境界なきかつをぶしの感想

水のミドリさん
評価:☆☆☆☆☆☆
頭にオボンが落ちてポケモンと喋れるようになった不思議を、さもありなんと提示して最後までそれについての解説なんか出てこない。これ、冒頭でサラッと書かれてますけどすっごいテクニカル。前提にポケモンって存在自体がすでにファンタジーなワケですよ。そこにサラッと謎を重ねることで「この作品はストーリーとか気にしないで読むもの」と読み方を教えてくれるのです。その前提を壊さないような工夫――頭を使わないでいいシンプルなストーリーに収めたり、次々にキャラクターを登場させてテンポよく展開させたり、ポケモンたちの愛らしさを差し挟んだりと作者様の演出が光っておりました。
それから何より、硬くも小気味良い言葉が並べられていて、そのリズムについ読み進めてしまう文章力がとても強かった。冒頭の主人公の人物描写はまんま“坊っちゃん”のそれで、リスペクトの感じられるパロディからして心地よかったです。『なまじ言葉が通じるからといって、説き伏せることが出来ると考えたのは哀れニャン太郎の迂闊の至りであった。』って一文、何回読んでも楽しくてつい笑っちゃいました。哀れニャン太郎の迂闊の至り! なんでこんな面白い表現思いつくんでしょ。本当に夏目漱石が連載執筆のあいまに筆やすめに書き上げてしまった短編、みたいな軽やかさ。
ただ文章のリズムを楽しむときストーリー上どうしても気になった二点。ハンターたちが弱ったチルタリスを放置した理由がわかりません。毒状態にしたはいいものの逃げられたのなら付近を捜索しているかもしれないし、そうならラムを探してくるどころではないはずですから。「撃退はしたが毒にやられて動けない」って一文を挟んでくれるだけで違和感を覚えなかったのですが、これはもったいない。それから終盤で否定されるワケですが、隠れ特性じゃないチルタリスは自然回復なので、じっとしていれば毒が抜ける、と言われても納得できちゃうんですよ。もしそうなっていたらあれだけ苦労してラムを届けた宗太の努力は何だったんだ、ってなりますし、その可能性も早めに潰しておいてくれれば頭からっぽにして読めたのですけれど。特性を泳がせておくなら、ヘラクロスに襲われ絶対絶命→自然回復で毒を退けたチルタリスが飛んできて逆に助けられる、って流れが鮮やかだったでしょうか。ポケモンと人間の助け合いってのもしっかりと書けますしね。
秋桜さん
評価:☆☆☆☆☆☆
面白かったです。なんとなく花田少年史を思い出したり。
あまもさん
評価:☆☆☆☆☆☆
雨の中のシーンが大好きです。いろんな感情が溢れだしたシーンですね。嫌いにならないでほしい、という、相手が大好きだからこそ出てくるピュアなセリフに涙腺がやられました…!そして等身大の10歳の男の子が頑張っている姿、涙が出てきます。そう!これは鰹節なんだ!と、最後、二人の中でしっかり分かり合えてる言葉になったときの感動はもう…!きっとこれからも二人にとって特別なものになりそうですね、鰹節。
あすぺふさん
評価:☆☆☆☆☆
色々な人との出会いの連鎖で、まるでリレーのようにラムを届ける。
たくさんの「良い人」たちによって届けられたラムのみ。
チルタリスも極度の人間不信を拭えていたら良いなと思いました。
葉穂々さん
評価:☆☆☆☆☆
猫と少年の一幕。面白かったです!
実は、中盤までニャン太郎はニャヒートだと思いこんでいました。
確かにブニャットだとわかる描写は書かれていたのですが、何故でしょう……先入観?

好きポイント
・ブニャットが主役ポケモン!
・偉そうだけども、宗太のことが好きなニャン太郎。
・最後の、ポケモンとの会話能力の喪失。王道であり、心地よい切なさを感じます。
コメットさん
評価:☆☆☆☆☆☆
普段は身勝手で自分中心に動く少年が、一つの出来事をきっかけに自分の見識を広げる事となる。王道と言えば王道ですが、いやはや良いですねえ本当。宗太くんがニャン太郎に謝る場面では、思わずこっちまで涙ぐみそうになりました。物語の冒頭に比べたら大きな一歩を踏み出して成長したもので。タイトルの意味が分かった時にも膝を打ちましたし、宗太くんとニャン太郎のキャラクター性に惚れこんでしまいました。しっかり段階と布石を踏んで辿って丁寧に最後まで至る感じ、読んでいて本当すっきりしました。惜しむらくは誤字脱字が少し目立つところでしょうが、あまり声を大きくして言う事でもないですね。
一葉さん
評価:☆☆☆☆☆☆
少年少女の成長ってやっぱり読んでて気持ちいいですね
成長物語として見ると宗太が読んでて一番気持ちいい成長の仕方をしてると思います、子供が少し大人になった瞬間と言うか
まるで夢だったかのようにポケモンの言葉はわからなくなってしまいましたが、是非ともカッコいい青年に成長してって貰いたいです
森羅さん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
好き!!!! です!!!!! 正直に申し上げてA作品で一番好きでした。なんてこった、三万字でここまで物語って書けてしまうのか……!! 夏目漱石っぽい書き口とニャン太郎の語りがとても好きです。「幼い頃からやれ、と言われたことはせず、するな、と言われたことをする問題児」である宗太くんのちびっこ特有の万能感というか子供らしさもめちゃくちゃ巧く書かれてらっしゃって「すごい」の一言でした。なんだろう、気づいたらとなりのトトロの世界に紛れ込んでしまったかのようです……。宗太君を通して見る、「少し不思議」な世界は本当に色鮮やかで、ああこんな物語が書いてみたいと思ってしまいました。物語の中身としては非常にシンプルで、「ある日ポケモンの声が聞こえるようになっちゃった!」からの「チルタリス救出作戦」なんですが、オボンをラムのみに交換してもらうために走る宗太君が色々な人やポケモンに助けてもらって、自分の不甲斐なさに気づいて、という流れが本当に素晴らしいと思います。国語の教科書に載ってそうな!! 宗太君もとても良い子ですが、ニャン太郎さんもめちゃくちゃ良いキャラクターで宗太君に自分の出来る事・自分ではできないことを気づかせてくれる先生役でもあり、彼の相棒でもある。二役こなすニャン太郎さんめっちゃ素敵でした……! 
宗太君がチルットを助け、チルタリスを助けようとするときの「それに困ってる人がいたら助けなさい、って皆言うてるし」がとても好きです。ごちゃごちゃ難しいこと考えず、素直なところが本当に年齢相応でものすごい好きでした!! 好き好き繰り返して中身のない感想になってしまってすみません。本当にめちゃくちゃ好きです……。
あと蛇足かもしれませんが、サブタイトルもとても好きでした。「椎名誠」さんの作品から持ってこられているのでしょうが、中身を知らずもしリンク等している、知っていればにやりとできる箇所があるなどあれば教えて頂きたいです!
乃響じゅん。さん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
協力して何かを成し遂げようとするワクワク感と、子ども故の制限の多さ、その中で何とかしようと知恵を絞る姿が魅力的なお話でした。
ラムのみを調達する方法を考えるくだりが好きでした。
買いに行こう、と言う大人なら当然のように出てくる発想も、子どもにしてみたら一大決心ですよね。結局87円しかないのも、やっぱり小学生ですね。
正直鰹節の例えは全然ピンと来ませんでしたが(ごめんなさい)、タイトルはやっぱりコレだよなあ、と思いますね。最後、鰹節を置くシーンだけでなく、チルットとチルタリスが畑にやってきて、宗太とニャン太郎が一緒に飛び出したところで、言葉が通じなくなってもニャン太郎との関係がよりよいものになっていることが分かるようになっていて、好きでした。
花鳥風月さん
評価:☆☆☆☆☆☆
個人的Aの癒し枠です。宗太くんとニャン太郎の掛け合いがとてもほっこりします。
そしてチルタリスの可愛らしいイメージが一気に覆り、神々しさを感じます……(笑)。
毒状態の描写がとても克明で「あぁ、ポケモンの毒ってこんな感じなんだなぁ」って思いました。
まーむるさん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
今回の個人的ベストヒットがこれでした。
そんなに古典とか近代の作家の事を知らずとも分かるオマージュ、特徴のある文体とそれに合ったストーリー。派手な事はそう起こらなくとも最後まですらすらと読める軽さ。軽くとも読み終わった後に残るすっきりとした印象の強さ。とても面白かったです。
照風めめさん
評価:スキップ
今回、タイトルとサブタイトルには椎名「誠」先生の著書にインスパイアを受けました。気付かれた方は流石です。
というのも実家に「かつをぶしの時代なのだ」という本を中学生の頃に見かけたのですが、十年以上たつ今もなおやたらとタイトルが脳に残っていました。投稿期間が始まって一週間頃、何か書こうかなと考えていた時にそれがふっと脳を過ぎったのがきっかけの一つです。
本当は先生の文調をコピーしたいと思ったのですが、エッセイ本ということとハイセンス過ぎたということで断念しました。気付かれた方もいらっしゃると思いますが、どちらかというと太宰治、夏目漱石といった名著の影響の方があります。今回は投稿していることがバレないようにしよう、と思っていたので、文体だけでなくその他作法的な所も込みで比較的いつもの書き方を殺してみました。お陰で新しい方法を理解出来た気がします。
もっと語ってもいいのですが、相当長くなりそうなのでブログの方でやりたいと思います。
あらためて今回作品を書くにあたって強力頂いた友人に、ここで感謝の意を表したいと思います。
カイさん
評価:☆☆☆☆☆☆
人とポケモンを鰹節に例えるとはユニークですね。しかしその鰹節をキーワードとして、人とポケモンの共存、隣に誰かがいることの尊さを理解していく宗太の成長が、とても清々しかったです。
ナルシストピジョンめっちゃ好きです可愛い。あと原作地名への当て字も秀逸で好きです。古鐘(こがね)かぁ…なるほど…。
ところで結局宗太が突然ポケモンと話ができるようになったのはなぜだったのでしょうか。不思議な一夏の体験、って感じですかね。
rairaibou(風)さん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
・読みやすさが抜群でした。この特徴的な文体でここまですっと入ってくる文章に仕上げられるのは作者さんの技量の高さだと思います。
・登場するキャラクターすべてが魅力的で素晴らしかったです。特にニャン太郎の可愛さはすごい。
・三万字にすっぽり収まるストーリーの構成も素晴らしいです。少年の小さな冒険と成長を余すことなく表現していました。
・A部門で自分が最もオススメする作品だと思います。
ばすさん
評価:☆☆☆☆☆
ポケモンの言葉が突然聞こえ、そして、また聞こえなくなる。
夢のような出来事だけど、夢ではない。現実に起きたこと。
心があたたかくなる物語でした。かつをぶしですね。
うにゃさん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
ニャン太郎の猫又感がものすごく惹かれて最後まで一気に読んでしまいました!
円山翔さん
評価:☆☆☆☆☆☆
ろくすっぽにう覚えてない
→ろくすっぽうに覚えてないorろくすっぽに覚えていない
本文中の別所で後者を使ってあるため、後者推奨

あっさりとそれを受け入れた孫の様子眉をひそめた。
→あっさりとそれを受け入れた孫の様子に眉をひそめた。

「吾輩は猫である」「坊ちゃん」を思い出す語り口調に物語でした。タイトルの意味に感服です。それからニャン太郎=ニャヒートだと思ってました。ブニャットだということが明かされたところで、元は細かったのに今では太って云々という描写に納得がいきました。こういう形ではぐくまれる絆というものもいいなぁと。ニャン太郎先生の仰ることは、私も心に刻んでおかねばと思う所存です。
ラプエルさん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
めっちゃ面白かったです。世界観も好きです。
リアリティのある話が好きなので、地名やきのみがルビ付きで漢字表記されていたり、夏休みの宿題が同じように存在していたり、ブニャットにニャン太郎と名前がついていたりと、もし現実にポケモンが居ればこんな感じになるのかなあという様子がとても丁寧に書き込まれていました。すごい。

タイトルはどんな意味なんだろう、と思いながら読み進めていきましたが、削っても削っても変わらない鰹節を人間とポケモンの間に境界なんてないというセリフに持っていったときはなるほどとうならされました。ニャン太郎さんすごいなあ賢いなあ。人間は言葉を理解できないだけで、もしかしたらそこら辺のポケモンたちも実際はかなり賢いのかもしれませんね。ピジョンさんなんか難しい四字熟語を使いこなしてましたし…。
チルットとチルタリスを助けるために宗太くんとニャン太郎が奔走し、たくさんの親切な人やポケモンに助けられながら目的を成し遂げるストーリーは読んでてとても気持ちがよかったです。まさに境界なき鰹節。ポケモンの声は一日しか聞こえなかったみたいですが、宗太くんには非常に価値のある経験となったことでしょう。

ちょっぴりうんざりしながらも宗太くんに寄り添うニャン太郎好きだなあ。落書きされてるのは怒ってもよさそうだけれども…拾われた時の恩があるのかなあ。一緒に遊んだりじゃれたりしてるあたり本当に仲がいいんだなあということが細かな描写から伝わってきました。
読むと心が暖かくなる素敵な作品でした。ありがとうございました!
Pさん
評価:☆☆☆☆☆☆
まったく中身を想像できないタイトルが前々から気になっていた一作で、読み進めてみればすとんとそのタイトルが腑に落ちるのもさることながら、まずその意味を明かす段からさらに「境界なき」心を信じてチルタリスのため奔走し、そうすることで主人公もまた心からその意味を理解するという二段構えに独自性を感じました。
やんちゃではあるけれど真っ直ぐな心を持つ主人公、彼に振り回されつつも嫌いになれないニャン太郎と憎めないキャラクターが揃っていて、その道中が否応なしに気になり引き込まれます。
近代古典のような文章、ボロボロになりながらも雨の中を進みチルタリスの元へ戻ろうとする主人公、最初は信じないもののその姿を見て人とポケモンの間の絆の存在を知るチルタリスと様々な要素が相まって、ポケモン版「走れメロス」のような気分で見ていました。
綿雲的なふわふわ感故か優しげなイメージで語られることの多いチルタリス、この話での開口一番「人間。何をしに来た。」で彼女がドラゴンタイプであることを思い出しました。チルットもああ見えて竜の子なんだよな……
終夜さん
評価:☆☆☆☆☆☆
なぜ鰹節?とタイトル見た時は疑問だったんですが、作中の「削れど削れど変わらない」という言い回しは鰹節だからこそ……いや、鰹節でなければ出せなかったこの作品独自の表現であり、作者さんの発想に脱帽致しました。
宗太くんとニャン太郎、両者の関係性もまた素晴らしかったです。
Ryoさん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
とにかくこの「落ちてきたオボンの実で頭をうった拍子にポケモンの言葉がだいたい一日だけ分かるようになった」という設定が物凄くツボにはまって大好きなんですよ。
ひょんなことから凄い能力を得た宗太がただただあちこちのポケモンに適当に話しかけて面白がっているだけなのが子供っぽくて可愛いし、能力が一日で終わってしまうっていうのも、白昼夢みたいでめっちゃいいです。
ニャン太郎のことも大好きです。話せるようになってまず言うのが飯への文句っていうのが好きです。人間の子供とポケモンがうっかり話せるようになったと思ったら些細なことで文句行って空気悪くなって、でもなんだかんだ心配するし、世話焼いてしまうし、ほっとかれない距離感を情愛と表現するのが好きです。愛とか友情じゃなくて、情という言葉が本当にしっくりくる。
あとは…ポケモンハンターとか暗にいる世界ではあるんですが、あくまで宗太の動ける範囲内で色んな人やポケモンに助けられて事が解決するのもいいですね、出てくるお金の単位も含めて…八十七円て…!
鰹節の例えなんですが、最後まで読み終わってみればいやもうこれは確かに鰹節ですねとしか言うことができない。謎の納得感…鰹節だよ人生は…(???)
ともかく大変面白く読みました。気落ちしてるときに読むと元気出そうです。ありがとうございました!
レイコさん
評価:☆☆☆☆
 面白かったです。ポケモンだろうと人間だろうと助けることに境界がない、まさしく削れど削れど変わらぬ鰹節。少し気になったのが、鰹節の例えはネコポケモンで鰹節が好物のニャン太郎らしくちゃっかりと小気味よくて好きなのですが、鰹節って削れば削るほどなくなっていきますよね。誰かを助ける心意気がよりによって消耗品というのは、深読みすべき皮肉なのでしょうか? それとも、さらっと流して軽妙な掛け合いの楽しさに集中したほうがいいでしょうか。いろいろなポケモンとおしゃべりできる体験が読んでいて楽しかったので、ニャン太郎の声が聞こえなくなったのが寂しかったです。しかし宗太にとっては声が聞こえなくなったことより、あの夢のような出来事が現実だったという証拠がきっちりしていればそれで満足なのですね。状況に臨機応変に対応できるさっぱりした子どもっていいなと思いました。投稿、お疲れ様でした。
北埜とらさん
評価:☆☆☆☆☆☆
 短編作品としての完成度が非常に高い作品だと思いました、まさに国語とか道徳とかの教科書に載っていそうな文学作品。カウントしたところ17800字程度なんですよね、字数で言えばテーマAでは長い作品には当たらないのですが、長めの作品群にも引けをとらないほどの質量を感じます。一文一文の密度が非常に濃いと言いますか。それも読みづらいというわけではなく、必要なものだけを丁寧に抽出して、ぎっちりと煮詰めた雑味のない結晶のような、そういう密度なんですよね。文字数以上の内容を感じるのはそういうところなのかなと思いました、いやはや素晴らしいの一言です……!!
 宗太君、10歳間近の少年の書き方が、これがもうかわいいのなんのって! ポケモンって原作でも二次創作でも「10歳で大人」みたいな風潮があり、10歳らしからぬ10歳を当然のように享受し続けているので忘れていましたが、10歳ってこんなもんですよね。一度目の鰹節のくだり、ニャン太郎に言葉のみで説明されてもうまく理解していない、それ以上に楽しさに水を差されたような不満感を前面に覚えているところがいかにもという。また、本心は特に拘りもないのに、ニャン太郎に他のポケモンでいいだろと言われたばかりにレディバへの執着を示してニャン太郎を困らせるひねくれ加減、本当に、いかにもという感じで……!!笑 人間の描き方がとても巧みだなと感じました。宗太君、ニャン太郎もなんですけど、かわいらしいキャラクタなのに、良い意味でキャラクタ然としていないんですよね。二次元らしい媚びてるような感じがまったくない。こんなにかわいいのに。文体の影響でそう感じるのかな? 上手い塩梅だなあと感心します、凄いなあ。
 晩飯の時、口で説明されて納得いかなかったことを、チルタリス親子をめぐる一連の出来事、実際に自分の足で確かめることで、宗太君は理解することができたんですね。小さいけれど確かな少年の成長と言うものが、極めて誠実な過程で描き出されていたと思いました。わがままをする自分のそばにニャン太郎がいつもいるありがたさ、自分一人ではなにもできなかったということ。それを遂に理解した宗太君が、雨の中で声をあげて泣くシーンがものすごく好きです。「ニャン太郎、ごめんな。」「いつも迷惑かけて。」「嫌いにならんといて欲しい。」この言葉に至る宗太君の無垢さ、それに対するニャン太郎の応答の優しさと誠実さがあまりにも美しい、読み返すたびに泣きそうになります笑。人とポケモンとが垣根なく支えあうこと、周りが助けてくれること、それは悔やむことではなく、むしろ誇るべきものであること。う~ん、沁みますね……!! ポケモンパワーを感じます……ッ!!
 ニャン太郎が語る宗太の得た教訓と言うものは、物語中で一片の寄り道もなく、まっすぐまっすぐに描かれているんですよね。メッセージ性が強いといいますか、非常に骨太な作品だなと感服いたします。だからこそと言いますか、これはもう完全に好みの問題に違いないのですが、個人的な好みで言えば、もう少し「教訓」を何かで包んで見せて欲しいなあと感じました笑。具体的にどうという話ですが、これはもう本当に自信がないので本当に無視していただきたいのですが、途中で出てきた宗太君に助力する二人の人物をネームドキャラにするくらい、エピソードに色を付けて、彼らからの施しによって宗太君が受けた生の反応を、もう少し見たかったなという感じです。現状、この人物にまつわる出来事や彼らによる施しそのものが、私には宗太君への「教材」のように見えてしまっていると言えるでしょうか。まあ、実際にそうなのだと思いますので、これはもう本当に、個人趣味の領域です。作者さんが必要のないものをすべてそぎ落としてまっすぐで骨太な作品にした意図は大いに汲めるものです。が、いかんせん私、すっごい味付けの濃いやつが好みなので……!!笑
 教訓教訓と言いましたが、鰹節に例える絶妙なズレのような子どもと猫らしい微笑ましい、くすっとくるような場面がたくさんあり、また読後感もとても心地よく、10歳の等身大を誇張なく描いた作品であるように感じました。サブタイトルは椎名誠の作品から取られているんでしょうか、そういった粋な遊び心も素敵ですね。何やら色々とパロディ?みたいなのも含まれているとかで、作者さんの解説が楽しみな作品でもあります。広く愛されるべき良作でした!!
 投稿お疲れさまでした!
逆行さん
評価:☆☆☆☆☆☆
 文章力に関してはこの小説が圧倒的に優れていると感じました。とても読みやすく、内容がすらすらと頭の中に入ってきます。テンポもめちゃくちゃ良いし、無駄な文章ってものが一つも無いように感じました。二万文字未満という少ない字数でしっかりと纏め上げており、作者さんの高い技術を感じとることができました。 
 内容も、王道の冒険物語って感じで惹き込まれました。「はじめておつかい」のハードモードみたいな印象がありますね。途中何個か主人公達には壁が立ちはだかり、そのたびに周囲のポケモンや人々の力を借りてその壁を乗り越えていく。この爽快感はやはり素晴らしいなあと思います。しかもこのお話は一つ一つの困難がとても丁寧に描かれており、凄く読んでいて面白かったです。個人的にはピジョンに助けてもらうときに、羽を綺麗だと褒めまくってからお願いする所が好きでした。おだてられると手を貸したくなるのは、ポケモンも人間も同じなのですね。まさしくここにも境界がない、と言った感じがしました。 
 トラックをヒッチハイクするのを一度止めたり、冷静に見れば、この少年の行動は最善ルートではなかったかもしれません。チルタリスは毒で苦しんでおり、一刻を争う状況なので、本来であるならばニャン太郎と一緒に行くことよりも早く辿り着くことを優先すべきでしょう。また、この少年は助けに行こうかどうか迷ったりもしていました。親に怒られるかどうか、そんな些細なことで葛藤したりもしていました。ある意味で彼の利己的な部分が垣間見れる所だったと思います。 
 ですが、自分としてはこういう所が翻って凄く良いなあって思います。誰かを助けるときに、利己的な感情を一つも持ち上げてはいけないなんてことは無いと思うのですよ。彼は別に完璧なヒーローでもなく、むしろ未熟な子供なので、こういう感じの方が自然だったと考えております。 
 このお話って走れメロスや坊っちゃんと言った、文学作品のパロディがたくさん入ってますよね。そこも面白いなあと思いました。たぶん自分が気がついていないだけで、本当はもっとたくさん入っているのだと思われます。 
 この小説に関して、一つだけ難癖を付けるとすれば、お話のテーマやストーリーが平凡であったことでしょうか。弱ったポケモンを助けたり、ポケモンと人間が協力して何かを成し遂げたりと言ったものは、アニメや漫画と言った公式作品及び二次創作でも良くあるものなのですよね。このお話の場合は圧倒的な文章力でそれを描いているので、凄くそこは評価できるのですが、自分としては何か一つ新しさが欲しかったなあっていう気持ちもありました。 
 既存の文学作品のパロディを挿入することが新しさなのではないかとも一瞬考えましたが、しかしパロディをやることが新しいっていうのも何か矛盾しているというか、ちょっと違うのかなあっていう気がしました。既存のものを踏襲してクオリティーの高いものを作り上げるというのは素晴らしいことだと思うのですが……難しい所ですね。 
 後タイトルに関してですが、凄く惹き込まれるもので良いなあって思いました。「境界」って言葉のかっこよさと 
「かつをぶし」って言葉のシュールさが融合して、絶妙な面白さを醸し出していると思います。素晴らしかったと思いました。 
 このお話はストーリーの完成度、文章力の高さ、様々な面において評価のできる作品であったと思います。全く自分の知らない世界なので無責任にこういうことを言うのもどうかと思うのですが、新人賞に一番近い作者さんなのではないかとも思いました。投稿お疲れ様でした! 
春さん
評価:☆☆☆☆☆☆
 心が温かくなる、上質な短編。
 名作児童文学を読んでいるような気分になりました。どっちかというとリアル寄りの現代ポケモン二次は苦手なんですが、こちらの作品はすらすらっと受け入れ読むことができました。作者さんが丁寧に人物やポケモンを表現されており、かつ、かなりの文章力のある方だったためだと思います。
 素直でまっすぐな宗太君。問題児ではありますが性根は決してひねくれておらず、読み始めから好感が持てました。その相棒ニャン太は冷静沈着、頭が切れる。正反対な二人ですが、かちりと噛みあった良コンビだと思います。ニャン太と宗太はストーリーを通して、お互いに影響しあっていることがよく分かります。特に私は、宗太がラムの実を買いに行くくだりが一番好きです。見知らぬ人やトレーナーが、名も名乗らずに宗太を助けて去っていく。宗太もそれを通して、自分が多くの人にこれまで助けられてきたことを悟る。チョイ役だったのですが、助けてくれたお姉さんもトレーナーも、とっても格好良くて好きです。こういうことがさらっと出来る人になりたい。
 最初に通りがかった車に、宗太かニャン太のどっちかしか乗れないといわれたとき、宗太が断るとこも好きです。ニャン太が「乗れば良かったのに」と言いましたが、「一人やったらなんもできん。やから一緒に行くんや」と返す。短いやり取りなんですが、じんわりと心が温かくなるシーンでした。
 ストーリーラインの中で一番すごいのは、宗太とニャン太の心理の移り変わりが、違和感なく行われている点だと思います。劇的な何かのシーンを挟んで、ではなく、短編中のあらゆる出来事を通して、宗太の心に沁み込んでいき、ラムの実を入手して帰るくだりで、今まで経験したことから一気に悟る。宗太の心の変化に無理がないのが良かったです。
 ほんの少し気になる点としては、チルタリスとのシーンでしょうか。チルタリスのセリフややり取りのくだりが定番の型にハマっている気がします。あそこも重要なシーンだと思うので、もう少しチルタリスの気持ちを掘り下げて書けると良かったと思います。もっとも、まともに掘り下げると難しいシーンなので、あえて深く突っ込まずに書かれたのかもしれません。私自身、同じ立場に立ったら掘り下げるかどうか、書ききれるかどうか、かなり悩むと思います。
 あとタイトルの意味、深い様な、深くないような……。しかし鰹節とは言いえて妙な。ニャン太らしい表現で、私は好きです。
 ではほっこりするお話、ありがとうございました!
ポリゴ糖さん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
 夏目漱石や太宰治を彷彿とさせるような明治文学のような文体が特徴的で、描写は全体的にシンプルであっさりとしているのですが、ストーリーを進める上で必要な情報はきちんと伝わってきましたし、むしろサクサク読めるという点では本作のストーリーと絶妙にマッチしている印象があります。実際3万字近くの作品が多い中、少なめの文字数できっちり完結させているところは非常に高い文章力を感じるところです。密度が高い、と言うべきでしょうか。
 ストーリーが非常に良かったです。近くの町までラムを買いに行く、言葉にすればたったそれだけ、単におつかいと言ってしまえばそれまでですが、そんな中で人の優しさに触れ、ポケモンにも助けられ、そして最後にはきちんと目的を達成する。その後にまたポケモンの言葉が聞こえなくなる、というのも、たった一日の不思議な経験だったというのを強調するようで(もちろんそれは夢ではなく大切なことを学んだ大切な一日だったのですよね)、とても良い締め方だったと思っています。
 宗太のキャラクターも、年相応な面が濃く描写されていて素晴らしいと感じたところであります。9歳(10歳間近)の宗太が、ポケモンと喋れることを確かめたくて外に出て行くとか、それで話しかけたピジョンに対しても、その話の内容がどうこうよりも喋ることができることそのものに興味があるから、ぶっきらぼうな返事をしてしまうあたりとか、ニャン太郎の理屈っぽいところに耳を貸さない純粋さとか。「そんなん、助けに来たのに決まってるやん。」こういったセリフにも表れているところで、非常に上手い。けれど作中の経験を経て、ニャン太郎が傍にいてくれることの大切さを知り、確かに彼は一つ成長したのでしょう。
 鰹節の例えがいまいちピンと来なかったのですが、宗太とニャン太郎の間で通じ合っているのであれば、それはきっと最良の比喩なのでしょうね。
 後味の非常に良い作品でした。短編としての完成度はカーニバル中でもトップクラスだと思える、そんな一作です。
早蕨さん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
 単純な文章のうまさに圧倒されました。弱ったポケモンを助ける。自分は一人ではなにも出来ない。言ってしまえば使われてきたテーマのはずなのですが、かつおぶしを使った言い回し、小さい子ならではの買い物の難易度、自分だけに聞こえるポケモンの声。一つ一つが組み合わさり、無駄がないなあと驚かされます。文字数もそこまでないですし、ブラッシュアップされている感がすごかったです……。
雪椿さん
評価:☆☆☆☆☆
 マスクネームを見て、作者様は椎名誠さんのファンなのかな、と思いました。もしかしたら文体を椎名さんに寄せているからそうしたのかもしれませんが(しかし、文体はどちらかと言うと昔の文豪のような感じなので、やはりファンなのでしょうか)。
 ちょっとした出来事がきっかけで目覚めた、少年の不思議な能力。最後の方で残念ながら能力はなくなってしまいますが、彼らが築いたものはなくなることなく続いていくのでしょうね。
 それはともかく(え)、どうしてオボンがきっかけでポケモンの言葉がわかるようになったのでしょうか……。やはり頭に衝撃があったからですかね。そこのところが少し気になるため、作者様の解説を楽しみにしております(もしあれば、の話ですが)。
48095/坑さん
評価:☆☆☆☆☆
 ピジョンが手助けしてくれる辺りから、胸が熱くなりました。ポケモンや人に助けられながらチルタリスまでオボンを運ぶ一人と一匹、いいですね。
 ニャン太郎がつたえたかったことを宗太がちゃんとこのお話の中で学んでいて、綺麗にまとまってました。
フィッターRさん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
 タイトルのインパクトがすごいですよね。かつをぶし!? いったいどんなお話なんだ!? と初見のとき思わずにはいられませんでした。ポケストカーニバルトップクラスの読みたいと思わせるパワーを持ったタイトルだと思います。
 肝心の中身も、王道ど真ん中のポケモンパワーストーリーを、文学調の文体で描くというひねりを加えているおかげで、タイトル負けしないパワーを持ったものになっていますね。
 タイトルにもなっている"人間だとかポケモンだとか、そこに境界は無いのだ。削れど削れど変わらない、鰹節のようにな。"をはじめとして、"低気圧が押し寄せてきたかのように、宗太の表情が曇りゆく。"や"整然とした三両編成の電車のように等間隔で走り続けていた"のような、洒脱な比喩表現が多く出てきているのが特に素敵でした。
はやめさん
評価:☆☆☆☆☆
 なんだか、夏目漱石の『坊っちゃん』を彷彿とさせるような出だしだったなあとなつかしい思いに駆られました。紹介の部分で落ち着きが足りないとありましたが、その後の宗太の言動を見ていると結構良い子というか、しっかり考えて行動していたように受け取れてしまった……。まっすぐな少年なんじゃないかなと思いましたね。いくら外れた行動しているとはいえ、小さい子からしたら大の大人、それも買い物中に「坊や、家はどこや?」とか「坊や、家の人の電話番号教えてくれへんか。」なんて迫られたら、恐怖で縮み込んでしまいますよね。この辺の目の前が真っ暗になる描写は、絶妙だなあと感じました。
 たとえば、自由研究のスケッチのくだりが、一番子どもっぽさという描写でこの作品で上手いなと思った部分です。レディバが飛び去ってしまって、ニャン太郎に「思い通りに行かない事なんて幾らでもあるものだ。ほら、そんな顔をせず他のポケモンを探せば良い。」って説かれるじゃないですか。でも、宗太はレディバが良いのだと意地を張る。ここ、すごくリアルだなあ、否定されると、心では分かっていても事実を認めたくなくなる、自分もしょっちゅうありました。やっぱり、子ども心を解している作者さんと思いました。
 ポケモンの声が聞き取れるようになったことで、逆に不満を聞いて後悔するのは面白いなと思います。これは今大会でも似たような作品がありましたが、ポケモンの声っていっても実は本音だったり、不満だったり、そこまで嬉しくない、かえって聞けなくてよかったかもなあっていうところがなんとも現実的ですよね。
 お話全体としては、非常に素朴な流れだったなあという印象です。大きな事件が起きるわけでもなく(チルタリス、一応ハンターにやられてはいますが)、少年とポケモンがより関係性を深めるまでの一幕を綺麗かつ繊細な筆致で描かれていたと思います。
 最後、ニャン太郎の声が聴こえなくなる終わり方、王道でこそありますが、とても気持ちの良いラストでした。不思議な空気感が、収まるべき鞘に収まったような、どこか儚く寂しげな情緒があります。この出来事を通して、宗太はまたひとつ子どもから大人への階段の一歩を上ったのではないかな、と思います。 
砂糖水さん
評価:☆☆☆☆☆☆
リングさん
評価:☆☆☆☆☆
わやさん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
灰戸さん
評価:☆☆☆☆☆
シガラキさん
評価:☆☆☆☆☆☆
さねたかさん
評価:☆☆☆☆☆
ionさん
評価:☆☆☆☆☆
ゾイシアさん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
不壊さん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
猫村さん
評価:☆☆☆☆
BoBさん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
浮線綾さん
評価:☆☆☆☆☆☆
Lienさん
評価:☆☆☆☆☆
クーウィさん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
586さん
評価:☆☆☆☆☆☆
トビさん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
じゅぺっとさん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
伊雑アゴバルさん
評価:☆☆☆☆☆