under the false maskの感想

雪椿さん
評価:☆☆☆☆
禁忌の一つに触れた話でした。何にでも「へんしん」できるメタモンの能力を使って、「ポケモンは人間に成れるのか」という研究をされている世界。メタモン一匹の「へんしん」ではなく集合体での「へんしん」ということに驚きました。細かいですね。並々ならぬ研究への熱意が見て取れます。
ほのぼのとした日常と並行して起こる行方不明事件。千可ちゃんが犯人なのかと思っていたら、まさかの集合体の中の一匹だったとは。最後の文章を見る限り、悪いメタモンはいなくなったからもう大丈夫、とは言い切れませんね……。また別のメタモンが事件を起こしそうです。
そういえば、千可ちゃんの名前は「メタモンは何にでも変身できる。つまり千の可能性がある」から「千可」なのでしょうか(何回か読み返してから気付いた)。千の可能性は、いい未来にも悪い未来にも繋がる……。色々と考えさせられる作品です。
水のミドリさん
評価:☆☆☆☆
生物的・社会的ツッコミはひとまず置いておいて、これはホラーですねえ。ちかちゃんの舌ったらずで無邪気な喋り方がまた意思疎通できなさあって恐怖みが増しています。トランプまわりのやりとりがほのぼの微笑ましく、だからこそ神経衰弱を曲解したちかのえげつなさが際立ちますね。読み返すと「おんなじものえらべたら、もらえるの」の台詞にゾワァしました。文体も山場で緊張感を出しシッカリ盛り上げてくれる演出っぷり。
そういうホラーに覆われて、論理展開が理解できませんでした。トイレで女の子の首を締めていたちかは悪くない? 群体でやっとちかを構成してるのに構成員のすーくんは単独で他の人間にすり替われるの? ちゃんとすり替われていたなら失踪事件は起きなくない? 神経衰弱で同じ人間を揃えれば貰えると犯行を企てたのがちか張本人なのに、実行犯が膵臓くんならちかに責任はない……? それは虫が良すぎる話じゃないですか。そもそも人間が失踪している以上その原因は根本から取り除かれるべきで、責任がちかにあるかどうかは瑣末なことのような気がします。前にわるさしたみーくんせっちゃんが処分されてもちかが学校に居続け問題がもみ消されてるってことは一帯の学校は研究所の実験機関的なものなのかな。それはそれで怖いですけど……。そんな流れでラスト、マスクの言葉遊びでそれらしく締めて強引な展開をうやむやに済ませようとする魂胆が見えました。社会的問いかけで読者に考えさせるより、ホラーをダメ押ししてくれた方が「なんかわけわかんないけど怖かった」ってなって設定の甘さも気にならなかったかも。読者に考える余地を与えない着地のがスマートだったですかねえ。髪担当のヘアちゃんがわるさして次の日ちかの髪型がめっちゃ変わってるとか面白くないですか?(
終夜さん
評価:☆☆☆☆☆☆
最初の一文から実に不穏ですね。
おっ、これはただならぬ事情がありそうだな……?と冒頭の時点でわくわく致しました。
クラスメイトの腕が溶ける、という異常事態を目撃したにもかかわらず、全く動じないどころか「眠いんだけど」と仰る主人公さん……いや~、強いですね。JKの鋼メンタルぱねぇ!!
そのクラスメイトも、なんとメタモンの集合体、というところに驚かされました。
人間の器官のうち、比較的大きな器官ごとに『へんしん』させた集合体……相手がメタモンだからこそ成せたことですが、それって冷静に考えたらクッソえぐい生命ですね。
人間の姿かたちへ更に近付かせるべく、『へんしん』させたメタモン同士をくっつけさせる、というアイディアそのものが純粋に怖かったです。
ラストで無邪気に笑うちか=主人公を取り巻く現状が何も好転していない、という恐怖もダイレクトに伝わってきました。これには鋼メンタルの主人公さんでも近々発狂しそう。
作中では出てこなかったけど、ちかの『保護者』さんは一体何を思ってちかをつくるに至ったのだろうか……その辺りの背景も、かなり気になりました。
メタモンとホラーってめっちゃ相性いいんだな~(テーマAの24番にも目を通しながら)
ionさん
評価:☆☆
最初に見たときは、あのメタモンが生命の定義についてのメタファーだと思ったけど違うみたい、かな。
そっちの、P様解釈の方が道理は通る。
教師が不祥事を起こしたとして、それを指をくわえて知らなかった男子生徒に責任があるわけないと思うし、って話を書きかけていました。

二次元の外から僕たちは怖さを摂取するけど、
それでも、ちゃんとしたシステムが整っていない世界で、彼らは生き続けなきゃいけないんだお!!ってのは主張したいな。
っていうかそう感じました。

そんなわけで、胸糞悪さを楽しむ回路は自分には装着されていないみたいです。 どう感じるのが作者にとっての正解だったかはわからないけど。
円山翔さん
評価:☆☆☆☆☆☆
丸呑に遭う話からマサポケさん関連の方かなぁと勘ぐってみました。違ったらごめんなさい。「メタモンがみんななかよしじゃない」という、DPP時代のネタ(ポケッチの相性チェッカー)をここで見られるとは。みんながみんな「ちか」になりたい。「ちか」は人間。ニンゲンになるために、人間を食らう。神絵師になりたいから神絵師の肉を食わせろという感じでしょうか……もしも、本当にそんなことが起こるとしたら、知らない間に隣の人がメタモンに入れ替わっているかもしれないですね。そう思うとぞっとしました。それで、「メタモンは何になれて何になれないのか」という議論が発生したのかと納得しました。
あすぺふさん
評価:☆☆☆☆☆☆
メタモンを集合体にして、それをうまく扱っている作品で、考えさせられる作品でした。
灰戸さん
評価:☆☆☆☆☆☆
メタモンの使い方に驚きました。いや、恐ろしい……。子供のような話し方と無邪気さが、かわいいなーと思ったところから恐ろしさに変わるのがぐさっときました。
照風めめさん
評価:☆☆☆☆
まさにホラー! これは怖い!
ホラーに関しては正直苦手で専門外なのですが、「何か分からないもの、得体の知れないものに人は恐怖する」というのを聞いて納得しました。たしかに、正体不明な怖さを感じます。
ちかちゃんのこの作品中盤までの可愛らしさと、後半の確信部でのギャップがなんとも鋭角的! 設定も丁寧に、説明するところは説明する。しかし明かさないところは明かさない、というメリハリがついていたように感じます。
メタモンが単体で人間になる、であればありがちなのですが、群体で人間になるのはとても驚きました! カビゴンのような大きいポケモンに変身するのもそういうリスクが必要なんだろうか、考察も捗ります。
群体であれば当然、今回のように腕の役割は嫌、という個体が現れるのも当然。今回はちかが対応してくれたのでまだ良かったんですが、集団で叛逆されたらたまったもんじゃないですね……。もしかしたら主人公以外にも助かった人はいそうですが、噂話にはなりそうです。
そもそも授業中突然腕が溶けるクラスメイトがいるという話も流布されているのであれば、すぐ特定されそうなんですが、ちかの背後関係者は一体何者なんだ……。
リングさん
評価:☆☆☆☆
とってもホワイティなお話でした。
メタモン同士は中が悪いという最近明らかになった設定を巧みに使い、メタモン同士の仲の悪さゆえに統率が取れない。とはいえ、メタモンはHP以外は同じ強さのはずだから、よほどのことでもないと一方的に負けない……と思ってしまいました。
特別人間に支持されたなどの理由もなく、メタモンがメタモンのまま攻撃するのは、違和感があるかなぁと
うにゃさん
評価:☆☆☆☆☆
ちょっとA部門と合わせてメタモン怖すぎませんか?笑でも多分悪いと思ってないんだろうな…そこを愛したい自分がいる…
砂糖水さん
評価:☆☆☆☆☆☆
ちかちゃん…。
ちかちゃんが可愛ければ可愛いほどぞわっとしますね…。
読みながら、これは犯人がちかちゃんかそう思わせて別の真犯人がいる、のどっちかかなあと思ってたんですが、なんというか予想の上を行かれてしまいました。やべえ。怖い。好き。
乃響じゅん。さん
評価:☆☆☆☆☆☆
じわじわと迫りくる恐怖を感じる、良いホラーでした。
ちかの舌足らずな喋り方が逆に怖いんですよね。最初から。無邪気な振る舞いが逆に嫌な予感を掻き立ててくれました。恐らく作者さんの計算のうちだと思います。
ちかと一緒に神経衰弱をするときの説明が丁寧なのが良かったです。ちゃんとちかに合わせていて、ちかがいかにクラスに溶け込んでいるのかが伝わってきました。
丸呑みの話の直後にいなくなったちかの部位が胃だったり、ドッペルゲンガーのうわさだったりと、狂気のチラつかせ方が好きです。10000字の中で、テンポを上手にコントロールしていると感じました。一歩ずつ確実に悪いことが近付いている。いつ来るか、いつ来るか、と言う引き方が非常に巧妙でした。
ちかの語りも、相当怖いですよね。メタモンの集合体が実はみんな脳の部分=人間=ちかになりたがっていて、どんどん離反していってしまう。ちか自身もそれは自分だとは全く思っていない。完全に切り捨てて考えているのが怖いですね。
ちょっと残念なのが、ちかの説明のシーンがすーくんが生徒を襲っているところに遭遇するシーンよりも後に来ることで、恐怖のタネが二段階になってしまっており、爆発力が若干落ちてしまったような印象を受けてしまったことでした。引きの上手さと、何で恐怖を味わわせるかが微妙にミスマッチを起こしているように感じてしまいました。一発でどんと読者を恐怖のどん底に陥れて欲しかったな、と言うのが読み手としてのわがままです。
しかし、理屈は通るけど倫理観は全然人間じゃない。人間の姿のフリをしているだけの、別の生物なのだと思い知らされるラストはぐっときました。
お題の使い方が最高にカッコよかったです。ルビで入れる発想はなかった。これは唸らされました。
葉穂々さん
評価:☆☆☆☆
これはホラー……ホラーです。
挿入される行方不明事件の報道が、読み手の「嫌な予感」を煽って良い味を出しています。

千可ちゃんの存在が許されるか、許されないかは別として……今後主人公は、彼女とこれまで通りの生活を続けることは不可能でしょう。
ホラー作品に相応しく、おぞましく、不安になるラストシーンでした。
ラプエルさん
評価:☆☆☆☆☆
これはまたテイストの違うR-15ホラー…メタモンってあんなすっとぼけた顔しててかわいいのに、ホラー側に回るとこんなに怖くなるとは…。

舌ったらずなちかちゃんがかわいいなってのが一読目の感想でした。言葉を教えたりルールを教えたりしてる様子は、まるで子供を相手にしているかのよう。高校生の中に一人(?)でいるちかちゃんはそれだけで異質ですが、事件に関与しているとわかるまでは無邪気でかわいいなーえへへーくらいで考えていたので、最後まで読んでみてから余計に背筋が寒くなりました…。

しかし、ちかちゃんはどうやってこの学校にやってきたんでしょう…おやとルビが振られた保護者とはどんな人なんでしょう。もしかしてこの世界ではメタモンの集合体が人を模して生活しているのが自然なのかもしれませんが、そのあたりの掘り下げがないのですごく異質でした。特例的なら学校に来た経緯をもっと掘り下げて書いてほしかったし、自然なことなのならそのことをもっと書いてほしかったです。そこらへんがもっと欲しかったなあと思いました。
Ryoさん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
これから何が起きてしまうのか、事件の中心にいる人物は誰なのか、割と早い段階からなんとなく察せてしまうのに、その「人物」はこんなにも罪がなく、愛らしい……
ちかちゃん。最初から最後までちかちゃんは悪くない……ということになっている。やったのは無理やり統合されたちかちゃんの腕で、足で、内臓で、頭を担当しているちかちゃんの人格はそれを良しとしていないから。(しかし、こんな実験するならメタモン同士は仲良くないっていうことくらい事前に調べとけよー!と作中の科学者たちに突っ込みたい…)
でもここで、ちかちゃんの全部が悪い、ということにして、ちかちゃんを構成しているメタモンを全て処罰してしまうと、恐らく事態は逆転する。
作中のニュースで、一連の事件を起こしたポケモンの種族名が、伏せられている。その種族への過剰な攻撃を防ぐために。恐らくちかちゃんが悪いということになってしまうと、それこそトランプのカードをひっくり返すように「メタモン」という種族全体への攻撃が始まる。排斥が行われる。人間は一度考え方の方向性が変わると、過剰に新しい考え方に馴染もうとして暴走しがちなので。
人間とポケモンの話として読んでいたのに、メタモンがあらゆる意味で人間のように振る舞っている(意見を表明でき、顔として働くトップのメタモンがいて、その下でトップの指示通りに働く沢山のメタモンがいる。まるで……)ために、実際の人間社会のあれこれを思って読後感が凄く深く重いものになりました。
この話は実際に文字として書かれた以上のことを語っている。圧倒されました。ありがとうございました。
あまもさん
評価:☆☆☆☆☆
こういう日常を侵す不気味で不穏なSFホラー大好きです!ありがとうございました!同じなようで違う、本人に罪の意識がない、ちかちゃんの話し方や思考回路、最高でしたね…。メタモンだからでしょうか、感情はあってもポケモンと人間と感覚が違うというところがすんなり入ってきました。
秋桜さん
評価:☆☆☆☆☆
おもしろかったです。無邪気な恐怖が凄い。
カイさん
評価:☆☆☆☆☆
「ポケモンが人間になる」ための実験として使われた、千可の一部としてのメタモンもまた、ポケモンとして確かに自我を持っていたのですね。ポケモンにもなれず人間(千可)にもなれず、それでも何かになって生きたいと願った末に起きた凶行だったと思うと、この一連の女子高生行方不明事件の犯人は本当にメタモンだったのだろうか……と疑問に思わざるを得ません。人間は生命というものに、どこまで関わって良いのでしょうか。そんな疑問すらもまた、おこがましい考えなのかもしれません。
クローン技術やロボット開発の倫理問題に、ポケモンという媒体で切りかかった作品、という印象でした。発想が素晴らしいです。
コメットさん
評価:☆☆☆☆☆
「ちか」の「神経衰弱」が言えない下りに声を出して笑わずにはいられませんでした。こういう掛け合い、僕は大好きです。メタモンの集合体と言うと一見可愛いイメージしかないのですが、その裏に潜んでいた真実に、嫌な汗をかきました。ですけど、こういうホラー的な要素がありつつ、割と軽快に読み進められる辺りのバランスが良いなと感じましたね。
春さん
評価:☆☆☆☆
 非常にブラックで哲学的短編。
 ポケモン……小説……? というよりはSFホラーに近い印象です。でもポケモンの話もわりに違和感なく入ってましたし、メタモンの集合体といわれて「あーなるほど」と思いながら読めました。作者さんの文章力が高く、話の完成度も高かったことが、受け入れられた要因だと思います。凄い。
 連続する事件と日常が交互にシーンとして合わさっています。どう転ぶかな?と予想しながら読んでました。パターンとしては①ちかちゃんが犯人 ②ちかちゃんは犯人の関係者 ③ちかちゃんが犯人と見せかけてミスリード の3パターンを想定して読んでいました。しかしまさかのちかちゃん集合体の一部による犯行。まさに予想外。ちかちゃんは悪くないですし、ちかちゃんを構成していたメタモンも悪くない。どちらの言い分も納得できます。食べちゃうのも、差し替えのためだったと。納得できる。しかし、共生は無理ですね。この実験は破綻していますが、ちかちゃん自身は悪くないだけに何とも言えません。いや、悪くないの、か……? 悪いパーツは入れ替えたら万事OKなのでしょうか。主人公が悩むのも仕方ない。私も読み終えてなお、悩んでいます。最終シーンのくだりは特に哲学的で、最後のちかが非常に不気味です。忘れられない短編になりそうです。ありがとうございました。
48095/坑さん
評価:☆☆☆☆
 行方不明のニュースに、とけちゃったうでに、なんだかやばそうな研究に、序盤から恐怖しかありませんでした。
 始終、不穏な空気を絶やさないで書くというのも力がいることだと思います。特別なスキルのひとつだと思います。どうしてこんなお話が書けるのか、どうしたらこんなことができるのか。作者さんはメタモンを噛み千切って腹に収めたことがあるんじゃないか。
 とてもインパクトのある作品でした。
はやめさん
評価:☆☆☆☆
 今大会メタモンはよくホラーに利用されますね。人工ポケモンを造り出す、ではなく、メタモンで一個の人間を形成するところがおもしろいなと思いました。ミオ図書館の蔵書でも人とポケモンは同じだったとありますが、その一節を思い出すお話でした。
 タガの外れた倫理観を不気味に演出するのがお上手ですね。どこまでいってもポケモンはポケモン、人間は人間ってことかしら。
 ちかの起こす事件規模に対して、彼女自身が無事なのは、どうも国家権力が盾になっている、背後で進められる人体実験の一環なのかなぁ…と勘繰ってしまいますね。
ポリゴ糖さん
評価:☆☆☆☆☆☆
 メタモンの群体で人間を造るというところにめちゃくちゃ痺れました……。「ちか」ちゃんのたどたどしい喋り方、「神経衰弱」の言い間違いのところとか、人格の未発達さを感じさせる表現は秀逸でした。同じものを揃えると自分のものになる、というトランプゲームの神経衰弱の特性を、現実にも適用してしまうところ、その発想に舌を巻きましたし、幼さを表現するという点でも高いセンスを感じます。このたどたどしさに対する微笑ましさが一気にひっくり返るところ、これが恐怖を煽る点で非常に効果的なのだと思います。
 個別のメタモンたちの望みが「くらすのみんなとなかよしになりたい」というところにやるせなさを感じます、全身のメタモンたちが無邪気に笑顔を作っているラストのシーンもよい演出だと思いました。
 作中の出来事をしてホラーチックなお話なんですが、含蓄に富んでいると思うのですよね。長くなったので補足にしましたが、研究者はたぶん、全部のメタモンが期待通りに働くことを期待して「ちか」を造ったんじゃないでしょうか。思惑通りにはなっていなさそうですけれども。
 少し「ポケモンは人間に成れるのか」というテーマから離れてしまっている印象はありましたが、これは私の読み方の問題かもしれません。現実寄りの世界観で倫理的なところの問題というのはあるのでしょうけれど、そこまでぶっ飛んでいるようなところも含めてぞっとしたお話でした!
(補足:長ったらしいのでこの先読まなくてもOKです)
 この「ちか」ちゃんですが、群体でありながらいち個人として扱われているところに、個人と社会の相克というものを見出しました。社会はそこに属する対象が皆期待通りの動きをすることで成り立つものという考えもあって、恐らくはメタモンの群体も「「ちか」の命令に従って全部のメタモンが与えられた役割を忠実にこなすだろう」と期待して作られていると思うのですよね。その中にあって、社会の歯車=体の部位になんてなりたくない、いち個人=体のパーツではないいち個体として在りたい、という望みが強いほど、そういう期待通りの動き=上の命令に従順であること、をしなくなる。逃げ出す程度なら別段上からのお咎めはなさそうですが、他者の権利を侵害したすーくん(膵臓かな?)みたいな逸脱しすぎたやつ=法規を破った犯罪者は、そいつさえ取り替えて=隔離してしまえば問題ない、みたいな。全部のメタモンがストライキしてしまえば崩壊するのですが、させないような訓練=「社会人ならこう在るべきだ」的な縛りがありそうです。そんな社会風刺めいたものを感じます。……考えすぎでしょうか。
シガラキさん
評価:☆☆☆☆☆
 ホラー風味でありつつも、ポケモンと人間について考えさせられる作品でした。『チカちゃん』になりたかったメタモンが『チカちゃん』になるために人間を食べてコピーしようとする……。何よりゾクゾクさせたのは、チカちゃんの登場から日常パート内でチラチラ浮かび上がる事件なんですよね。ここでほぼすべての読者はチカちゃんがやっているのではなかろうか、と勘繰るわけです。物語のチカちゃんの友達はそんなこと思わず、チカちゃんと楽しく遊んでいるのも読者からすればドキドキなわけで、見せ方がとてもうまいなあと思いました。
 犯人はチカちゃん、と見せかけてチカちゃんになりたかった手足などのメタモン。彼らの言う『チカちゃん』というのはみんなに認識してもらえる部位であり、手足などではない、ということですよね。手や足になったメタモンはみんなからは『チカちゃん』の手、足としか見てもらえない。だからそこに話しかけてくれたり、遊んでくれる人はいない。でも『チカちゃん』だけはみんなとお喋りできるし、遊んでもらえる。それが羨ましくて、『チカちゃん』以外のメタモンは『チカちゃん』になろうと人間を食べていた、ということですよね? それを見て自分は悪くないと素で思う『チカちゃん』、人間とポケモンの倫理観の違いなのでしょうか……。あどけない普段の様子の中には、狂気はらんでいた。すっごくゾクゾクしました。マスク、ルビの使い方もうまい。
 最後の最後で無邪気に笑ったのは『チカちゃん』なのか、それとも手足となっているメタモンが笑ったのか……。ポケモンが人間に成ることは可能だったのか、そこに解法はない。偽物でもなければ、本物でもない……。難しいところですね。
 作品投稿、お疲れ様でした!
北埜とらさん
評価:☆☆☆☆☆
 なんて化物を書くのが上手い作家さんなのでしょうか……!! 凄まじかったです、確かに恐怖しました。ストレートなホラー作品ですね。一体何が怖いんだろう、ネタも展開も怖いし、ちかちゃんの台詞の書き方も不気味さを醸し出しているし、文章も演出力に非常に長けていると感じます。おそらく一番怖いのは、「意味が分からないから」怖いんでしょうね。放課後にトランプをしているシーンなど、女子高生らしい和気あいあいとした凄くありふれた日常の光景じゃあないですか。その至極普通の日常の中に、紛れ込んでいる、圧倒的な「異物」のちか。この違和感があまりにも怖い。
 この作品はツカミが非常に良いですよね。突然腕が溶け落ちる、この異常事態に、完全に慣れきっているという異常事態。からの哲学的な問答、うまく言えませんがめっちゃハイセンスでカッコイイなと思っています、私には書けそうもないが見習いたい……! ハイセンスと言えばもう一つ、『マスク』の使い方は個人的には全作で一番好きでした。ルビで消化するところまでは私も発想がなくはなかったのですが、これを三つ重ねて、しかも物語の最終盤に、物語の核としてバシッと決めてくる。いやあカッコいいです。中二心をくすぐられました。
 メタモンの起こしていた事件について、「ただの捕食」でなかったところが好きでした。メタモン同士が仲が良くない、みんな「ちか」になりたい、そのために殺す。その人間に挿げ替わるために。これ、知性があるが故なんですよね。本能よりももっと高度な部分で考えているからこその行動、行動原理の明確な捕食より、「知性があるのにきっと分かり合えない」というところがうんと怖い。この化物の理不尽さが素晴らしいです。
 少し余計なことを書かせていただくとすれば、『日常の中の異物感』を出すために『リアリティ』を描いているからこそ、気になる点というか、ツッコミどころというのがちらほらと出てきてしまいました。どうしてメタモン一匹が変身したのではだめだったのか、なぜ集合体にしてしまったのか。『保護者』はなんなのか、どんな大義名分をもって、この「“触れてはいけないこと”の最たるもの」とすら描写されている実験を行っているのか。そして、なぜちかは依然として登校し続けることができるのか。などなど。重箱の隅を突きたくなってしまうのは、きっとこの作品はリアリティが重要な要素だったからだと思っています。……ただ、私はこの作品の謎は、「考察を楽しむ系の作品」という形で、肯定的に受け入れています。そういう「意味の分からなさ」も、この作品の魅力の一部であるはずですから!
 投稿お疲れさまでした!
早蕨さん
評価:☆☆☆☆☆
 なるほどなあ、と思いました。集合したメタモンはみんなチカになりたい、チカになりたくて人を襲う。人を襲ったチカはチカじゃない。チカは悪くない。面白い題材だと思います。ホラーというか、いい感じの気味の悪さが出ていてすごいなあと思います。1万の縛りなく、自由にもっともっと書ければもっとパワーふが出るんじゃないかなと思いました。今作だけでも十分面白かったのですが、是非もっと長い字数で本作を読んでみたいです。
フィッターRさん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
 ちかという人間のエゴが生み出した偽人間を通じて、人間の恐ろしさが伝わってくるお話でした。
 ちかというメタモンの集合体が恐ろし気に描かれているこのお話ですけど、ちかを作り出したのも、意思を持つメタモンを意思を持ちえない臓器の役割にしてしまったのも人間ですからね。それが、善悪の価値観が未発達な子供の社会の中で生き、倫理観を持たぬまま殺人を繰り返し、本来意思を持たない臓器にさせられたメタモンに罪の責任を押し付けて生きている。この構図そのものが、人間社会の色々などす黒い一面を煮詰めて濃縮したような、完成度の高いホラーに仕上がっていると思います。
 そもそもなぜちかが高校に入れられたのかも、作中で語られた理由では説明がつかないところがまた恐ろしいです。中高生のほうが力が強いし、知恵があるぶんいじめだってよりえげつないことをやります。言うなれば実権体であるちかが、人間社会に人間として送り込まれた本当の理由はなんなのか? 考えれば考えるほど、恐ろしいなにかが語られないところにあるように思えてきます。
rairaibou(風)さん
評価:☆☆☆☆☆☆
 これは良かったですねえ、最初の段落でぐっと引き寄せられ、どうなるんだどうなるんだと読むことができました。
 この設定とテーマでよく一万字にまとめたと思います。もう少しわかりやすい流れがあったら確実に星をもう一つつけたと思います。
レイコさん
評価:☆☆☆☆
 おお、こわ……純然たるホラーでした。ぎりぎりスプラッタじゃなくて命拾いした気分です。千可の「保護者」は何者だったんでしょうか。ポケモンは人間になれるのか、神や禁忌と言われると正体はマッドサイエンティストの香りもしますが、不明のまま物語は終わってしまいましたね。一般的な人間の学校に通わせえているのも、研究施設に閉じ込めていないだけマシというより、人間にへんしんした千可の行動記録を取るのが目的のように感じられて、始終不気味でした。ところで千可になりたいのになれないパーツ役のメタモンたちが、他の人間とすげ変わるためにその人間を食べてしまうと、あまりに綺麗さっぱり殺人の証拠が消えてしまい、警察(?)がメタモンだけの犯行と特定するのが難しい気がします。バックに狂ったトレーナーがついてるなどと、誤った方向へいってしまいそうなものです。そうはならなかった有能な捜査機関が、これほどの被害を出した集合体の千可を無罪放免で野放しにしておくのは、展開としてちょっと苦しいように感じました。千可のパーツに食われかけておきながら、後日平然と千可と接している「私」のメンタルの異常な強さが一番ホラーだったかもしれません。投稿、お疲れ様でした。
逆行さん
評価:☆☆☆☆☆
 うへえ、これはやばいなあ。 
 何がやばいって、ちかちゃん自身が何の罪悪感も抱いていないっていうのも怖いんですよ。でもそれ以上に、周りの人たちが特にちかに対して何の処置もしないっていうのが怖い。特にこれと言って改善する様子も見せず、食べたメタモン自体はみんな殺処分するが、まだちかちゃん自身は学校に置いておくってやばいやろ。結局大人たちも、ちかちゃん自身に問題があるのではなく、ちかちゃんを構成しているメタモン達に問題があると思っている。 
 深いですねえ、このお話も。あまりに深すぎてちょっとついていけないぐらいでした。 
 このお話は『ポケモンは人間に成れるのか』っていうテーマを超越して、更に先へ進もうとしているなあと感じました。 
 これ下手したらまた誰かが犠牲になったりする可能性も……。主人公と同じ学校の子も標的に……。怖いなあ。 
 もうちょっと安全な実験方法はないのかなあ。普通の学校でやるのはあまりにも危険だなあと思いました。 
 神経衰弱っていうお題の使い方がエグく、そして面白かったです。ちかちゃんは神経衰弱というのを、神経を衰弱させることだって理解していたんですかね。理解していても理解してなくても怖い。 
 人間を食べていたメタモン達も決して悪気があったわけではなく、みんなと仲良くなりたかっただけっていうのがまたやるせないですね。メタモンがやって良いことと悪いことの区別が付いていなかったゆえの悲劇。 
 ちかちゃんの保護者とかはそのあたりについての教育はちゃんとやってなかったんでしょうか。なんかこの話の大人たちは爪甘いですよね。個人的にはやっぱりまだちかちゃんは学校に送り込む段階ではなかったんだろうって思います。もっと実験を重ねてからじゃないと危険ですね。 
 とても深くて興味深いお話でした。このテーマで書き上げた作者さんの発想力と筆力には脱帽です。
浮線綾さん
評価:☆☆☆
 あわあわ 怖い……ちかちゃんの保護者の方はちゃんと事態を把握できているのでしょうか……報道には出ませんが犯人がどのポケモンかは当局はちゃんと掴んでいるのですよね多分 またちかちゃんの各器官を構成する個体の管理ぐらいはきちんとなさっているはずですよね多分 ひええ きちんと管理していただきたいものですね……
Pさん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
R-15G認定の名に恥じない描写とメタモンの集合体による人間の模倣という衝撃的な設定、神をも畏れぬと言われそうなその所行の顛末、そしてB部門投稿作としての「波音」「マスク」「神経衰弱」の三題すべての折り込み方。
どれをとっても読者に強烈なインパクトを残す作品に仕上がっていると思います。
しかしその真の恐ろしさは「どんなに近くから死人が出ようと、それが自分の身近で起こらなければ関係はない」と語る、読者も思わず頷きそうな主人公の言葉が、そのままちかの「同じ身体を構成するメタモンが人を殺したのであっても、自分が命じたのではないから自分は悪くない(関係はない)」と主張するちかにも適用できてしまう、というところだと思います。
メタモンの集合体であるちかのように人間もまた社会という形で集合体を作らないと生きていけない生き物ですが、その中で罪を犯した者が出たりすると弾かれたり自分とは関係ないと思ったりすることが非常によくあります。なのに目の前のメタモンの集合体が同じ事をしてどうしていけないのか?
その問いにもまた、作中で語られる通り解法も回答も存在はしないのでしょう。
1万字にとても収まるとは思えない深遠なテーマを字数・三題噺ともにばっちり満たして書ききる筆致、最高です。
小樽ミオさん
評価:☆☆☆☆
トビさん
評価:☆☆☆☆
Lienさん
評価:☆☆☆☆
花鳥風月さん
評価:☆☆☆☆☆☆
BoBさん
評価:☆☆☆☆☆☆
伊雑アゴバルさん
評価:☆☆☆☆☆
ゾイシアさん
評価:☆☆☆☆☆☆
きとらさん
評価:☆☆☆☆☆
黒糖さん
評価:☆☆☆☆☆☆
猫村さん
評価:☆☆
天波八次浪さん
評価:☆☆☆☆
クーウィさん
評価:☆☆☆
不壊さん
評価:☆☆☆☆☆
さねたかさん
評価:☆☆☆☆
じゅぺっとさん
評価:☆☆
えびフライさん
評価:☆☆☆☆☆
586さん
評価:☆☆☆☆
ばすさん
評価:☆☆☆☆
まーむるさん
評価:☆☆☆