大樹の声は何キロも虹を追わないミチへの感想

葉穂々さん
評価:☆☆☆☆☆
野生の生き物としてのポケットモンスターに着目した作品ですね。
野生描写はもちろん、人と暮らす道を選んだポケモンの描写、そして物語の後味の良さが実に素晴らしかったです。

好きポイント
・キロ
・ラストシーンで駆けていく、冬のジグザグマ。
・「あいつ。マッスグマって鳴くから、マッスグマ。俺を呼ぶときだけなんだぜ? あの鳴き声」
この発想は無かったです! なるほどなぁ……!
コメットさん
評価:☆☆☆☆☆☆
読み始めは一体何の話だろうと首を傾げながら読んでいたものですが、段階を踏んでこの世界の正体が露わになるにつれて、背筋がぞくっとしたのを覚えています。温かい童話枠かと思えばそんな事はなく。トレーナーとポケモンが仲良く暮らしていた――なんて映画やアニメの冒頭でも語られる世界の、裏側を描いた物語だったとは。でも決して悲観的で切ないだけの物語なんてわけではなく、ミチとキロのやり取りと関係性の変化の辺りに、優しさと温かさを詰め込んでいて。喜と悲が絶妙な塩梅で紡がれている物語を読み終えた後は、何とも言えない読了感に包まれました。酸いも甘いもあるオボンの実のような味わいの物語って感じですかね。
ラプエルさん
評価:☆☆☆☆☆
終盤の展開は幸福な王子様を思わせる展開でした、ほんのり童話調でやわらかな雰囲気で最後まですっきり読めてとても素敵でした。

作中にはほとんどポケモンの種族名が出てこなかったので、暫くニイちゃんやキロやミチが何のポケモンなのかを考えながら読んでいたのですが、なかなか面白かったです。ゴクリンを「羽の生えた食いしん坊の草色のおまんじゅう」と喩えたところなんかめっちゃ好きです、かわいい。
ところで人間…というかトレーナーでしょうか、「ケンゲンキ」という呼び方には何か意味があるのでしょうか。ちょっと気になりました。

キロはお調子者のように見えてかなりしっかりしたいいヤツでしたね、ミチにかまってほしくてちょっかいかけてたのかなあ。
ニイちゃんにミチの毛と一緒にオボンを届けてあげたり、自分の身が弱ることも厭わず冬の大樹にとどまったり。
「鳥は誰だってお調子者だぜぇ、頭が軽くない奴が飛べるわっきゃないしぃ」。このセリフ好きですねえ、ちっとも頭軽いわけじゃないのになあ…なんて。

ニイちゃんが去って行って毛を毟るのは犬とかにも見られるストレスサインでしょうか。寂しいんですよね、せっかく帰ってきたのにまたどこかへ行かれちゃって…
でもキロのおかげで立ち直れて、キロの飛んでいけるところにニイちゃんがいるんだと気づいてからはキロも驚くほどしっかりとした性格になりましたね。

大樹というニイちゃんとの思い出の場所を失えどなおさっぱりと立ち上がり、また新しい場所を探さなくちゃと明るくさっぱりとしたミチ。それはめそめそする自分との決別だったのかもしれませんね。
ミチとニイちゃん、そしてポケモンたちと大樹。いろいろな別れもありましたが、さっぱりと明るく読める上に余韻も素晴らしい作品でした。ありがとうございました!
照風めめさん
評価:☆☆☆☆☆
生命力をありありと感じる力作でした。
これ以上無いくらいに、ポケモン達から見たありのままの世界が広がっていました。
一見ミチ達のお話かと思えば、大樹が子孫を残すその一連の流れもあって、盛大な命の讃歌のような力強さを感じました。野生ポケモン達の逞しい生活が垣間見えて面白かったです。
キロには虹が見えてミチには見えなかったり、ニイちゃんがマッスグマと呼びかける人間をマッスグマと呼称していたり、相当意識して書かないと出来ないテクニックが盛りだくさんで、読み返すほど面白かったです。
ケンゲンキと呼称されてるのも興味深かったです。ボールに捕まえられると心を取られてしまうという表現もすごい、と思いました。
最初はそこまで仲が良いとは言えなかったキロとミチも、徐々に仲良くなっていく様子も愛おしいです。
特に、冬になって動けなくなったキロがミチにしがみついて、地面もいろいろあるんだなぁ、と溢すシーンが好きでした。てっきりキロが死んでしまうんじゃないかとめちゃくちゃ心配しましたが、そうじゃないみたいでめーっちゃ安心しました!
普段読めないような魅力的な作品だ、と思いました。
花鳥風月さん
評価:☆☆☆☆
森を舞台にしたポケモン同士の触れ合いが非常に微笑ましかったです。まるでひと昔の文章がたくさんある絵本を読んでいるような、そんな感覚になりました。言葉と言葉の組み合わせが透明感を強調していて自然の美しさが引き立つような作品という印象です!
乃響じゅん。さん
評価:☆☆☆☆☆
最初に抱いた思いが「死ぬ死ぬ詐欺かっ!」ですみません(
でも、ミチもキロもニイちゃんも死ななくて良かったと思います。キロがちょっと幸福の王子のツバメっぽい感じがしましたね。
ポケモンの野生の暮らしと、物凄く狭い世界観が良かったです。
自分を呼ぶ時だけマッスグマと鳴く、というネタは面白かったのですが、現実において猫などは人間に様々な場所で違う名前で呼ばれても自分を呼んでることは理解しているそうなので、ちょっとニイちゃんがアホ過ぎないかと、何となく引っかかりを覚えてしまいました。それも含めた上での笑いどころなのかもしれませんので、野暮な意見かも分かりませんが……。
キロとミチが仲良くなっていく様子が、本当にじっくりと描かれていたと感じます。この歩みの遅さがこの作品の魅力だなぁ、と思いました。ちょっとずつ、乗り越えていく二匹が愛おしいですね。
終夜さん
評価:☆☆☆☆☆☆
冒頭の目次に最初びびりつつも、気がつけばすらすらと最後まで読み進めていけました。
キロの「くしゃたぬきくん」って呼び方や、おまんじゅうの親玉など、この作品に出てくる言葉のなんと可愛らしいことか……作者さんのセンスが羨ましいです。
ケンゲンキの語源、というか由来があれば知りたいな~と思いました。
Ryoさん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
人間ではない生き物を見ている時、彼らがどんな風に世界を捉えているのか、小さい頃から不思議でした。
道路を横切り、私に背を向けて逃げ去る後ろ姿を注視しても、手の上に乗せてみても、本や写真を見て学んでも、知識は増えるけど、やっぱりわからない。
でも、この小説を呼んだ時、私はごく自然と四本脚の生き物になって、自分の背中より高い草の中に鼻先から飛び込むような気持ちでこの小説の世界に飛び込むことができました。それはポケモンの小説を読んでいて初めて感じた気持ちでした。
地面から立ち上る、あるいは風の運んでくる匂いの方が、空よりもずっと親しい世界。足裏と毛の流れと舌先で触れることのできる世界。この小説を読んでいる間、私は居丈高な二本足と、三色型色覚で彩られた視界を持った「ケンゲンキ」ではありませんでした。ずっと森の中で穏やかな息をしているような気持ちでした。人の小説を読んで、この小説の世界に住んだらどうだろう、と想像することはありますが、「ミチ」については想像ではなく、ただかつて自分は遥か以前、確かにこうした世界に住んでいたのだ、と言いたくなるほどの懐かしさと安らぎを覚えました。
私にとってこの作品は小説ではなく、自分の頭の中以外に見つけた新しい住処でした。ありがとうございました。
rairaibou(風)さん
評価:☆☆☆☆☆☆
・トレーナーをマッスグマと呼んでいるところが、ポケモンから見た人間を人間である読者にわかりやすく皮肉っていてとても良かったです。作者さんのセンスを感じました。
・その他にも、ポケモンから見た自然を、人間である自分たちにリアリティかつわかりやすく描写していてとても楽しめました。
森羅さん
評価:☆☆☆☆☆☆
ミチもキロもニイちゃんもものすごくかわいかったです……。幸福の王子を思わせる童話のようなんですけど、なんか童話っぽくないんですよね。めっちゃ面白かったです。好きなところは多々あるんですが、まず「マッスグマ」を「あいつマッスグマって呼ぶんだぜ」って発想は本当にすげえと思います。よくよく考えれば確かにニンゲンの付けた「マッスグマ」なんて種族名彼らには全く関係のない話なのですから「そりゃそうだわ」ってなるんですけど、それに気づける作者様すげえ……。ケンゲンキも最初「そんなポケモンいたっけな」ってめっちゃ考えてしまいましたw ポケモンたちにはポケモンたちの流儀や言葉や意味がある。その発想はまさに(ツイッターでもよく言われていた)「作者は動物」に頷いてしまえるものでした。陽気で軽薄そう(すみません)なキロの話し方もめちゃくちゃツボでした……! 「くしゃたぬきくん」ってミチをからかうキロ、本当に好きです!! が、すみません。僕が読み取れなかっただけなので非常に申し訳ないのですが、ミチとキロが木の水を吸い上げる音を聞くシーンでキロがなぜ「欠片を注いで立派な~」のあたりの台詞を言ったのかわかりませんでした。またキロが「お節介焼きが過ぎた」ことをしてまで木の実を運んだのかもちょっとわかりませんでした。すみません。
円山翔さん
評価:☆☆☆☆☆☆
ポケモンの種族名を敢えて書かない作風がいいなって思いました。そうぞうりょくが掻き立てられます。緑のおまんじゅうはゴクリン、おまんじゅうの親玉はマルノームでしょうか。大毒蛇はアーボか、それともアーボックか。
スバメのキロがやってきたことは、幸福の王子のつばめがやっていたことだったのですね。この年でオボンの木が終わってしまうと分かっていたから、その味をたくさんのポケモンたちに伝えようとしていた。そのたった一年ほどの間に、キロがからかっていたジグザグマのミチは、いつの間にか頼もしくなっていた……こういうお話が、小学校の児童書の中にあったらいいなって思ってしまいます。
うにゃさん
評価:☆☆☆☆☆
トレーナーのポケモンにも家族がいることを再度思い知らされたせつなかわいい作品でした!
カイさん
評価:☆☆☆☆☆
キロが好きです。憎まれ口をたたくキロですが、本当は誰よりも優しかったんですね。泣ける…。「幸せな王子様」の寓話を思い出して、キロの結末にハラハラしましたが、無事に冬を越せる温かな「巣」を見つけることができ、良かったです。ミチとキロが共に過ごした冬のシーンが本当に温かくて、じーんとしました。ニイちゃんの喪失のストレスでミチが毛をむしった背中が「キロの体温で、ぴったりと塞がれた。」ところがとても好きです。

気になったことが一点だけ。ミチが何のポケモンなのか後半になるまで明言されていなかったので、ちょっと情景を思い浮かべるのがしんどかったです。
水のミドリさん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
やさしくて、残酷で、やさしくて、残酷で、それでもやっぱりやさしい物語でした。川の氾濫やトレーナーに捕まったニイちゃん、食う食われるを繰り広げるポケモンたちまでもが、優しい描写であっさりと展開されていきます。何よりキロが優しい。ポケモンだって人間だってあんなにも利己的なのに、なんでこの子だけこんなに損しちゃってるの……。最終章、冬毛でふっくら膨らんだジグザグマが、綿雪を散らしながらジグザグときのみを探す映像、ほんとうにやさしさと残酷さがないまぜになってるなあって。同じように新しい巣穴を探すラストシーン、とても明るい読後感なのに、「あのあと2匹は雪に足を取られて動けなくなり凍え死にました」って言われてもすんなり納得できちゃう。そういう不条理さや刹那的なポケモンの世界が、冒頭から読んでいてありありと立ち現れました。ふつう住みかの大樹が倒れたら、ニイちゃんが残した毛とか、オボンの種とか、こういうお話書いてると作者は持って行かせなるじゃないですか。でもしない。ポケモンをポケモンとして繊細に描き、かつ読み手の心をすくうような物語に圧倒されました。
不条理で哲学的な雰囲気とか、『ぼのぼの』感がすごかったです。超ハードモード版ぼのぼの。あの作品は名言が多いですが、本作も鮮やかで心に残る表現が素敵でした。ニイちゃんが森から出ていくシーン、『冬の水に浸かったように、尻尾の先が、足先が、爪先が冷えて、見えない冷気の水位が上がっていく。』とか、ニイちゃんを引き止められず体がぐっと重くなる描写が見事。雪をかき分けて進むふたりの掛け合いも心地いいです。
タイトルがしっくりこなかったのがもったいなかったですかね。この作品ならシンプルなもののが合っていたはず。
あすぺふさん
評価:☆☆☆☆☆☆
のどかに過ごす人間にポケモンと呼ばれるイキモノたち。
人間をほとんど知らないそのイキモノたちの様子が、巧みに描かれていると感じました。
あまもさん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
とても好きでした。生きるってこういうことなんだな、日常を生きながら成長するって、こういうことなんだなと思わされました。なんだか、キロやミチと同じように、ケンゲンキも同じ生きものとして扱ってもらえているようで、生きていることを肯定してくれているようで、嬉しかったです。ふとしたときに気付く、成長にじんわり心が温かくなりました。ありがとうございました。
砂糖水さん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
す、好きです…!日本語になりません。
Pさん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
お題となったイラストに悠大な自然が描かれていたためか自然の移り変わりや生命の無情を扱った作品は多かったのですが、その中でも特に「野生のポケモンの生活」という点では右に出るもののない作品だと感じました。
自然の姿、自分の身体感覚、人間への認識、季節の移り変わりなどあらゆる部分を「野生ポケモンの視点から描く」という点について徹底していて、そのための表現のひとつひとつに大変苦労されたことと思います。
野生ポケモンから見たモンスターボールの存在、『ケンゲンキ』と呼ばれる人間達のこともさることながら、色のことを「キロには分かる気配」と表現する色覚についての描写が白眉と思いました。途中で主人公は虹のことを「キロにしか感じ取れない気配なのかも」と言いますが、主人公に虹が見えないということはグラエナを撃退した後に「虹だよ」と言われているニイちゃんにも虹は見えていない。
最初は何もかもをニイちゃんとその名残に頼って得ていた、野生のポケモンとしてはあまりに頼りない姿だった主人公が季節を二つ跨ぐ間に見違えるようにたくましくなる姿は、野生世界の厳しさをたっぷりと描いた後だからこそとても眩しく映りました。
キロを乗せて雪の中を走るシーンで描かれる、どこまでも走り続けられるような熱の感触は、もう進化して大人になるのも間近だと主人公に教えているようです。
ばすさん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
ああ、好きですっ!
まずは素敵な物語を書いてくださり、ありがとうございます。
と、お礼を伝えたいです。
読み終えた瞬間、ぶわああっと鳥肌がたちました。
ミチとキロが好きです。あああ…もう。
感想として伝えたい気持ちはたくさんあるのに、申し訳ありません。
私はその術を持っていません。抱く気持ちを、言語化できないのです。本当に申し訳ありません。
ああもう、本当に好きです!!(精一杯の言語化)
雪椿さん
評価:☆☆☆☆☆
 少々謎が残る話でした。なぜ人間は「ケンゲンキ」と呼ばれているのでしょうか。「人間」という言葉のどこにも「ケンゲンキ」要素が見当たらないのですが……。
 色々な意味で作者さんの解説が待ち遠しい作品だと思いました。
北埜とらさん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
 単刀直入に申し上げますが、大好きです。今大会ぶっちぎり一番の推し作品です。
 正直、私の読解力の問題もあるでしょうが、よく分からない部分も多少ありました。それでも好き。初読の時、読み終えて、「これ大好きだなあ……」と呆然とした後、この作品のどこが好きなのかなあと考えた時に、「どこが好きなのか分かんないな」と思って、そのとき、ぶわあーっと涙が出てきたんですよ。どこが好きなのか分かんないけど大好きってめっちゃ凄くないですか? おいしい食べ物があったとして、じゃあこの食べ物がなんでおいしいのかと聞かれても「おいしいから」としか答えられないように、私この作品が突き刺さりました。森の中に生きるいきものの生活、巡る自然のそのものを、丁寧に生き生きと、けれども生々しいというほどの息苦しさを伴わない距離感で、凛と描きあげられた短編小説。あ~っ、ずっと、こんなポケモン小説を読みたかったんだ……!! いやあ……、凄かったです……!!

 まず文章ですね。自然感がすごい、生きてる感がすごい。草と土と獣の匂い、空気感、温度感が伝わってきました。森の中の気持ちよく誘ってくれるような、五感で味わえるような文章と言いますか。全体として擬音の表現・使い方が際立ってるんだよなあ、キャラクタや物語のやわらかさによく合っていると思いました。
 そして何より、ポケモン目線での表現ですよね。ニイちゃんが帰ってきた喜びを表現する方法が、「柔らかな土に思いっきり背中を擦り付けてはしゃぐ」だったりとか、ストレスで毛を毟っちゃうとか。その毟った毛を見たキロの感想が「巣材に貰っていこうかな」だったりとか。特にうわあすげぇと思ったのは、人間のことをキロが「ケンゲンキ」と呼ぶ発想です(『ポケモン』という呼び名をポケモンたちがまったく使わないところが効いていますよね、人間もキロにとっては『イキモノ』のなかの一種族に過ぎないという)。ほんでそれ以上に衝撃を受けたのが、ニイちゃんがトレーナーのことを「マッスグマ」と呼ぶところです。

>「あいつ。マッスグマって鳴くから、マッスグマ。俺を呼ぶときだけなんだぜ? あの鳴き声」

 いやこれ……この発想……凄いですよね。めっちゃ納得してしまうんですよ、ポケモンが人間の言葉を理解しないならあり得るかもしれんなあと。本当に凄い……本気でポケモンの目線にならないと出てこないじゃないですかこんな発想。もはや作者は動物なのでは? と疑ってしまいたくレベルですよ……いやはや脱帽致しました。すげえわこれは……!!
 更に、これは若干余談になるかもですが、鳥ポケモンであるキロと、哺乳類系のポケモンであるミチの、「可視領域の違い」が描かれているのが大変興味深かったです。 4.虹 の冒頭で、キロには判別できる「黄色」「極紫」という色が、ミチには判別できていないことが示されているんですよね。キロが「極紫」と呼んでいるのは、おそらく紫外線のこと。鳥類は哺乳類と違って紫外線を視覚的に認識できる。また、ミチは「白」「黒」という表現は使うけど、赤青黄緑という色名の表現は使わない(青い匂い、という表現はあるけど)。キロは使う。この表現の違いは、同じ自然の中で育っても、ミチの見ている景色とキロが見ている景色が違う色をしていることを、表しているんじゃないかなあと。紫外線を見ることができる鳥は、人間よりも色鮮やかな世界を見ていると言われますね。思わぬ着眼点でした……。きっとミチにとっては、「大樹の声を代弁(?)」するし見えない色が見えるしで、キロのことをちょっと不思議で特別な存在のように思えたりするだろうな。それとも彼らにとっては、種族が違えば世界が違うのは当たり前のことなのかな。(ミチやニイちゃんには「虹が見えない」、キロには「虹が見える」ことも、この可視領域の差に由来しているんかなあとも思いましたが、紫外線の見えないトレーナーにも虹が見えているんですよね。やはり「ミチとニイちゃんは目線が低いから見えない」説が有力でしょうか)
 また、自然描写が凄く良かったんですが、その自然の「自然らしさ」が、個人的にはものすごく性癖ポイントでした。結実量の年変動(それを『大樹の意思』というもっともらしいところで説明しているのも創作物として良い塩梅です)や、種子の動物被食散布を取り扱っておられるところに超グッときます。「果実が何のためにあるのか」「木が何故果実を作るのか」という点を、リアリティを損なわず雰囲気を壊さず、しかも物語の中心に持ってこられているところが、本当に大好き。私が「自然を丁寧に描きあげられている」と感じたのは、何よりもこの点があったからでした。昔樹木をちょびっとだけ学んだ私の、「きのみをテーマにするならこうやろ!」という欲望を完璧に満たしてくれたのは、今大会ではこの作品だけだったのです……!!笑

 感想が長くてすいません、ほんでキャラクタのかわいさですよね。キロもミチもすっごいかわいくて、台詞読んでるだけで心がぽかぽかしますよね……子供っぽいというよりは、いかにも動物っぽいという感じです、健気で無邪気でまっすぐで、でも幼い無知さではないというか。
 このふたりの関係性が、もう、ほんま、尊いんですよ……。ニイちゃんがいなくなってからひとりぼっちだったミチは、キロがいたから生きていけたんじゃないかと。お腹が治る葉っぱを持ってきてくれたり、大水を逃れるよう誘導してくれたり。キロがニイちゃんの毛を持って帰ってきてくれたから、ミチはニイちゃんが傍にいない、でもどこかで元気にしてる、ということを受け止めることもできた。チュッチュチュッチュとからかうキロのひょうひょうとした優しさが、ずーっとミチを支えていたんですよね。そしてキロも、ミチがいなければ冬を超えることはできなかった。
 こういうことがあって、最終的には、

> かつて毟り取って少し毛が薄くなったところ、その寒さが。
> キロの体温で、ぴったりと塞がれた。

 ここ、ニイちゃんが帰ってきたときの心理描写の、

>姿は変わっているけれど、その仕草は間違いようもなく、胸の奥の柔らかく湿った裂け目にぴったりと填まった。

 ここを思い出して、めっちゃグッときたんです。ニイちゃんが去って再び空いてしまったこの胸の奥の裂け目、つまり『ニイちゃんの喪失』による傷口を、キロの存在が、薄毛の部分と同じように、ぴったり塞いだんだろうなあと思って。
 このあとの二人で雪の中を走ってるシーンが、もう、もう……めっちゃめっちゃ好きで……

> 雪を掻き散らしてジグザグマが走る。
> その背中の毛の隙間からスバメの頭がちょこんと覗いている。
> きゃははっ、とミチは笑う。
> 胸がすくような楽しさが、体中を満たしている。

 ここ、もう!!(語彙力はしんだ)
 ここの少し前の雪からぽっと顔を出すシーンからなんですけど、ここでやっと「ジグザグマ」という言葉が出てくるんですよね、一瞬だけカメラが神様視点に切り替わっている。ここがめっちゃいいんですよ。何が良いのかと言われると明言できないのですが、この雪の中を走っているミチの姿が一瞬神様視点のカメラで描写されていたのが、パッと「映像」として浮かんできて、めっちゃ心に残りました。
 いやそれにしても、このお話がハッピーエンドだったところが、本当に堪らないです。リアル寄りの自然を丁寧に描いてきたからこそ、キロは勤めを果たして、自然の中に朽ちていくしかないと思ったのに。でも、ハッピーエンド……!! ありがとう!! ガッツポーズ!!
 ニイちゃんとの思い出の木が枯れて倒れて、それを見たミチの、

>「もう、いい?」
>「お前こそもういいのか?」
>「うん、新しい穴を探さなきゃ」

 この応答。ニイちゃんがいなくなったことをちゃんと受け止めて、強くなったんだなあって成長が見えた。キロがあの裂け目を埋めたから、思い出に縋ってさみしいさみしいと思わなくても、前を向くことができたんだなあって。きっと、ニイちゃんの次はキロに依存した、とかじゃなくて、キロのおかげで、あの裂け目は、傷口は、きっと治っていったんですよね。そうですよね。そうに違いない。いや~~~~~この、ハッピーエンド……凄くないですか!? この余韻!! 完璧ですよ!! 凄い!! ほんと語彙力皆無ですいませんこのエンディングは私の中であまりにも完璧でそして性癖でした……!!

 最後に、分からなかったところの自己解釈についても少し触れさせてください。
 『大樹の声は何キロも虹を追わないミチへ』というタイトル。色々考えてみたのですが、最後の一節に関係してはいそうですよね。大樹は声を持たない、けれど大樹の「声」である「欠片たち=きのみ」は、ミチのおなかの中にも入って、命は受け継がれていく。ミチだけでなくたくさんの生き物が、大樹の声を聴いたんじゃないかな。
 或いは、大樹がミチ個人に何かをしたのだとすれば、「ニイちゃんを喪失したミチに、キロという友人を与えること(=裂け目を治してやること)」だったとか。「大樹の声=キロ」みたいな。自分はもう枯れて死んでしまうけど、思い出の場所がなくなっても、強く生きろよ的な……。いやこれに関してはかなり的外れなような気も……ううん気になります。
 そして、虹。キロがくちばしを突っ込みたがっていた、ミチには見えない、『何キロも追わない』、この作品における「虹」は、一体何を表していたのだろうか。ミチが虹を追わない→虹はニイちゃんの暗喩、という説になるほどと思いました。その上で、なんとなく、なんとなくですが、なにかこう……ニイちゃんのことを含めた、言語化できない何かなのではないかな……という気もするんです。言葉にできないもの、または言葉にしないほうが綺麗なもの、ありますよね。だから私も、「考えるな、感じろ」の精神で、この美しさを胸の中にとどめてみたいと思います。それはそれとして、作者さんの中に答えがあるなら是非お伺いしたいところですが……!!笑

 全般として自己満足の押し付けのような感想になってしまい申し訳ない、企画終了後の作者様の語りを大変楽しみにしてます。いや、本当に、良かったです。私の世界線ではこの作品は既にアニメーション映画化され、アカデミー賞を受賞しました。映画化されなくとも、ポケモン二次小説の中でも指折りで大好きな作品になりました。ポケモンの生きる自然を描いた作品としては、私の中で、文句なしのナンバーワンです。この作品に出会えて、幸せです!! ブラボー!!
 投稿お疲れ様でした!(&乱文をこんなに読ませてしまって、本当にすいません~!!)
春さん
評価:☆☆☆☆☆☆
 優しい手触りの文章を書かれる方ですね。読みやすく、すいと入ってくるのに、胸を締め付けるような表現も書かれているのが凄い。
 登場キャラのうち、キロが特に好きです。「くしゃたぬきくん」との呼び方がツボです。しかもちょこちょこ呼び方が変わっているのも可愛い。「頭が軽くない奴が飛べるわけないっしょ」とか、いちいち台詞回しが面白い。ストーリー全体を通して、彼は非常に大事な立ち位置に立っていますね。最後の方で危うくなった場面と良い、「幸福な王子」という童話のツバメを思い出しました。ミチはちょっと気弱な印象?でも、話を通して精神的に成長した気がします。ニイちゃんはどんどん先に行ってしまいます。最初は置いてっちゃったのかとも思ったのですが、実は違った。トレーナーに捕まってしまったのですね……。ポケモンの立場から読んでいると、トレーナーを恨んでしまいそうです。メインの3匹のキャラが立っており、性格もはっきりと違うのが良いです。
 ところでケンゲンキっていうのが調べても出なかったのですが、よくよく読んでみると、これはおそらく、トレーナーの事を表しているのですね。魅入られた、囚われた、というのは、モンスターボールに捕まってしまった事を意味している。だから、ニイちゃんはミチの傍にはいられなくなってしまった。でも、どうしてケンゲンキって言うんだろ?
 キロ、死んじゃうのかと思ってハラハラしました。生きていてくれてよかった。ミチの傍にいてくれて、本当に良かった。ミチの正体は、ジグザグマ。木の最期を2匹で見届けて、そしてさようなら。あの小さかった、ニイちゃんを待つだけのミチはもういないんだなぁと、思いました。木とサヨナラした瞬間に悟りました。ニイちゃんは、もう帰ってこない、いつまでも傍にいられない。ミチは自分の足で新しい巣穴を見つけなくてはいけない。でも、ミチの傍にはキロがいるので、少しだけ安心もしています。
 透明感のある、不思議な雰囲気のあるお話でした。ありがとうございました!
ポリゴ糖さん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
 ミチの成長や心の向きの変化、直接的な心情描写は多くないですが、それでもミチの取った行動や言い草から読者に想像させる文章力には脱帽であります。最初の場面で痛んだきのみを意固地になって食べてしまうとか、これは無知さゆえか投げやりだったゆえか分かりませんが、ニイちゃんに依存してしまっていた様子が見えますし、その後の毛を毟るところの悲壮感は読者側としてもしんみりするところでありました。小馬鹿にするような言動で、勝手に毛を毟っていくようなこともするけれど憎めない、そんなキロという存在があって、喋ったり、きのみを取ったり、という場面では、知らず知らずのうちにミチはキロに助けられていて、反対にその後で雪の中でキロが倒れてしまったところではミチがキロを助ける、という関係性がとても尊いものを感じました。そしてラスト、大樹が倒れ、ニイちゃんと作った巣穴から旅立つところ、一連の出来事を経て逞しくなったんだなあと思えて非常に良かったです。……お話のあらすじみたいになっちゃいましたがようは全部良かったです。個人的にはやはり、ミチの毟った毛の跡に収まったキロと、雪原を走り回るシーン、心にじんと来ました。
 ニイちゃんの、マッスグマのことを「マッスグマ」と呼ぶから、ニイちゃんにとっての人間はマッスグマだというところ、本当にポケモンの視点に立って物語を書かれている感覚を受けます。最初「マッスグマが呼んでる」というセリフでん?と思わせてからの納得は非常に上手かった。そして同じ人間でも、キロにとっては「ケンゲンキ」。ケンゲンキの由来は分からないままですが、こういうキャラクターごとに同じものを見ても認識するところが異なるということを非常に上手に用いられている印象です。虹が見えたりきのみの色が見えたりというのは動物ごとの色覚ゆえと考えられますし、まめだぬきであるところのミチの色覚が現実の動物の色覚と同じ保障はないですが、でもその解釈が一番納得できるよなあと。そしてその違いを作中で表現してみせる力量は、正直私が高いだとかどうとか言える次元にすらないのでは……。
 ところどころ、ミチからキロへ、ニイちゃんのトレーナーへ、また三人称へ視点移動があったりしますが、無理がないどころか、実に効果的だと思っています。上述の視点のところもそうですが、どういった角度からキャラクターを見るのか、というところにとてもこだわりを感じます。特に三人称視点のところ、遠くにカメラを置いてミチたちの様子を観察しているような、そんな印象を受けます。とても上手い。
 野生に生きるポケモンたちの視点を描くにおいて、非常に気づきが多く、ミチやキロやニイちゃんになりきっているほどにその視点を上手く活かされている印象です。とてもあたたかな気持ちになれる一作でした。
はやめさん
評価:☆☆☆☆☆☆
 チロチロと流れる清水の音が聴こえて来そうな作品でした。
 ニイちゃんがいなくなったことに対する不安を、腐った木の実を食べたという行為と腹を下すタイミングに重ねて、上手く表現されているなと思いました。たまに出てくる「虫」は、これはポケモンではない生き物を示しているのでしょうか。またニイちゃんが「スバメだ」と言っていたように、ポケモン同士はお互いの名称を知っているのかと、細かい疑問ながら気になる部分でした。その境界の曖昧さというものが、かえってこの世界観をより「自然」なものに仕立てているように思えました。何から何までポケモンが自然界の第一に置かれた世界観ではないというか。枯れ落ちた大樹も、虫も、ケンゲンキも、ポケモンも、そこに息づく生き物なのだなと。人間が順列のナンバーワンに位置しない話は個人的に好みです。途中、ゴクリンやザングース・ハブネークなどが登場する場面の描写がずっと印象に残っていて、ああ、これがポケモンの野生世界だと納得してしまいました。
 動物目線というか、作者さんは生き物全般に対して良く観察眼や感覚をお持ちなのだと推察します。決して動物だけではなく、ありとあらゆるものに対する命の吹き込み方というのが、作品を通してしっかりと伝わってきます。そうした敬意が感じられるからこそ、自然の描写が腑に落ちるというか、自分には絶対書けないというか、悔しさにも似た感動として込み上げてくるのでしょう。ほぼすべての場面が好きなので、列挙に困ります。
 「あのグラエナがあのケンゲンキを殺ったら、“ニイちゃん”はどうするだろう? あの寂しがりやのたぬきのところに戻るだろうか? これまで戻ってきたイキモノたちのように、心をあちら側に残したまま、元の生活に戻っていくだろうか?」
 ミチに入れ込むキロならある意味当たり前の発想といえますが、ここがトレーナー小説或いは人間主体の話であれば、まずこうした選択肢自体が浮かばないものです。文字通り野生ポケモンの目線で考えられていて、驚かされると同時に唸りました。
 他の長編と違って独特な空行が設けられており、読んでいる中で文字数を意識させないつくりになっていたと思います。全体的に言語化が難しい作品で、正直再読を繰り返しても分からない部分は分からないままで終わる気がします。ですが、分からない部分を懇切丁寧に解説しなくても感じ取らせるほどの細かく書き込みすぎていない文章技術と、どこか間を思わせるような改行の仕方などは、情報量を多くするよりも断然良かったと思いました。全体的に名作と称して差し支えない作品だったかと思います。
 結局タイトルの『大樹の声は何キロも虹を追わないミチへ』に込められた正確な意図を把握できておらず、
>森の外れに黒く裂けた倒木がある。
>春になれば苔に覆われるその木は声を持たなかった。
>けれど、この地方に棲むたくさんのイキモノは、この木が最期に伝えた味を知っている。
 という文章から類推するぐらいしか出来ませんでした。大樹の声は、の部分などは分かるような気がしますが、何キロも虹を追わないミチへ、が図りかねています。別に確固たる意味を求めたいわけではないのですが、キロやミチといった物語の登場ポケモンが入っていて、ニイちゃんはいない点など、色々気になることもあるので、作者解説などでぜひ書いてほしいです。
レイコさん
評価:☆☆☆☆
 キロはちょっぴり口は悪いけれど面倒見のいい奴というか、からかって遊んでいるように見えてミチのそばにいてくれる、飄々としてつかめないキャラクターで好きでした。頼りないミチをひとりぼっちにして、新しい世界に旅立ってしまったニイちゃん。唐突な失踪は現場の状況から見ておそらく不可抗力ですけれど、再会した後の態度がさばさばしていて、別れ際も実にあっさりで、ニイちゃんは心の弱い者の視点に立つという想像力が未熟なのか、また置いて行かれるミチの気持ちが完全スルーされているのが気の毒でした。ケンゲンキの由来が気になります。語感だけならダイケンキみたいです。木のよう、という説明があるのでケンゲンの部分を考察すると楽しそうですね。単純にニンゲンの音からきているのかもしれませんが。漢字にしたら面白そうです、ケンゲンキ。三人称なのでキロやミチの視点が行き来するのは特に読みづらさを感じませんでしたが、ポケモンたちの物語というイメージで読み進めていたので、ケンゲンキやマッスグマなどと種族名をぼかされていた存在が突然、トレーナーの少年という呼称を与えられて視点が割り込んだのは、私としてはここで一旦物語への没入感にブレーキがかかってしまった気分で少し残念でした。季節が冬を迎えて、寒さでキロが死んでしまうオチだったらどうしようと不安でしたが、ミチの温かい毛皮のおかげでその心配もなさそうで安心しました。口うるさいけど憎めない相棒と一緒に、新しくて前よりもさらに居心地のいい巣穴が見つかるといいですね。投稿、お疲れ様でした。
48095/坑さん
評価:☆☆☆☆☆☆
 わたくし、ポケモンの中でジグザグマ、マッスグマがトップで好きなのです。ミチがジグザグマだと気づいたとき、もうめちゃくちゃテンションがあがりました。そう、そうなんですよねっ、ジグザグマのあの背中の毛は硬いんですよね! そういう、ジグザグマジグザグマしているところが、ほんとにすてき。すきです。私も背中を下にして土の上でぐりんぐりんはしゃぎ出す勢いで歓喜しております。
 くしゃたぬきくん、って呼ばれてるのもくしゃっとしててかわいい……
 毛を毟ってはげたぬきくんになっちゃったシーンはとてもとても悲しくて、ストレスで自分の身体を傷つけるというのが、すごく「いきもの」らしくて生々しい。あと、色彩にちょっと弱そう。動物によって見える色の数は違うそうですね。
 この作品のミチが、体温があって呼吸をしているようにみえるのは、きっとこんなふうにいろんな面から「いきものらしさ」がじっくり描かれているからなんだなあと思いました。
 キロが、ミチの背中の毛にうもれて、そこから頭を出してるのが、またすんごくかわいい絵面で、イイ……
 今企画の中で特別忘れられない一作です。
早蕨さん
評価:☆☆☆☆☆☆
 この雰囲気は嵌る人には嵌りますね……。キロはミチがどれだけニイちゃんを待っていたか知っている。知っているからこそ、ミチにちょっかいかけずにはいられなかった。ただキロはニイちゃんに対して何も言うことはなくて、ただ助けるだけ。ニイちゃんがミチの元へ戻らない事は知っていたから、ニイちゃんの毛を抜いてミチに渡した。このキロの粋な計らいというか、気を回す行動がぐっときますね……。仲良くなるべくしてなったミチとキロの関係性はとても微笑ましくて、心温まるものでした。
逆行さん
評価:☆☆☆☆☆☆
 いやあなんて言ったら良いんでしょうかねえ。とりあえず、感動しました。ただ、なんで感動したのかは正直よく分からない。なんか「怖い」っていう印象も自分は抱きました。ゾクゾグってするような感じが読んでいてありました。 
 ポケモンたち……というより動物たちって言ったほうが良いですかね。動物たちの視点がありありと表現されていたと思います。動物がもし知能を持っていたらこうなるのかなっていう感じの出し方が圧倒的に上手いなあと感じました。シートン動物記とかでもここまで細かく心情書かれてなかった気がする。ポケモン視点のお話は自分もよく書くのですが、基本心情を人間側に寄せて書くことが多く、ちゃんと動物っぽくできるのは凄いなあって思いました。 
 ニイちゃんが人間のことを「マッスグマ」って呼ぶのが面白かったです。その理由を気がついたときああなるほどなあって思いました。確かにうん、動物の視点から見るとそう呼ぶのかもしれません。 
 描写も凄く細かくて、なんだろう、上手く言葉では言えないけれども、心に染み渡る文章だったと思います。この小説はなんか理由はわからないけど、感動できたりするんですよねえ。そこをどうみるかっていう所なのかなあって思います。 
 グラエナとのバトルシーンがなんか怖かったなあ。野生とのポケモンバトルが人間にとって命がけっていうのは分かるんですが、それよりも、トレーナーである少年が危うく死ぬ所だったのに対して恐怖心を抱いていないのが恐ろしい。なんかこう、死のやりとりをするのは別に普通やんっていう感じなんですかね。 
 正直最初読んだときは読みにくい文章だなあって思って読んでたんですが、しかしむしろ、この改行を連発した舌足らずとも言うべき文章がポケモンの視点を表現するにあたって最適なのかもしれません。恐らく意図的にこうしているのかなあって思います。 
 他の人がどういう感想を抱くのか全然読めないですねこれは。自分はこんな感じの感想を抱きましたが、もしかしたら他の人は全く別の解釈をしているかもしれません。人によって解釈が様々なお話なのだと自分は予想しています。 
フィッターRさん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
 『野生のポケモン視点の物語』であることに対するこだわりに満ちた表現がすごいです。こんなのどうやったら思いつくんだろうというレベル。
 "マッスグマって鳴くから、マッスグマ"と言って人間のことをマッスグマと呼ぶマッスグマのニイちゃんとか、人間を"木のように縦に長いイキモノ"、人間にポケモンがゲットされることを"取られてしまった"、人間がモンスターボールを手に取る様子を"真ん丸の硬い木の実を枝に生やす"と表現するキロだとか。
 極めつけが"黄色とか極紫とか、そんな気配がキロには感じられるらしい"、"雨上がりのうっすらとした白い霞や揺らめきをキロは虹と呼んでいるらしい"というミチの心情を描いた地の文。最初に読んだ時には意味が分からなかったのですが、他の方の指摘で『紫外線まで見える鳥と、色覚はそこまで強くない哺乳類の色覚の違いを表現している』と知ったときは仰天しました。そんなことまでお話に盛り込んでくるなんて、本当にすごいこだわりです。感服しました。
 キロとミチのキャラもいいですよね。憎まれ口をたたきあうような仲だったのに、同じ大樹の下で暮らしているうちに、様々な縁に支えられて友情を育んでいくふたりの様子は楽しく読めました。
伊雑アゴバルさん
評価:☆☆☆☆☆☆
リングさん
評価:☆☆☆
わやさん
評価:☆☆☆☆☆
灰戸さん
評価:☆☆☆
シガラキさん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
さねたかさん
評価:☆☆☆☆☆
ionさん
評価:☆☆
ゾイシアさん
評価:☆☆☆☆☆☆
一葉さん
評価:☆☆☆☆
不壊さん
評価:☆☆☆☆☆☆
猫村さん
評価:☆☆☆☆
BoBさん
評価:☆☆☆☆☆☆☆
秋桜さん
評価:☆☆☆☆☆
浮線綾さん
評価:☆☆☆☆☆☆
Lienさん
評価:☆☆☆☆
クーウィさん
評価:☆☆☆☆☆☆
586さん
評価:☆☆☆☆☆
まーむるさん
評価:☆☆☆☆
トビさん
評価:☆☆☆☆☆☆
じゅぺっとさん
評価:☆☆☆☆☆☆☆