国……私もそこに加えて欲しい……。子犬達がきゃわきゃわとそのふかふか尻尾やもふもふ体をすりすりしてくる感じが蘇ってきました。犬好きの夢ですね！ ポケモンにも外来種とか生息地の関係があると考えている話はあまり見たことなかったので、ポチエナを連れ込むことでブーピックなどが山から下りてこなくなった、という話は少々新鮮でした。こういった発想が出てくるあたりとか、たくさんのポチエナがすりすりしてくるところとかから考えると、作者さんは動物関連に詳しい方っぽいですね！
　ダイゴさん、のんびりスローライフを満喫しているように見えるけど、いったい何しに来たんだろう……と思っていたらまさか、神と戦いに来たとは。「嵐の日にだけ現れる神」って響きだけで、胸のわくわくが止まりません。そんな伝説を聞いたなら挑戦しない訳にはいかないじゃないですか！ ダイゴさんの苗字にアキラさんが気がついた時の流れは、「え？ どうなるんだ！？」と非常にドキドキしました。ダイゴさんは挑戦しに行ってしまうし……。アキラさんの気持ちも、理解できるものだと思います。ダイゴさんが悪い訳じゃないけど、「金持ち坊ちゃんの道楽」だと思ってしまってもおかしくない。ダイゴさんについてこれまで、そこまで深く考えたことが私はありませんでした。ダイゴさんにも若い頃があって、ツワブキの名が重荷になってた時期がきっとあったんだろうな、と。でもそこは流石、我らが未来のチャンピオンダイゴさん。勇気と度胸を示して果敢に戦いを挑んでてめっちゃ格好いい。サトルさんに言われて目を覚ましたアキラさんも加わっての決戦。たくさんのポチエナ達も加勢するし、なんだこの展開！ めっちゃ熱い！ 熱い男の友情とか戦い的なものを感じる！ 
　「夢を追うことが怖くなった」って台詞。大人の、諦めてしまった人だからこその重みを感じました。なんかアキラさんもサトルさんも、どちらも切ない感じがします。だから、ダイゴさんがこの島に来てくれて本当に良かったとも思いました。ダイゴさんが来ることで、彼らの心にひとつ区切りみたいなものをつけることができたと思います。そしてなにより、ダイゴさんにとってもかけがえのない経験になったというのが凄く良い。
　いつか彼らのお菓子屋さんに行きたいです。宣伝で「あのチャンピオン・ダイゴ御贔屓のパティスリー！」とか出てるのを想像すると笑いが止まらない。ダイゴさんなら笑顔で写真をとらせてくる気がしてならない笑。
　素敵なダイゴさんのお話、ありがとうございました！ ダイゴさんがより好きになりました！！

　私はこの作品を読めて幸せでございました！
　サトルもアキラも、それまで自分の中だけで思いを抱え込んでいた。二人とも、どうして教えてくれなかったんだ、どうして相談してくれなかったんだとすれちがっていたのが最後、アキラが「お互いに独り身で、～」と二人でやっていくこと前提で話すシーンが、もうほんと、好きで、好きで、素敵で、好きです。
　ダイゴはダイゴで島の中で成長してるし、三人ともが大きく前進している。
　とにかく最高でした。この企画で出会った作品のなかで一番好きな作品です。

　文章が読みやすく、登場人物も少なくて頭にスムーズに入りやすかったです。てっきり少年時代のダイゴの成長物語かと思っていましたが、どちらかというと大人視点の、隠し事や失ったものを取り戻す物語でしたね。アキラの嫉妬や自己投影をしたくなる気持ちも分からなくはないですが、家柄が重荷のダイゴはアキラの真摯な謝罪は受け入れたものの、作中では家柄に囚われなくなったという描写は特にありませんよね。トレーナーとして純粋に頂点に立ちたいという思いとツワブキ姓のエピソードの絡みがやや唐突で、若干ごっちゃりしてしまった感があるので、ここまでの完成度を思えば少し勿体なかった気がします。かつて神と呼ばれたヨワシの魚群をくだしたオニシズクモ、これはUSMの試練が元ネタでしょうか。稼ぎも悪くない親友二人で完結していた、良くも悪くも閉鎖的で安定した今までの生活に他人を呼び込こうという、活気のある明るい展望が示されたのが嬉しかったです。アキラとポチエナ達が育てたオボンとサトシのレシピのお菓子、食べてみたいですね、きっとほっぺたが落ちるくらい美味しいんでしょうね。いいなあ。投稿、お疲れ様でした。

　大多数のポケモンを指揮して一体のポケモンに対抗する、そんなバトルを描かれるという発想は非常に面白かったところであります、文字通りの指揮官としての才能を発揮するアキラが非常にカッコよかったです。ブランド物のサングラスを投げ捨てるとか、整髪剤も落ちて流行りの髪形が崩れているだとか、そういったところに形振り構わずバトルに一意専心する心意気を感じ、とても痺れました。そのシーンも含め、全体的にアツイ！　夢を追って、けれど挫折して逃げて、農業と漁業とで生計を立てる彼らが、その心の内に秘めた思いをずっと抱き続け、新たな夢に向かって動き始める、そんなラストも非常に印象的でした。
　瀬戸内地方の小島っぽい世界観の作り込みというものにも感服であります。神と呼ばれたヨワシの魚群、力自慢がそれに挑むという風習のようなもの、そういった背景が見えてくるところも好印象です。
　ストーリーの流れとして、バトルを山場に持ってくる小説はこのコンテスト内ではあまり多くなく、その中でがっつりバトルを描かれたところについて、やはり印象に残るものはありますね。どうしてもキャラクターやポケモンの動きを描写するのに文字数を割くことを考えると、きっちりそのあたりを計算して全体のバランスを取らないといけないところ、作者さんは考えて書かれたのだろうな、と感じました。
　惜しいポイントとして、戦闘中に挟まれるダイゴの分析は興味深くはあるのですが、どうしてもそこでスピード感が失われてしまうといいますか。強大なオニシズクモ相手に一瞬たりとも気の抜けない状況というのを伝えるのなら、もう少し簡潔にしたほうが良かったかなあという印象はどうしても抱いてしまいます。
　あとはサトルの過去を語るところがちょっと唐突に感じたというのはどうしてもありました。彼もまた夢を追おうとして、結局それを果たせなかったという点で、アキラと同じであることを示したかったのだろうと思うのですが、できればアキラと並列で、オニシズクモと戦う前のところで示してもらえると、勝った後の余韻に酔いしれつつラストのシーンにそのまま繋げて終われたかもしれません。
　シンプルですっと入ってくる地の文がストーリーの山あり谷ありをより引き立たせているという印象です。キャラクターからも、本作を書かれた作者さんからも情熱を感じるような、そんな一作です。

　前半の静と後半の動の対比がすごく好きなんですよね。前半はのどかな島の風景と朗らかな人間関係が続くわけですが、嵐が近づくと共に、天気だけでなく人物たちの心情もざわつき始め、そこから嵐の中のバトルシーンに至るまでの展開の進め方がもうすごいです。本当にじわじわと加速していって、強く見せるべきところでしっかり最高潮に持っていく。とても引き込まれる構成でした。
　バトルシーンの緊迫感がまたいいんですよね。ひとつひとつの描写もさることながら、正攻法で攻めたダイゴはほとんど歯が立たない中、現れたアキラがポチエナの群れや地面を利用した策でオニシズクモを追い詰め、最後のあがきをダイゴが止める、という展開もが実に胸熱でいいなあと思いました。
　そして何より、アキラとサトルの人間関係がすごくいいんですよね。お互いに自分は逃げたと思っていて、夢に立ち向かっていた相手にあこがれてて、夢をあきらめた相手に、なぜ相談してくれなかったんだと思っていて。そのふたりがダイゴとの交流を通じて、新しい夢を見つけるラストがまた素敵です。

　ホウエンとジョウトの間……つまり中四国……つまり瀬戸内ですね、来ました瀬戸内ありがとうございます！！（早計な結論）幾多もの小島、素晴らしい海、優れた漁場！　柑橘栽培に適した雨の少ない気候！　海外に輸出される柑橘！　個人的に最も好きなのはブーピックのくだりなのですが、うちの祖父のミカン畑もイノブタに荒らされまくっているので、そうか豚かあブーピックかあなるほど！　と一人ではしゃいでおりました笑。あいつら海を泳いで渡るから島にも現れるんですよね、ブーピックが泳げるのかは分かりませんが。だからあくタイプのポチエナが増えた、というのも凄く面白いです、人の暮らしとポケモンの生態が密接に繋がっている、この世界の生活や文化がよく窺えます。ネットを張って転がすというのは私は聞いたことがなかったのですが、これも実在してる方法なんでしょうか？　作品を書くための下地としての知識があるだけでなく、その素材をうまく料理してポケモン世界に落とし込んでいるという印象で、大変すばらしかったです。
　物語としては、ダイゴとアキラのダブル主人公……いや、主人公はアキラだったのかなと感じました。夢を諦めたアキラ、サトルの二人は、夢を追っているダイゴ少年との出会いによって、蓋をしていた感情に再会し、彼らが諦めた過去の夢に対する清算をする。穏やかで幸福な彼らの日常描写から、不穏な嵐の前兆、来たる嵐、その中での命懸けの戦い、と、加速度的に緊張感を高めていくシナリオがとても格好良かったです。特に戦闘シーン、アキラが現れてからの盛り上がりは、まさに「熱い！！」と言うべき、素晴らしいものがありました。サングラスを投げ捨てる、整髪料が落ちる、この泥臭さの演出が非常に効いています。バトルの内容も、アキラの多数のポケモンを従わせるまさに「王」と呼ぶに相応しい能力、幼少から野山を駆け回りポケモンと触れ合ってきた田舎の人間だからこそ身についたのだろう特殊なバトルスタイルがとても興味深く、面白かったです。ただただバトルが面白くてカッコイイだけじゃなく、その中に成長というシナリオがちゃんと内包されていて、意味のあるバトルシーンになっているのがいいんですよね。アキラが一皮剥けただけでなく、自然の驚異を知り、アキラの戦い方を見て、戦闘の中でダイゴも大きな収穫をしたのだろうなということがよく伝わってきました。
　男らしい熱気を孕んだ非常に熱い物語だというのは、理解はできるのですが「理解できる」という感じで、読み進める中でその熱にあまり乗りきれなかったなというのは正直な印象です、申し訳ありません。地の文で描かれる感情がどこか説明的なように思えて、感情移入が難しかったのかな……？　特に、サトルとアキラが二人で話をするシーンなのですが、コンプレックスを刺激されて封印していたものが露わになってしまったのは分かるのですが、そこまで……？　という感じで、アキラの激昂がかなり突飛に思えてしまいました。夢を諦めたコンプレックスに加え、いいとこ育ちコンプレックスみたいなバックボーンの掘り下げがあったら、スムーズに入り込めた……かもしれません。
　もうひとつ気になったのですが、ダイゴ少年ですが、彼がオボンを知らなかったのは何故……？　私はダイゴファンではないので正確なことは分かりませんが、実は幼少期はホウエンにいなかったとかいう設定があるんですかね？　原作の青年ダイゴさんのイメージからすればかなり普通の少年のように描かれている今作のダイゴ少年、

＞　自身がツワブキムクゲの息子であること、それをダイゴがアキラとサトルに告げた記憶はない、告げるはずがない。それが嫌で、彼はホウエンを飛び出したのだから。
　そして彼は、アキラの部屋にあった情報機器の数々と、今朝不自然に机の上に置かれていたトレーナーカードを思い出した。
　自身を見るアキラの視線は、ダイゴがホウエンで感じてきたものとほとんど同じのものだった。

　このあたりの設定、着眼点がとても創造的で面白いなと感じます。貴族オーラを放ちまくっている青年ダイゴさんが、子どものころにはボンボンだからこそのこんな悩みを抱えていたのだとしたら、なんかもう普通に萌え……悶え……興奮……グッときますね。ダイゴ少年が島にやってきた動機のひとつであるらしいだけでなく、アキラさんの怒りとも完全に衝突しており、物語的にも重要と見えます。アキラさんが知らずに傷つけてしまったこの少年らしい繊細な感情について、あまり掘り下げがなかったのが、惜しいなと感じてしまいました。もっと読ませてほしかった……！！　素材が非常においしいと思うだけに、もっとくれ！　と思う部分が多い作品でした。でも、十分に楽しませていただきましたよ！
　投稿お疲れさまでした！

　ダイゴってあのダイゴだよなと期待しつつ読み進めたとき、「ポケモンリーグチャンピオン」の単語が登場したときの、これこれ！ という求めていたことに応えてくれた高揚感がすさまじいです。
　ヨワシではなくオニシズクモなのは、ウルトラサンムーンが元ネタですかね。
　「あいつに夢の現実を教えてやったんだ。立ちはだかる敵は、巨大で、怖くて、理不尽だ。世の中舐めてるガキにそれを教えて何が悪い」ここが良いな。ダイゴより年上のアキラの、年下の約束された王者に対する妬みとして説得力があります。決して醜い感情ではなく、人間らしさにあふれていて、それがキャラクターをより深く立てているため、好感が持てます。自分の無力感の矛先へと、ダイゴの印象も正体を知ったことで変わってしまった。実にリアルでした。
　なんか、登場人物が男限定なのもあると思うんですが、男臭い、良い意味で男臭く泥臭い話だなと思いました、この作品。雨の中でも豪快に叫びをあげるような（実際あげてるし）、魂を感じる一作でした。

　すっごく男気あふれるお話でした。素晴らしかったと思います。「完成度の高いお話がやってきた！」と思いました。 
　一切小細工無しで勝負しているという感じがしました。本当にあくまで文章力とストーリーだけで正面突破！　余計なものは何もいれない！　切って焼いただけの極上ステーキ！　そんな印象をいだきました。 
　バトルシーンに関しても、「『つばさでうつ』！」とか「『サイコキネシス』」とか技名だけを叫ばせるのが本当に潔いなあと 。僕だったら「よし今だ！『十万ボルト！』」とか技名以外にワチャワチャくっつけたくなるんですけど、この小説に関しては技名だけっていうシンプルさがとても似合っているなあと感じました。 
　可愛らしいポチエナの群れと触れ合う下りがちゃんと伏線になっていたのが面白かったです。ヨワシの群れを倒した敵に対して、今度はポチエナの群れの力で挑むっていう構図が好きでした。 
　他にもテレビのシーンが都会と田舎の対比させるような内容だったり、細かい所に工夫を凝らしているなあという印象でした。 
　一つお聞きしたいんですが、タイトルの「悩める少年」というのはダイゴのことを指しているのでしょうか。むしろサトルとアキラの方を指しているような気がしました。ダイゴは特に悩んでいるというよりは夢に向かって進んでいっている印象があったのに対して、この二人は心に薄暗いものを抱えていた印象があります。特にアキラの方の心情はお話が動く鍵にもなっており、重要であると考えました。 
　しかし重要であるのに対して、正直ちょっと弱いなという風に感じてしまいました。なぜダイゴが御曹司たと知ったときにあそこまで取り乱したのか、今ひとつ分からなかったような気がします。お金持ちに対するルサンチマンが、物語で描かれている彼のバックボーンから繋がらなかった感じです。ある程度こうだったんじゃないかって想像はできるんですけどね。ただはっきりと作中で示されている感じが、あまりしなくて。何かエピソードを一つ書き忘れていたような感じがします。文字数制限の都合で削ったのかもしれませんね。 
　気になったのはここぐらいで、全体的には本当に完成度の高い素晴らしいお話だったと思います。結末のシーンは晴れやかでとっても良かったです。本土の人間がお菓子目当てでやってくるようにするというのは、中々ハードルが高いような気がしますが、是非とも挑戦してみて欲しいですね。ダイゴ、サトル、アキラ。三人のキャラの人生の違いを上手く描いた良作でした。全くお話の内容と関係無いんですが、マスクネームを「余韻を残し隊（希望）」にして予防線張ったりとか、そんなことしなくて良いと思うんですよ。十分面白いお話なので、胸を張って投稿して全然問題ないと思います。

　こういう王道な話、いいですね（私には恐らく書けそうにない）！　島に多くいるポチエナ達がかわいいと思いました。チャット会などで見たのですが、モデルがあるようで。猫をニャスパーやチョロネコなどに変えることなく、ポチエナとしてもモデルがわかるようにしているのはすごいと感じました。
　ダイゴさんが私達がよく知る存在になった時、再びこの島を訪れて彼らと楽しく会話をしそうですね。遠くない未来に彼らの島を多くの人が訪れ、賑わうことを楽しみにしたいです。

　いやあ、成長物語ってやっぱりいいですよね。読んだ甲斐と言うのもあんまり好きではないのですが、満足感とは別の気持ち、なんていえばいいのかわからないので、やっぱり読んだ甲斐があったっていうんでしょうか。
　ダイゴのあまりに前向きな姿に、二人が自分の夢に対する一定の解を見つけ、落とし前をつけ、次の解へ進む姿は、素直に気持ちいいです。
　成長を含んだ、壮快で熱い、そして泥臭さもあるバトルには自分が逃げたことへ正面から向き合ったアキラにとって、とんでもなく意味のあることでしょうし、その様にもぐっときますね……。
最後にダイゴがチャンピオンになった後も少し描くのかとも思ったのですが、このオチで良かったと思います。余韻はたしかに残りました！