With love,の感想

花鳥風月さん
評価:☆☆☆☆☆
シャァベッタァァァァァァァ!!!
人間とポケモン、両方の思いにちゃんと平等にフォーカスが当てられているところに脱帽です。
ピカの振る舞いがフレンドボールの呪いだったのか、『チャッピー』の本心だったのか。チャッピーをそうさせてしまったのがフレンドボールとも取れるし、けいちゃんと過ごして行くうちにチャッピーの本心へと変わっていったとも取れるなって個人的には思いました。
コメットさん
評価:☆☆☆☆☆☆
流し読みした時の第一印象でびびっと来た作品の一つです。扱っているテーマがとても興味深い。フレンドボールってゲームの中だと確かに懐きやすくて便利なボールだよね――くらいの感覚なのですが、確かに改めて考えてみると、割と末恐ろしいものなのかもしれませんね。モンスターボール自体、捕まえた後に従わせちゃうくらいの強制力がある道具ではあるので、さらに仲良くなるものって考えると、洗脳に近い力でも働いているのでしょうか……? とまあ、考察はさておき。この難しいテーマでここまで読者を悩ませる、もしくは驚かせるものを描けるのは純粋にすごいと思いました。納得して自分も考察してみたいと思った瞬間、この作品にしてやられたとさえ思うくらいでした。
葉穂々さん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
映画「キミに決めた!」を思い出してしまいました。

考える少女と、迷えるピカチュウ。
何故ポケモンはトレーナーの傍に居てくれるのか? そんなテーマと向き合った傑作です。素晴らしかったです!

好きポイント
・自然感。星々、雷鳴。
・結愛ちゃん
・キーアイテムがフレンドボール。
・いじわるピカチュウ!
・三回目の答えと、チャッピーの本心。
まーむるさん
評価:☆☆☆☆☆☆
感情をぶちまけるシーンがとても良かったです。
終夜さん
評価:☆☆☆☆☆
恐ろしいまでに展開が練られており、作者さんがこの作品にかけた並々ならぬ気合を感じました……。
照風めめさん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
参りました、まさにその一言に尽きます。
これまでにもわたしは人間とポケモンの関係性にまつわる作品を書いて来ましたが、もう同一テーマで競うのは無理だ。そう思ってしまうくらい強烈なインパクトがある作品です。
この作品はある種のタブーに触れています。というのも、ポケモン達が本当に本心から人間に協力しているのではないか? 人とポケモンの友情とはボールによって作られた幻想でしかないのか? そして極めつけはこの一言。
>「ぼく、ずーっと思ってたんだけどさ、『ピカ』って名前ダサくない?」
この言葉に雷光に打たれたような衝撃が走りました。確かにその通りでしかない。ただ、それをポケモン本人が言うのか。(そして語られるピカの本名とその意訳のインパクトも強い)
そしてピカ改めチャッピーとの問答も非常に衝撃的でした。チャッピーの言葉には確かに理がある。結愛の返す言葉は、もはやそうであって欲しいという願望にしか聞こえないほどに。
>「こんなもので捕まえないと仲良くなれないって言うんなら、トレーナーになる資格なんかないでしょ?」
この言葉がとてつもなくおおきな重石となって、前日まで仲睦まじく助け合っていた人とポケモンの姿が鬱屈して見えてしまう。そんな結愛の感受性の高さも良いですよね。
物語を振り返ると、チャッピーが結愛に対して問いかけたモノこそが、チャッピーが最も知りたいモノであったと思います。
恵太もチャッピーもどっちもお互いに、お互いの力になれなかったことを後悔してる。言葉より行動が既に語っている。きっとチャッピーはいつか恵太に話しかけるんじゃないか、そう思わせるような余韻の終わり方が素敵でした。
かねてからモンスターボールの謎について考えてはいました。野生のポケモンをこっちが殴ってボールで捕まえたら仲間になる。挙げ句の果てに特定のボールだとすぐ懐きやすくなる。ポケモンにもきっとそれぞれの生活があったはずなのに。どうしても不思議でたまらなかった。
この作品は明確な答えを出しませんでしたが、そうしたタブーに踏み込んで力強く書き切った文字通りの力作に他ならないと思います。この作品と出会えてよかったな、と思います。
ラプエルさん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
初めて読んだとき、思わず涙ぐみました。すごく突き刺さりました。突き刺さりすぎて、感想を書いている今この時もうまく整理できてないですが…。

「ピカ」って名前より、「チャッピー」って名前の方がなんだかおかしいなあと思っちゃいました。でもこれも、自分がかわいいと思ったニックネームを付けるという人間の「エゴ」なのでしょうか…かなり重く突き刺さりました。
人間とポケモンがどうして仲良くしているのか、というテーマは今夏の「みんなの物語」でも語られていたところでしたが、チャッピーは仲のいい「フリ」をしていました。「フリ」って怖いですよね、人間同士だとしても仲のいいフリをされちゃうと色々誤認しちゃうわけですし…物言えぬポケモンとの関係ならば、尚更齟齬が生じてしまうんだなあと思い知らされました。
実際には本当に仲良しで、一生懸命力を合わせて前進して、電撃が出せなくなっても恵太と一緒に頑張ろうとして、でも恵太のエゴで逃がされちゃって…という熱い思いを秘めていたチャッピー…いや、ピカ。終盤の思いをまくしたてるようにぶつけるシーンは本当にうるうるきてしまいました…。

チャッピーが恵太に本当の思いを喋っていたとして、きっと関係はもっとうまくいったはず。でもそれをしなかったのは、恵太に嫌われるのが怖かったのかなあ…。
恵太はかみなりのいしのせいでピカを苦しめ、チャッピーはそれでも一緒にいたいと思ったのに逃がされたことを苦しんで…お互いに同じ言葉で語って、「電撃が打てなくたって大丈夫だよ」「君を逃がしたのはこれ以上一緒にいると君を苦しめてしまうと思ったからだよ」って思いを伝えられれば、ぶつかりあってまた元通りになれたのになあ…。
きっとチャッピーは仲直りできる、恵太は自分のためを思って行動していると頭ではわかっているつもりでも、確認するのが怖かったんでしょうかね…うああ…胸が痛い…。

結愛ちゃんに喋りかけたのは、またとない来客だったからでしょうか。しかも都合よくフレンドボールの材料を持っているとなれば、色々話も聞けるわけですし。
普段は誰も訪ねてこないような場所にやってきて、しかも従妹という関係なだけに、恵太と自分のことについて尋ねたり話したりしたかったのかなあ。
三回の回答権で結愛ちゃんを試しているのかと最初は思いましたが、その三回で答えを知りたがっていたのは実はチャッピーの方だったんですね…これすごく上手かったです。「ぼくはなんで、恵太のために働いているの?」ってセリフ、やばいです。刺さった。すごい。

構成も文章力も、何から何まで素晴らしい作品でした。文句なしの☆7です。すごかった。
かなり取り乱していますが本当に素敵な作品です、投稿してくださってありがとうございました!
rairaibou(風)さん
評価:☆☆☆☆☆☆
・ピカチュウと登場人物たちの葛藤が素晴らしかったです。
うにゃさん
評価:☆☆☆☆☆☆
ポケモンと人との本当の関係を美しく描いていて、心が動かされました…!
水のミドリさん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
ピカチュウの可愛さは正義! ――かと思いきやぜんぜん可愛くねえ! ピカチュウが表情豊かに喋る作品といえば名探偵ピカですね。尻尾でぼんぐりをポンポンするシーンとか、あのテクスチャで脳内再生されました。ともすると人間なんかよりもよっぽど流暢に感情を乗せて喋るピカチュウ。皮肉や嫌味まで独学で手に入れたのですね……。中でも1番シビれたのが、主人公に「人間とポケモンが手を取り合って生きていくべきだ」と言われた後の返しの一言。
「そんなのは、人間のエゴだよ」
――そうですよね、まさしくそうなんです。ピカを苦しめているのはまさに恵太のエゴ。うだつの上がらないトレーナー恵太が、かみなりのいしで強くなろうとして1番のパートナーを心身ともに傷つけてしまう。一緒に夢を見続けたいと願う手持ちの心境を知りつつも、養生する彼らの穏やかな表情を見てオボン農家に収まる方が幸せだと旅をやめる。罪悪感から逃れるために、またピカのことを思ってボールから逃す。エゴですよ、愛ゆえのエゴ。
ピカだってそう。かみなりのいしで電撃が使えなくなって、バトルに勝てないことに負い目を感じて、そこから逃がされたことがショックで、せっかく覚えた人間の言葉で不満を伝えることもできずに、恵太の意志を尊重して自分を丸めこみ、放電できない充電池のように心の容量をすり減らしていく。農園にやってきた主人公へ車にいる時から話しかけるほど、救いを求めていたのでしょう。何も知らない主人公に言いたい放題ぶちまけてきた内容は、きっとどれも偽りのない本心なんだと思います。
幾重にも重なったエゴと愛が生み出したこのどん詰まりの関係性、ちゃんと読むとしっかり文中に書いてあるんですよね。
『バトルにあけくれる日々から離れ、忙しくとも穏やかに流れる時間の中で、傷は癒えていっただろう。けれど、かさぶたも剥がれてしまったあとに残り続ける傷跡を、二人とも、ずっと隠し持って暮らしてきたんじゃないだろうか。醜いケロイドになった傷跡が、お互いの目にとまらないように。』
こ! れ!!!  言い得て妙! かさぶたの暗喩がバッチバチに嵌っていて気持ち良すぎます。リングマを退けたあと、恵太は主人公を介してピカへ傷跡をさらけ出すわけですが、それを聞いていて彼が去ってからのピカから溢れ出る言葉がもう……。息継ぎもなしに繰り返される「違う!」は、主人公の答えた「大好きだから」を痛切なほどに肯定していました。言葉にして伝えるってことがいかに大事かですよね。とある有名なピカチュウも、ボールに収まらない理由を「いつも一緒にいたいから」ってしっかり伝えているんですもの。
これから彼らが変わるかどうかは分かりません。ピカは人間の言葉で恵太に思いを伝えたのでしょうか。恵太はまたピカをゲットしたのでしょうか。分かりませんが、たぶんこのままオボン農家を続けていくんだと思います。未来がどうだろうと、何も知らない主人公相手に発散できたことは、ふたりの心を確かに軽くしたはず。いやあ救われました。
いい感じに褒めちぎって終わる流れですがごめんなさい、ひとつだけ難癖つけます。冒頭、『恵太は彼の胴ほどある木を抱えながら(中略)倒木をちょぴっとだけ動かした。』が嘘すぎます。マサラ人でもない限り危ないし絶対無理です。せっかく緻密で繊細な作品の導入なのにこれは出鼻を挫かれる思いでした。
あまもさん
評価:☆☆☆☆☆☆
ピカは恵太君のことが大大大好きなんですね。と、私も思いました。好き以上にピカを動かしているものがあるのかな、いやきっとないんじゃないか、と思わされるくらいでした。人間がポケモンの幸せを願ってやったことでも、もしかしたらポケモンは違うことを望んでるのかもしれませんね。お互いの思いが食い違ってしまったとき、エゴと呼ばれてしまうのかなと思わされました。そしてズレたコメントになってしまいますが個人的にツボだったのは、恵太君と結愛ちゃんで名付けの世代を感じたところでした!!
あすぺふさん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
ピカと恵太の過去やそれぞれの思いが、物語が進むごとに少しずつ明かされていく。
偉そうで、周りを見下しているようにも見えるピカにも、ずっと一人で抱え込んでいた気持ちがあり、子供のような一面も見せる。
物語の展開や、キャラクターの動かし方など、非常に洗練された作品であると感じました。
Pさん
評価:☆☆☆☆☆☆
オボンにすべての味要素が含まれているという点から好意や悪意や罪悪感など様々に入り交じった複雑な感情の物語を思いつくアイデアもさることながら、それを本当に書ききってしまうのがすごい。
人とポケモンの助け合いを純真に信じていた主人公に突きつけられる問いとそこから立ち現れる迷い、そしてその果てに「その答えを探していたのは他ならぬチャッピーだった」という展開はその台詞とも相まってとても涙を誘いました。
ただ「フレンドボールでなつき度が上がるのはポケモンの意に反してのことなのか?」ということが問われる中「モンスターボールってそもそもそういうものでは?」という点がどうしても引っかかってしまったのは否めません。
しかし「人とポケモンは、人が思うような真の友(フレンド)か?」というテーマにとても合うボールだったということは間違いないと思います。
読み切った後最初から読み返して、
「ぼく体重六キロくらいあるけど肩に飛び乗っても平気だし、ほら、旅もしてきたし。あと今やってるのも結構力仕事なところあるから」と
「ピカなんか体重六キロくらいあるけど、飛び乗ってきても平気だし……ほら、旅もしてきたし。あと今やってるのも、結構力仕事なところあるから」
の時点で実はもう答えが出ていたんだな、と思っていました。やっぱりどの手持ちよりも付き合いが長く、他の誰よりも心を砕いた通じ合っている二人なんだろうなあと。
砂糖水さん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
もう泣いてしまいましたよね。ポケモンと人の絆というか関係性というか、が好きなので突き刺さりました。べしょべしょに泣いてしまう。
ピカのね、
>「ぼく、ちゃんと人間が好きなピカチュウみたいにふるまえてるかな?」
>「ぼく、ちゃんと、人間が嫌いなピカチュウみたいに、ふるまえてたかな? ……」
この台詞!!!!涙が!!!!
もうほんとね、この作品好きです…。
乃響じゅん。さん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
どうしてピカは人間の為に働いているのか。
これは結愛に対しての質問ではなく、ピカ自身の葛藤の表れだったのですね。
ピカの問いは、自分で散々悩んでも答えが出ない問いに対し、誰かに答えを与えられて楽になりたかったと言う気持ちから出たものだったんじゃないかな、と。結愛がどんな答えを出しても、ピカは恐らく納得しなかったと思います。3回目の答えが図星で、それはやっぱりピカはまだ受け入れることが出来ないのでしょう。彼自身が時間をかけて心の底から納得しない限り、答えにはならないのでしょうね。
憎まれ口を叩くような聞き方しか出来ない彼の不器用さがまた愛おしくもあります。
恵太はピカ達に挫折から救われたけれど、肝心のピカは未だ乗り越えられずにいる。
やはり、恵太に自分の思いを言わなければならないのだと思います。それだけで解決するものでは無いでしょうが、次の一歩は間違いなくこれだと思います。
折れた心がありありと描かれた作品だと感じました。立ち直る一歩を手に入れ、いつかピカが自分の気持ちに正直になれる日が来るのを願ってやみません。
Ryoさん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
これまで、人とポケモンが一緒にいるのはポケモンにとってどういう気持ちなのか、ということについて、ここまで深く入り込んで考えた作品を、私は読んだことがありません。作中では、これが答えだ、ということは提示されず、絶妙なタイミングでその問いは物語の終了とともに読者の手元に投げられてしまうので、読んだ人全員がそれぞれに考えなければならず、そのどれもきっと完全に正解ではないのだと思います。
なぜなら、たった一つの気持ちで生きているひとは誰もいないからです。たった一日で態度が全然違って見えた慶太の手持ちが、本当は一日前と後で全く変わりないように、また、慶太のことをよく手伝う相棒のピカと、人間が大好きなようにふるまってみせるチャッピーが同じピカチュウであるように。
人間に対してたくさんの皮肉や意地悪を言い、慶太のことを嫌いだと言い切るチャッピーの言葉の核には、大好きだったトレーナーの慶太に対して言いたくても言えなかった本音があるけど、だからといって人間や慶太が嫌いだと言った言葉を嘘と言い切ることが私にはできない。皮肉の言葉が嘘だったとして、その言葉が出てきた心は一つしか無い。
慶太のことが好き。慶太のことが嫌い。チャッピーの中にはどっちの気持ちもあって、両方とも嘘じゃないからこんなに苦しいんだろうな、と思います。せっかく覚えた言葉を使えないのは「一緒に頑張ろう」と「チャンピオンを目指していた慶太はどこにいったんだよ」という気持ちの根本が同じところにあって、二つの言葉のどっちを選んでも、一つの幹から分かれた枝が全然違う方向に伸びていくように、今のチャッピーと慶太の関係がもう戻らない方向に進んでしまうのが恐ろしいからなんじゃないかな…そういうことは人間同士でも実によくあるし、一つの心の中にたくさんの気持ちが同時に存在してしまうから、みんな苦しいんだな、っていうことを考えてしまって、もうまとまりきらないですね…
ていうか最初ポケモンと人の関係の話だったのにいつの間にか心の話になっていますね…本当にこの小説は、何をテーマにしても一晩中でも考えてしまうような、奥深いものだったと思います。そのような作品に出会えたことは本当に幸運です。ありがとうございます。
カイさん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
この作品は、もうどこから感想を書き始めれば良いものか分かりません。それぐらい好きです。めっっっちゃくちゃ好きです……ぼろぼろに泣きました。

まず、冒頭の描写が大好きです。美しい晩夏の景色。「もうすぐ夏休みが終わるんだという切なさが、消えかけの花火みたいに、ちりちりと胸の奥で音を立てた。」夏の終わりを花火の終わりに重ね、視覚と聴覚に訴える秀逸な比喩文。一目で気に入るってこういうことだなあ、と感じ入っている間もなく登場したポストカード(テーマイラスト)とタイトルにもなっているキーワード「With love,」に、すでに物語の根幹が語られているという緊張感と高揚感を掻き立てられ、一気に文章にのめり込んでゆけました。優れた小説というものは、出だしに強烈な吸引力があることを改めて感じます。

しかしこの作品の吸引力というか読ませる力というのは決して出だしのみにとどまらず、チャッピーの問いかけ「人間が嫌いなぼくが、どうして人間のために働いているのか」これに結愛がどう答えるのか、そしてチャッピーの真意は何なのか、これが常に読み進ませる力となって、ページをスクロールする手が止まらないという感じでした。
そして結愛が辿りつく最初と同じ答え「『ピカ』は、けいちゃんのことが、大好きだから」。
明らかになる、実はチャッピーこそその答えを探していたという事実。
リングマとの死闘の後、二人が話すこの終局の場面、溢れ出るピカの恵太への思いと後悔と自責の吐露に、もう涙が止まりませんでした……。

人間とポケモンの、ぶつかり合いすれ違うエゴとエゴ。そこに火花のように散る喜怒哀楽を、一体普段何を食べればこのように鮮やかに美しく胸を抉る物語として結晶化させられるのだろうと、感嘆し、称賛し、そして思い切って白状してしまいますと、ちょっぴり嫉妬します。けれどもその嫉妬すら心地よく感じるほどに、心からこの作品に出会えてよかったと思います。私の中で「With love,」は、文句なし断トツのテーマA優勝作品です。本当にありがとうございました。
円山翔さん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
こういう時に何て言ったらいいんでしょう。しみじみと感じるものがあるのですが、私はそれをうまく言語化できません。できないと思い込んでいるからなのでしょうか。そういうふりをしているだけなのでしょうか。
知らず知らずのうちに、誰かにエゴを押し付けている。心当たりがありすぎて胸が痛みます。でも、そうやって生きているんだって再確認できただけでも、価値があったのかもしれません。「強制的に」仲良くさせられるフレンドボール。これが人間のエゴだったとして、そこで生まれた友情は、絆は、本当に「つくられた」「偽物の」友情や絆なのでしょうか。もしも本当にチャッピーが人間嫌いだったら、どうしてリングマに立ち向かったのでしょうか。それは、チャッピーのエゴだったと、言えるんじゃないかって。エゴを押し付けた恵太への、ささやかな反抗だったんじゃないかって。そう思うんです。だからこそ、二人には折り合ってほしい。エゴを押し付け合いながらも、仲良く暮らしてほしいって、そう思うんです。これは、他でもない私のエゴです。
森羅さん
評価:☆☆☆☆☆☆
『森を統べる太陽とイカズチの神の加護を受けた、チャーミングな黄金の子』に「中二病……!」ってふふふと笑ってしまった以外笑う場所がなかったんですが!!! 正直胃に来ました。すごい胃に来たんですこの作品。かわいいタイトルのくせに非常に重たかったです……。
本当にこの作品かかれた作者様はめちゃくちゃ文章書くの上手いですね! 描写一つとってもものすごく巧みですし、「ポケモンとの共生は人間のエゴか」のネタがまた堪りませんでした。BWの際にプラズマ団が一石投じたこの問題って本当に考え出すと僕はすっごい胃に来るんですが、「ポケモンとの共生って何だ」「モンスターボールで“いうことを聞かせているだけ”ではないか」「“ポケモンは友達”は人間の勝手な考えではないか」といった問題一つ一つを丁寧に並べ直して、物語の中にはめ込んで行ったんだろうなあと(もとより脱ぐ帽子もありませんが)脱帽の一言です。また、ピカ=チャッピーの心象描写も素晴らしい・すごいの言葉しか出てきません。ピカ=チャッピーの「結愛はどうしてだと思う? ぼくが人間のために働いているの」という心を抉られる質問から始まり、「人間のエゴだよ」と問題提起を繰り返すチャッピー。それらの問いかけに「彼は本当に恵太さんのことが嫌いなのか」「ではなぜ恵太を手伝い、彼を労わるのか」とゆあちゃんと一緒にぐるぐる頭を悩ませながら読み進めると、彼の言葉の裏側にあった憎愛というか「どうしようもない気持ち」が明かされ、「ああどうして」と胸を締め付けられます。ちょっともうぐだぐだしていますが、本当に読み直せば読み直すほどその密度に圧倒されました。
ですが、ちょっとだけ、どうしても僕は「ピカと恵太が結局和解してない(=彼らの間の溝は埋まらないまま)」で終わってしまったことだけが少し納得できませんでした。ゆあちゃん視点だからこそ、「そこまで書くとクドくなる」など色々あったのかもしれませんが、ピカが人間の言葉を覚えた理由がそこにあるのに、彼はゆあちゃんとばかり議論して、結論を彼女に求めてしまうのがどうしても「うーん」となってしまいました(ピカが知りたいのは恵太さんの心であり、ゆあちゃんの「恵太はこう思っている(はずだ)」という意見ではないはずだからです)。「彼らが和解しないこと」にこそ意味があるというものでしたら、読み取れず申し訳ありません。
逆行さん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
「もしさ、『きみは人間だから今日から人間のニンって呼ぶね!』って突然言われたらどんな気持ち?」 
ハム太郎「まったくもってその通りなのだ」 

 いやー面白かったです。とても深く考えさせられるお話でした。 
 ピカが何故、恵太と一緒にずっといるのか。その理由を主人公と一緒に考えていくことができました。答えが知りたくて読む目が止まらなかった感じです。一番惹き込まれた小説だったかもしれません。 
 ポケモン達の農作業がマジカルリーフとかの技をうまく利用していて面白いなあと感じました。テーマに関わる部分だけでなく、こういう所にも楽しませる工夫が施されていると感じました。 
 ピカが喋れるようになった理由はアニポケのニャースが元にもっているんですね。凄く懐かしく感じました。 
 さて、このお話ではポケモンが働かされており、恵太はポケモンは楽しく働いていると思っているが、ピカはつまんないと言っている。でも一緒に付き合っているのはなんで? っていうお話ですよね。 
 自分は昔、「ポケモンを戦わせるのか如何なものか」っていうテーマのお話を書いたんですが、結局の所ポケモンは戦うのが嫌かどうかって想像がしずらい部分だし、ポケモン達の心情に共感しにくい部分があったんですよ。ただこのお話は、働かせるのか如何なものかっていう視点から描いていて、すごくポケモン達の心情を想像しやすい面があったなあって思いました。ここが巧いと思いました。 
 働くのは嫌ですよね。自分も社会人になって四年目だけど、なんで労働なんていうゴミのような文化がこの世に存在しているのか不思議でしょうがないです。でも会社は辞めれないんだよなあ。お金がないと食べることができないから。ポケモン達は自分たちで食べていくことができるとはいえ、野生の生活は危険だし、ごはんを探していたら自分がごはんになっていることもあるでしょう。だから恩恵は一応あるとは思います。 
 ピカは結局の所どうして恵太に付き合っていたのか、明確な結論が出ないまま物語を幕を閉じます。これにより、一層このテーマについて読者に考えさせ続けることができていると感じます。フレンドボールによる洗脳はもう解けていたんですよね。やっぱり惰性で付き合っていたのかなあ。ここまで付き合ってきたわけだから、いまさら離れるのも気持ちが悪い、とか。This is 腐れ縁。……うーんなんか違うような気がする。ピカは承認欲求を満たしたいんですかね。ピカは恵太に戦力外にされてしまったからそれが悲しくて、だから認めてくれるまで一緒にいたいとか。それだったら、恵太に思いを打ち明けない理由も分かりますよね。 
 なんかあれですね。色々理由を考えても全部ピカに「違う! 違うッ!! 全然違うよッ!!」って言われそうですね。 
 最後ピカはどこへ行ったのでしょうか。群れの所へ帰ったとか。それならまあ、うん……って感じなのですが、まさか自殺したわけでもないでしょうし。「けいちゃんは、ピカとずっと一緒にいるよね?」って最後に聞いていましたが、それは叶うのでしょうか。この後恵太は恐らくピカを探しに行くのでしょうが、見つけることができたとして、ピカは思いを打ち明けることができるのでしょうか。 
 「ポケモンと人間は分かりあえる」って良く言うけれど、自分はそれは無理なんじゃないかって思っています。何故なら人々はポケモンを得体の知れない存在だと見ているからです。得体の知れない存在だからこそ、ポケット"モンスター"と呼んでいるのだろうと。もし分かりあえるのであれば、「ポケモン」 とは呼んでない気がするんですよ。 
 ただポケモンは分かりあえないモンスターであると同時に、「ポケットに入れられる」→「ゲットして仲良くすることができる」存在でもあるんですよね。「分かりあえないけれども仲良くすることは可能である」っていう感じだと思うんですよ。 
 であるならば、恵太とポケモン達の関係はむしろ「理想的」なんじゃないかとも思います。喋れるようになってもまだ本当の気持ちは伝えられないけれど、一緒に協力して色々やったりは出来ているわけで。それによってお客さんに対して「with love,」って言って美味しいオボンを提供できているんだから良いのではないかと。別にそれ以上は望まなくても良いんじゃないかな。これはポケモンの世界に限ったことではなく、実際の会社とかでも、別に社員が嫌々仕事やってても、満足できるぐらいの給料貰えてちゃんと休みも貰えて、お客さんに質が良いもの提供できていれば良いじゃないかって思います。はい。(作品の内容から逸れた語りが長えよ) 
 しかし、よく考えたら主人公まだ小学四年生なんですよねえ。小学四年生の段階でこんな難しいことに結論を出すのって不可能に近いと思います。たぶん主人公がはっきりと結論を出せるのは中学生ぐらいになりそう。そのときにピカとまた再開してお話して欲しいですね。
北埜とらさん
評価:スキップ
 正直、テーマ発表から投稿に至るまで、ずっと焦りに押されていました。大変お世話になっている方が描かれたテーマイラストなので、なんとしても、何か投稿したかった。もう少しでも冷静に取り組んでいれば、内容も文章ももっと詰められたはずと、今も反省しきりです。
 でも、お陰様で、自作短編の中ではいっとう思い入れのある作品になりました。
 色々と難はあれど、このお話が大好きです。大好きで大好きで仕方ない。書いてよかった。たくさんの方にこの作品を読んでいただけたことは、本当に、私の創作人生の中で、大きな出来事になったのではないかと思います。

 運営様方、きのみをお題に据えられためめさん、素敵なテーマイラストを手掛けられた浮線綾さんに、御礼申し上げます。
48095/坑さん
評価:☆☆☆☆☆
 星がすごくて、綺麗な稲妻が見える夜。ポケモンが、あのピカチュウが、ひとの言葉をしゃべった! ――と、そんなファンタジーなシーンで突きつけられる、人のエゴとか厳しい現実。このミスマッチというかギャップがいいですね。
早蕨さん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
 圧倒されました。お見事でした。ピカの気持ちをこれでもかと叩きつけられ、ゆあちゃんと一緒に思わず没入して悩んでしまいまいました。それはポケモンが喋る、それも自分だけに、という状況がつくる効果というか、自分だけに喋りかけてくることで、一層入り込んだ考えをしてしまう。面白いなあと思います。
 ピカ以外のポケモン達の恵太への気持ちは想像しやすいというかこうあってほしいというのがあるのですが、他のポケモン達からピカに対する気持ちはどんなものがあったのでしょうか。そこを描かなかったのはわざとなのかちょっとわからないですが、どうなんでしょう。気になります。
フィッターRさん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
 人間のエゴに振り回されるポケモンを描いた話は数あれど、ポケモンのエゴをきっちり描いた作品ってそうそうないと思います。そういうところを描いているのがこの作品の好きなところですね。
 人間のエゴを非難するチャッピーもまた、自分が恵太から離れられない理由を求めて結愛に迫って、みどぼんぐりを奪うというエゴ丸出しのことをしていて。その上で、恵太のエゴとチャッピーのエゴ、それぞれのエゴがぶつかりあうでも交差するでもなく、ただひたすら並行線にすれ違い続けるその様子を丁寧に描いているので、ラストシーンのチャッピーの慟哭が心に突き刺さってくるように感じられました。
 主人公の名前が結愛、愛を結ぶと書く名前であることも、お話を通して見るとなんだか意味深に感じられます。結愛との交流を通じて恵太とチャッピーが得たものは何だったのか、結愛視点のこの物語では直接描かれてはいませんでしたが、この物語が描いていた想いのすれ違いのことを考えると、直接描かなかったことはむしろよかったのではないかな、と僕は思います。
雪椿さん
評価:☆☆☆☆☆
 ポケモンと人間の関係について考えさせられる話。
 フレンドボールによってある意味強制的にトレーナーを「好き」にさせられる。トレーナーにとってはいいことかもしれませんが、ポケモンにとっては迷惑なだけな可能性もある。そのことに気づかされました。
 結果的にチャッピーは「人間が嫌い」と見せかけて「好き」であることがわかりましたが、彼は今度どうするつもりなのでしょうか。ずっと恵太さんに思いを伝えないまま、仕事を手伝い続けるのでしょうかね。それはそれで何かなあ……という気がします。
 彼らの未来が本当の意味でいいものであることを願いたいですね。
ポリゴ糖さん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
 ポケモンたちがポケモンらしさを生かして農業を営んでいるところ、とても描写が上手いと思いました。それ以外のところでも、例えばピカとの出会いとか、情景描写、心情描写ともに上手いのですが、やはり特筆すべきはピカ(チャッピー)のキャラクターですね。
 垢抜けたピカ(チャッピー)の言動は10歳とかそこらの結愛の心に深く刺さったでしょうし、同時に読者の心に刺さるところも多かったと思います。公式の多くの媒体で言葉での意思疎通が叶わないポケモンの、その心の内が本当にピカのいう通りだったら、とまで考え、背筋が凍る思いです。やはり一番は「ぼく、ちゃんと人間が好きなピカチュウみたいにふるまえてるかな?」からの、「ぼく、ちゃんと、人間が嫌いなピカチュウみたいに、ふるまえてたかな? ……」という言い回しは非常にぐっときたところであります。結局のところこうした言動は、素直じゃないところをマスクしているに過ぎないのかな、という解釈でいます。名前についても、自分が言葉を喋れるように努力したことも、恵太の夢の障害となり逃がされてしまった(と思いこんでいる)自分への自己嫌悪に端を発して全部裏返っているのかなあと想像してみたり。
 作中にも記載がありましたが、手紙の末尾に添える“with love”は、送る相手に愛を伝えるというより、慣用表現として使われるようですね。これを主人公の結愛ちゃんは「愛を込めて」とか、あるいは「恵ちゃんからの愛のおすそわけだ」と受け取ったらしいことが読み取れます。後者は完全に私の妄想ですが、どちらにせよ恵太にとってはどちらの意図もなかったらしいことが窺えます。ここにこの時点での結愛のある意味子供らしい、無垢な幻想というものが見出されるのですよね。ポケモン世界において、期待されるべきトレーナーの、大人たちから教えられるままの姿をそのまま恵太に当てはめたような、そんなイメージです。そこから、ピカの話を聞き、恵太の話を聞き、そういった理想的なトレーナーであることの難しさというものに直面する。長くポケモンと共に在った人間と、長く人間と共に在ったポケモンと、どちらも決して結愛の思っていたような関係性であり続けられず、それは困難に直面して挫折したからなのかもしれないし、時間の流れという残酷なものなのかもしれません。どれだけ仲が良い新婚カップルも年月が経てば滅茶苦茶な夫婦喧嘩を起こす仲になってしまったような……。時間の隔たり、あるいは彼ら自身の成長もあり、その根本にある被覆されてしまっているものを掘り起こして触れることが難しくなって、すれ違っているのかな、と。自分たちでは気付けないそういったすれ違いに、無垢で純真な結愛だからこそ、利害関係とかエゴイズムとか、そういった概念から離れた場所からしか見えないものを見出すことができる、という、若くてひたむきでまっすぐな心、その大切さに通ずるテーマなのでしょうか。このあたりどういったテーマとして受け取ったのかきちんと言葉にできないところではありますが……。結愛は子供っぽい理想から現実を見たし、ピカは現実に囚われていたところから自分の根っこを見たのかもしれませんね。
 恵太とポケモンたちの和解みたいなものを書かなかったのは、それまでのシーンが全て「恵太と結愛の会話」か「ピカと結愛の会話」で進んできた中で、多分結愛の視点のままそのシーンを書いてもあまり効果的でなかったからだと思っています。あるいは、あくまでも結愛は恵太とピカたちの間にあったすれ違い、彼らの根本にあるものについて、ピカに気付かせるまでが彼女の役割と捉えるのだとすれば、和解のところまで書いてしまうのは踏み込み過ぎな感覚を受けてしまいそうなので、私としては過不足なかったと思っています。森に帰ってしまったという解釈の幅を持たせる意図があったかどうかは、分からないところではありますが……。
 描写が上手く、完成度も高く、言うことなしだと思います。非常に読み応えがあり、考えさせられる一作です。
春さん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
 オボンの実をこっそり持っておいて、旅立つ時のポケモンはこのボールで。それってなんだか素敵ですね。いつかモンスターボールになるその日を待つように。
 でもピカチュウは否定的。しゃべるピカチュウ、というのは少し驚きましたが、普段はポケモンの言葉でしゃべって、こっそりと、ゆあちゃんと二人の時だけ人間の言葉を喋る。お伽話や、妖怪、お化けの話でも、子供だけの時は動物やお化けとも会話ができる。子供の方が神や幻想に近い存在だから? 普段はポケモンが人語を解する設定は好きではないのですが、このピカチュウは子供のゆあちゃんとだけ会話するので、比較的受け入れやすかったです。最もこのピカチュウは、独学で勉強して身につけたようなので、話そうと思えば大人とも話せるのですが。どうしてそこまでの努力を?と思いながら読んでいたのですが……終盤、彼が語るシーンで「なるほど」と思いました。それは、「ぴかぴっかぁ」じゃ上手く伝えきれないですね。相当努力したんだろうなぁ……。でもそれ以上に、伝える勇気がなかったのが、彼にとって致命的だったのかな?
 ピカチュウが語る内容は小4のゆあちゃんには厳しすぎる現実ですね。モンスターボールが洗脳装置も兼ねてるんじゃないかとは私もうっすら思ってただけに、ピカチュウの言う事もかなりもっともだと思いました。実際、友達をボールに閉じ込めて持ち歩くって変な話ですよね。ピカチュウはひねくれてるように見えて、少なくとも悪いやつではなさそうだな、と話を聞きながら思いました。言葉はきついけど本音で話してるし、悪態をつくキャラでも、意見に筋が通っている奴は嫌いじゃありません。読み進めて、彼が本音を吐露したシーンでいっきに彼の事が好きになりました。トレーナーも、彼も、どちらも悪くない。答えの出ない、出したくない問いかけが、彼の中でぐるぐると回っていて、爆発した。それでも素直になりきれない言葉と、本音の言葉が入り混じった台詞は、彼の心の中をそのまま表していると思います。難しい上に、これで作品の出来が大きく左右される大事なシーンだったのですが、真に迫る素晴らしいシーンだったと思います。作者さんが真剣にピカの気持ちに寄り添い、考え抜いて書かれたのだと思います。お疲れ様でした。
 ピカが心情を吐露するとこが一番好きですが、二番目に終盤前の、「両親が死に~」からのピカチュウが振り返るシーンが非常に美しく、大好きです。ぞくっと肌が粟立つような感覚がありました。脳裏にはっきりとその姿が、雷を伴って現れ出たような不思議な感じです。
 目覚めたピカと会話はしなかったけど、ゆあちゃんにとって最初に提示された問いに対して、答えを得たように思います。だから、話さなくても良かった。恵太とピカ、そしてポケモンたちのその先の幸せを願いたくなるような余韻の残る綺麗な終わり方でした。
 ボールの洗脳問題の側面からこの話を読むと、また違った風に見られそうです。その視点でピカの気持ちなど考えると、物凄くブラックな話になるのですが……それも含めて、深みのあるお話とも思います。
 色々と考えさせられる良作だったと思います。ありがとうございました!
はやめさん
評価:☆☆☆☆☆☆
 ん~……非常にむずかしい作品ですね。今大会読解レベル最難関作品でした。でもこういうテーマを持ってきて、ちゃんと企画に通用するレベルで描けるのは本物の実力だと思います。なんというか、少し気合が違う気がしました。私はこの作品を読み切れた自信が全く無いです。なので大分見当違いなことを言うと思います。
 キミにきめた! でピカチュウが喋るのを思い出しました。上手くいかなかったサトシとピカチュウの関係って、こんな感じなのかな。かみなりのいしのくだりとか、サトシはピカチュウの意思を100%尊重しますからね。まあ、国民的アニメの主人公が無理矢理ピカチュウを進化させる、とかじゃ駄目だとは思いますが……。
 人間のエゴもそうですが、結愛の先入観やバイアスがかかった後の物事を見る目の変貌が恐ろしさを感じられて面白いポイントと感じました。「みんな昨日は生き生きと仕事をしていたのに、いや、そういう風に見えていたのに。もしかしたらそうかもしれない、という色眼鏡をかけるだけで、こんなに違って見えるものだろうか?」この辺が人間とポケモンの関係性におけるメスを入れる導線のようなものになっていて(多分考えすぎ)、エゴ云々の問題にはスムーズに入り込んでいけました。
 ピカと恵太、なんだろう、もう離れられなくなっているんじゃないですかね。そういうところはあると思うんですけどね……。私はどこか共依存的なものを感じてしまって。
 お互い真実を知ることを怖がっていて、このままの関係性が続けばそれでいいや、といった別に一歩踏み出さなくてもいいのでは感。もう「お前のことは分かっているから」「伝えなくても」といった思いが無いわけではないんじゃないかと邪推しています。だって結局好きって気持ちは一緒じゃないですか。そう感じたのは、
>「……チャッピーは、せっかく喋る練習をしたのに、それをけいちゃんに話してみたことはある?」
>「うるさいよ。きみに何が分かるんだ」
 ここなんですけど、自分も「それを言えよ」と思いました。でも、「うるさいよ」で一蹴して、言わない。じゃあ読者の私含めて、分かってないことがある。ピカと恵太にしか分からないであろう何かなんですよ、きっとそれは。
 自分は初読の時、ピカが恵太に対して、何らかの感情を示す場面が最後に挿入されるものとして読みました。そして、期待したそれが無かったので、初読は「あれ? 全然解決してないな」と思ったんです。だけどもう一度読んで、解決する、或いは結論を提示することだけが正しいのか、それがこの作品にとって最適な形なのかというのをずっと考え続けています。作者さんの解説が出るまで答えのない探究ですね……。この『With love,』という作品は関係性に焦点をあてているのではないかと。でも別の意図があるとしたら私の推量ははずれだと思います。こうした意図を探らないと、作品自体の最終的な評価に直結しないから、難解であり、挑戦的であると私は感じました。
 この作品、文字数めいっぱい使ってまだ3000文字ほど書き込める余地を残しています。このレベルの作品を書ける方が、まさか未完成で投稿するはずないので、これが完成形であるか、何らかの意図を残しているのか、多分どちらかだと思うんですね。
 この作品が「ポケモンと人間は分かり合える」という、どこかポケモンワールドにありがちな前提となる論説を覆したかったのかどうか、それは他の方も皮肉という言葉で表現されているのですが、自分にはちょっと分かりかねます……。個人的には「ポケモンと人間は分かり合える、信じ合える」ことを最初に否定した上で、間接的に、最後には肯定している気がしましたが。というのは、ピカが結局恵太のことを好きなので、人間を嫌いなピカチュウみたく振舞えていたかなという台詞に象徴されるように、こうした関係のあり方というのを信じたがっているのではないかと……。ただ、そうすると『With love,』というタイトルは果たしてどの部分を修飾しているのか? という疑問は残ります。もしポケモンと人間が分かり合えるという前提を覆して否定したいなら、ピカや恵太の描き方だと、やっぱり共に好きという気持ちの方が大きく映り、前に出ているので、少し苦しいかなと思いました。
 繰り返しますが、これは非常に面白いです。話の中身もTheポケモン二次創作していて、どんどんのめり込んで、右肩上がりにテンションが沸騰していく、パワーのある作品でした。作者さんの意図が色々と分からない部分がありましたので、解説をお願いしたいです。
レイコさん
評価:☆☆☆☆☆
 「With love」、字面だけ見ると愛の告白!? と何やらドキッとしますが、手紙の結びとしてはイッシュだと一般的なのですね。恵太にほのかな憧れを前々から抱いていた結愛が、勘違いを起こして妄想に走ったりしない冷静な娘で、しかもオボンの実に込められた愛情のメッセージだと解釈したあたり、人柄の優しさと育ちの良さが窺えました。ところで冒頭、私は読解力に乏しく時系列の把握に自信がないのですけど、夏休みを利用して恵太の農場に遊びに行けることになった結愛が、軽トラで農場へ連れてもらっている道中、という状況で合っているでしょうか? 結愛の前でだけ流暢な人語を操るピカ/チャッピーが人間とポケモンの関係性、恵太との関係性などにまつわる確信犯的な悪意を純粋な少女に吹き込むさまは一見憎たらしく、それでいて完全な本心ではないと分かる健気さと哀しさが入り混じってて、一面的に見ることができなくて何というか……一言で表せませんね。恵太も恵太で思い悩み、後悔してピカ/チャッピーとすれ違ったまま現在にいたる訳で。誰が悪いと責められない、もどかしさや苦しさを感じました。終盤、ピカ/チャッピーは姿を現さず、みどぼんぐりと焼きオボンがまるで象徴のように結愛のひと夏の体験を浮かび上がらせる幕引きが好きでした。投稿、お疲れ様でした。
リングさん
評価:☆☆☆☆
わやさん
評価:☆☆☆☆
灰戸さん
評価:☆☆☆☆☆☆
シガラキさん
評価:☆☆☆☆☆☆
さねたかさん
評価:☆☆☆☆☆
ionさん
評価:☆☆☆☆
ゾイシアさん
評価:☆☆☆☆☆☆
一葉さん
評価:☆☆☆☆
不壊さん
評価:☆☆☆☆☆☆
猫村さん
評価:☆☆☆
BoBさん
評価:☆☆☆☆☆
秋桜さん
評価:☆☆☆☆☆
浮線綾さん
評価:☆☆☆☆☆☆
Lienさん
評価:☆☆☆☆☆☆
クーウィさん
評価:☆☆☆☆☆☆
586さん
評価:☆☆☆☆☆
トビさん
評価:☆☆☆☆☆☆
じゅぺっとさん
評価:☆☆☆
伊雑アゴバルさん
評価:☆☆☆☆☆
ばすさん
評価:☆☆☆☆☆