ひかりのいし

◆◆◆◆◆

 ここは、人間の暮らす場所からは少し離れた森の中。大きな樹の下に掘った広い巣穴の中で、一匹のブラッキーが寝返りを打った。風がすーすー入って寒い。ここは一人で暮らすには、ちょっと大きすぎる巣穴だ。

「もしもし、ブラッキーさん、ブラッキーさん。」

 声がしてブラッキーは目を開けた。寒いと思ったら、巣穴の入口をふさぐ草をかき分けて、誰かがブラッキーを呼んでいた。聞き覚えのない、幼い声だ。まったく誰だ、こんな朝早く。ブラッキーはしぶしぶ起き上がって、巣穴から顔を出した。

「誰?」
「ブラッキーさん! おはようございます! はじめまして! ぼく、隣の森に住んでるイーブイです!」

 小さなイーブイがしっぽをぱたぱた振って、ブラッキーを見上げていた。ブラッキーはまだ半分眠っている目で、まじまじとイーブイを観察した。

「何か用?」
「はい! ブラッキーさん、恋のヒケツを教えてください!」

 ごほっ、とむせた息と共に眠気がいっぺんに吹き飛んだ。
 はぁ? と問い返したブラッキーに、イーブイはもう一度「恋のヒケツを教えてください!」としっぽをぱたぱたさせる。恋どころか秘訣の意味さえ分かっていないようなあどけない顔が、ブラッキーを見つめてきらきら輝き、答えを待っていた。
 ブラッキーは大きくため息をつき、突然やって来たこの幼いイーブイの事情をとりあえず知ることにした。

「誰から私のことを聞いたんだ?」

 聞けば出てきた名前は、この森に住むブラッキーの旧知、ドダイトスだった。たまたま散歩をしていたドダイトスが、しょんぼりしているイーブイを見つけて、声をかけてくれたのだと言う。

「あのー、ぼく、チラーミィちゃんのことがとっても好きなの。だけど、どうしたらいいか分からなくて、どうしようって困ってたら、ドダイトスおじさんがブラッキーさんのこと教えてくれたの。『そういうことならブラッキーが詳しいだろう。あれも昔はイーブイだったからね』って!」
「……あのバカ。余計なことを。」

 ぼそっとこぼしたブラッキーの悪態は、イーブイには聞こえなかったようだ。イーブイは相変わらずきらきらと瞳を輝かせて、ブラッキーが語る「恋のヒケツ」を待っていた。チラーミィに恋をして、親切なドダイトスに助けてもらって、頼った同族に冷たくされる可能性などみじんも考えていない幼いイーブイがあまりにもまぶしくて、ブラッキーはその光の意思に屈した。「分かったよ」と、二度目の大きなため息をつく。

「で? チラーミィちゃんには、好きって何回伝えたんだ?」
「うん? まだ一回も伝えてないよ。」
「はぁ?」
「まだ一回もお話したことないもん。」
「えぇ……。」
「あのね、チラーミィちゃんは歌がとっても上手なんだ。いつも切り株原っぱで歌ってるんだよ。とってもきれいな歌声で、耳やしっぽなんか湖のさざ波みたいに光って、うっとりしちゃう。ぼく、チラーミィちゃんのこと、大好きになっちゃったんだ。これって恋でしょ? ねえブラッキーさん。ぼくの恋、どうやったら上手くいくかなあ。」

 ブラッキーの三度目のため息が森を渡る風に溶けるまで、そう時間はかからなかった。



◇◆◆◆◆

 ともかくブラッキーとイーブイは、チラーミィに会いに行くことにした。さらに詳しく聞いたところ、イーブイは本当にチラーミィのことを遠くから見ているだけだったらしい。ということはチラーミィもイーブイのことは知らないはずで、下手にチラーミィから嫌われているよりはましか、とブラッキーは無理やり自分を慰めた。

「森の境にニンゲンがつくった道があるでしょう。そこに建ってる赤くて四角いニンゲンの巣が、切り株原っぱへ行く目印だよ。」
「ポケモンセンターのことだな。」
「へえ、そう言うんだ。ブラッキーさんは物知りなんだね。ぼくはニンゲンのこと全然知らないけど、ニンゲンって面白そうだよね!」
「さあ。私は興味ないな。人間にはあまり近づきたくない。」

 というブラッキーの言葉の後半と、イーブイの「あーっ」という叫び声が重なった。あれあれ、ポケモンセンター! とイーブイは木々の間から見える赤色を指し、覚えたての単語を楽しそうに舌の上で転がした。それから、ニンゲン見に行こうよとはしゃぎながら、ポケモンセンターの方向へ駆けていく。案の定、人間に近づきたくないというブラッキーの意向は届かなかったようだ。
 ブラッキーはこれでもう何度目になるか、はあぁと息を吐いて、イーブイの後を追った。

「あれ、ニンゲン誰もいないねえ。」
「そういう時もあるんだろ。」
「あっ、いた! ほらあっちの箱の前で何かしてる。」

 イーブイは壁みたいに大きなガラス窓から中をのぞいていた。ブラッキーは落ち着かなさそうに周囲をきょろきょろと警戒していたが、突然イーブイが「あああ!」とすっとんきょうな声を上げたので、思わず何事かとイーブイの視線の先、ポケモンセンターの中を見た。

「チラーミィちゃん!」
「何!?」
「あっ、ポケ違いだった。」
「なんだよ……。」
「でも見て、あのニンゲンの横にいるの、チラーミィだよ。あっ、いなくなった。」

 四角い箱形の機械の前に立つ人間が、手にしているモンスターボールにチラーミィを収納したのだった。それから人間は機械を少し操作すると、ややあって再びボールからポケモンを出した。現れたのは、

「うわぁ、イーブイだ! チラーミィがイーブイになっちゃった!」
「ああ、あれはたぶん、ポケモン交換だな。」
「ポケモンこうかん?」
「人間は自分のモンスターボールに入っているポケモンを、他人のものと取り換えることがあるんだ。それがポケモン交換。機械を使うと、ここにいない遠くの相手ともやり取りができるって、聞いたことがある。」
「えーっ、あんな一瞬で!? じゃあさっきのチラーミィ、もうここじゃない遠くへ行っちゃったの?」
「……さあな。」
「ぼく、いきなり大好きなチラーミィちゃんが側にいなくなったらやだなあ。」
「心配しなくてもおまえは人間に捕まってはいないし、チラーミィちゃんもまだ側にいない。さあもう気が済んだだろう。行くぞ。」

 言い捨ててブラッキーはくるりとポケモンセンターに背中を向け、歩き始めてしまった。イーブイは慌ててブラッキーの後を追った。
 ポケモンセンターから百歩進んだ所に生えている、オーロットみたいな形の木を朝日の方向に曲がる。小川を二つ飛び越えたら、苔むした岩の側、オレン林の奥にあるのが「切り株原っぱ」だった。名前の通り、森の中でちょっと開けた場所で、真ん中に大きな切り株がある。
 その切り株の上に今、一匹のチラーミィが立っていた。高く澄んだよく通る声で歌を歌っている。観客は風にそよぐ草木と、森に丸く切り取られた青い空くらいなのに、チラーミィはじつにのびやかに、まるで誰かに語りかけるような音を紡いでいた。ひょっとすると辺りには、同じようにこっそり耳を傾ける他のポケモンたちがいるのかもしれない。

「あの子だよ、チラーミィちゃん。ね、とっても歌が上手でしょう? ああ、今日も素敵だなあ。可愛いなあ。どきどきしてきた。どうしようブラッキーさん。どうしよう!」

 原っぱのすみっこからチラーミィを遠目に見て、イーブイはもう緊張し始めていた。落ち着け、とブラッキーは自分の前足をぽんとイーブイの頭に乗せる。

「とにかくはじめましての挨拶から始めなければ、どうにもならんだろう。」
「どきどきしちゃってできないよう。」
「困ったやつだな。ならばまずは素晴らしい歌への称賛を込めて、何かプレゼントを一緒に持っていくのはどうだ。」
「プレゼント?」
「うん。そうだな例えば、きれいな石とか……ああ、花もいいな。ほら、そこに咲いているだろう。」

 原っぱのすみっこのさらにすみっこに、小さな花の固まりがあった。花畑と呼ぶにはたいそう控えめな、けれども誰にも知られずに咲くのはあまりにも惜しい、月色の花だった。
 イーブイはその花にぴょんと寄り、鼻面を近づけた。

「わあ、これ、チラーミィちゃん喜んでくれるかなあ。」
「褒められて悪い気にはならないだろう。」
「よーし、ぼく、これをチラーミィちゃんに持っていくよ。そんで好きですって言うんだ!」
「待て待てそう急くな。いいか、まずは『はじめまして』だぞ。それから歌を聞いていたこと、その花が歌を聞かせてくれたことへの感謝と称賛であることを伝えて、その後に……」

 ところがイーブイは、ブラッキーが言い終えないうちにもう花を摘んで口にくわえ、喜び勇んでチラーミィの方に駆けだしていた。そしてちょうど歌い終えたチラーミィの足元、切り株の上に月色の花を置き、大きな声で言った。

「はじめまして! 大好きです! ぼくの恋人になってください!」

 チラーミィが目をまん丸くして、花とイーブイを交互に見つめていた。
 その日最大の絶望的に疲れたため息が、目を覆って頭を垂れたブラッキーの口からこぼれ落ちた。



◇◇◆◆◆

「もしもし、ブラッキーさん、ブラッキーさん。」

 幼いイーブイの声で目が覚めて、ブラッキーは起き上がった。
 結局、イーブイと一緒にチラーミィに会いに行ったあの日、下手な告白をしたイーブイをブラッキーは全力でフォローしに飛びだした。突然のことに驚き戸惑っているチラーミィに、イーブイの言う「大好き」は歌への称賛だということ、イーブイはまだ幼くて「恋人」の意味があまりよく分かっていないこと、ただチラーミィと仲良くなりたい主旨だということを伝え、事態はなんとか収束した。チラーミィはそういうことならと理解し、あれから二人は友達としてまあまあ上手くやっているらしい。
 イーブイはその後もよくブラッキーを訪れては、今日のチラーミィちゃんはどうだっただの、自分のことをイーブイちゃんと呼んでくれただの、逐一嬉しそうに話すようになった。ある時などは、早くチラーミィちゃんの恋人になれるよう大人になりたい、どうすればブラッキーさんみたいな大人になれるのと答えをせがんできたから、「大切なものを自分で守れるようになったら大人だ」と適当に言ってあしらったら、妙に納得して感謝された。
 だからその日のイーブイの訪問も、いつものことだった。やれやれ今日はどんなチラーミィちゃんの話だかと、あくびをして巣穴からのそりと這いだしたブラッキーの目に入ったのは、ところが、いつもと違うイーブイの様子だった。
 イーブイは、ポケモンのタマゴを持っていた。しかも今日はチラーミィも一緒だった。

「ブラッキーさん、どうしよう。チラーミィちゃんとお散歩してたらね、道にこんなのが落ちてたんだ。放っておいたらいけないと思って、とりあえず持ってきたんだけど。」

 それは薄い紫色のつやっとしたタマゴで、何かの抜け殻のようなものに包まれていた。へばりついた抜け殻ごとタマゴを抱え、イーブイとチラーミィは困り果てて耳を垂らしていた。

「タマゴの親は?」
「誰もいなかった。拾った場所の雰囲気も、なんかちょっと変だったの。」
「ねえブラッキーさんどうしよう。」
「うーん……ちょっと待ってろ。」

 そう言うとブラッキーはいったん巣穴の中に引っこみ、すぐに戻ってきた。ブラッキーは口に小さなノートをくわえていた。イーブイたちは興味津々で首を傾げる。

「それ、なあに?」
「これはノートだ。人間の道具。そのタマゴにくっついてる殻には見覚えがある。ほら……これだろう、きっと。」

 ノートを開き、何枚か紙をめくって、ブラッキーはあるページの上に指先を置いた。そこには抜け殻らしきもののスケッチと、人間が使う文字がいくつか書きつけられていた。

「『きれいなぬけがら』って書いてあるんだ。それからこっちの文字は『ヌメイル』。これはヌメイルの抜け殻だ。」

 イーブイたちは目を瞬かせながらブラッキーの手元をのぞきこんでいた。ノートには他にも、きのみやポケモンの落とし物などのスケッチが描かれていて、それぞれに人間の文字が添えられていた。もちろんイーブイとチラーミィには何と書いてあるか分からない。二人は尊敬と憧れの眼差しで、ブラッキーを見つめた。

「すごいなあ! ブラッキーさん、ニンゲンの文字が読めるんだ!」
「いや、私はほとんど読めない。内容を覚えているだけさ。これを読めたのは……」

 言いかけて、ブラッキーは急に口をつぐんだ。それからノートをぱたんと閉じると、それをくわえていったん巣穴の中に引っこみ、すぐに戻ってきた。ノートはもう持っていなかった。

「さあ手がかりは見つかっただろう。きっとヌメイルがそのタマゴのことを知っている。もしかすると親かもしれない。探すぞ。」

 イーブイたちは、どうして急に話をやめてしまったのかと不思議そうにブラッキーを見つめたが、答えが見つからなかったので互いに顔を見合わせた。なんとなく触れてはいけないところに踏みこんでしまったような気がする。それで二人とも、ブラッキーの気を損ねないよう、素直にうんとうなずいた。本当は、どうしてニンゲンのノートを持っているのとか、また今度見せてくれるとか尋ねたかったけれど、今はそれよりもタマゴのことを考えなきゃ。
 こうしてブラッキーとイーブイとチラーミィはきれいな抜け殻とタマゴを持って、タマゴの親探しに出かけた。



◇◇◇◆◆

 イーブイたちがタマゴを拾った場所は、なるほど確かに様子がおかしかった。何の変哲もない森の小道のはずなのに、木々の細い枝はいくつも折れ、地面の草はなぎ倒されてぺしゃんこになっている。まるで巨大なポケモンがここを通ったようにも見えるが、それにしては根元から折れている木は一本もないし、破壊の程度が中途半端だ。

「ここ、ここ! タマゴを見つけたのここだようー!」

 茂みの深い場所を示して、イーブイが言った。ブラッキーが近寄って見ると、タマゴが上に乗っていたのであろう形に倒れた草と、その側にきらきら光る何かが確認できた。粘液だった。やはりこのタマゴの親はヌメイルで間違いなさそうだ。
 粘液は切れ切れではあったが、森の奥へ続いていたから、ブラッキーたちはそれを追いかけた。
 風の強い日だった。ざわざわ鳴く木々が落とす葉っぱや小枝に埋もれて、何度か粘液を見失いかけたけれど、その度に三対の目鼻のうちどれかが手がかりを発見した。
 草木を中途半端に破壊する何者かの所業も続いていた。というか、粘液の軌跡を見る限りヌメイルはそれから逃げようとしているふうにも見える。タマゴを置いていくなんてよっぽどの慌てぶりだが、この森にそんな危険なポケモンがいただろうか。人間の仕業とも違うようだし。
 考えるブラッキーの傍ら、協力してタマゴを運んでいたイーブイとチラーミィが、突風にあおられてきゃあっと声を上げた。

「今日は本当に風が強いねえ。目がしぱしぱしちゃうよ。」

 言って何度もまぶたを開閉させるイーブイを見て、ブラッキーもあれと思った。そう、この風はなんだかただ強いだけの風じゃない。不快感を伴う何かが混ざっている。ぱちぱち体に当たり、目が痛くなるような、これは、

「砂嵐……。」

 木々がざわざわ鳴く。いや聞こえるのは葉擦れだけではない。空気を響かせているのは、薄羽がこすれ振動するような、能動的な音。大量の空を飛ぶ生き物が、ぐんぐん、わんわん、こちらへ近づいてきている音。

「伏せろ!!」

 ブラッキーが叫んだ直後、無数の黒い影と轟音が彼らの頭上をかすめ飛んだ。ビブラーバの大群だった。

「うわあああ! 何、あれ!?」
「ビブラーバだ! そういえば聞いたことがある。この辺りのナックラーは数年に一度、満月の日に集団で進化をすることがあると!」
「なんで!?」
「知らん!! おいまた来るぞ、伏せろ!」

 ビブラーバたちは狂ったように森の中を飛行した。進化したての体に戸惑い、歓喜し、自らの限界を確かめるべく力を放出した。周囲の弱い草花はなぎ倒され、木々の小枝が吹き飛んだ。
 イーブイとチラーミィはタマゴの上にかぶさって小さくなり、ブラッキーは彼らを覆うように身を低くした。

「くっ……これでは動けないな。二人とも大丈夫か。大人しくやつらが過ぎるのを待とう。」

 しかし、事はそう簡単にブラッキーの思惑通りにはいかなかった。
 暴れ飛ぶビブラーバのうち一体が、ブラッキーたちを視界に捉えた。透明な緑色の目の奥、真っ黒な瞳が同胞ではない何かを映して、狂喜に輝いた。

「チカラが満ちる! オレのチカラを! チカラを! ミテ!!」

 薄羽が激しく振動し、ビブラーバの中に新しく生まれた力を練りあげていく。空気のうねりは激しい竜の息吹となって、ブラッキーに真っ直ぐ狙いを定めた。

(だめだ、避けられない!)

 避ければイーブイたちに被害が及ぶ。ブラッキーはビブラーバの攻撃を真正面から受け止めた。体の芯からしびれるような衝撃。背中に小さな悲鳴が二つ聞こえたが、これほどの戦意をもつ相手を前に、振り返っている余裕はなかった。

「ええい、進化を受け止めきれない軟弱者め!」

 黄色い輪の形をしたブラッキーの体毛が怪しく光る。ビブラーバのガラスのような目玉の中でその光は幾重にも跳ね返り、視力を失わせ、脳を突き刺した。ビブラーバの飛行はにわかに不安定になり、何か衝撃波を起こそうとしたようだったが、木の幹に羽をぶつけ、地面に体を激突させるに終わった。
 ブラッキーは落ちたビブラーバに急接近すると、大きく口を開けて牙を見せ、喉元に食らいつく――ふりをして、強烈な回し蹴りでビブラーバをだまし討った。
 ひっくり返ったビブラーバは、完全に気絶していた。これでしばらくはこちらに手出しはしないだろう。

「ふう……。」

 とブラッキーが一息ついたのも束の間、突然、足元の地面がぐらりと揺れた。爆発するように噴きだした大地の力によって、ブラッキーの体はぽおんと高く投げだされる。成す術なく落下するブラッキーを襲ったのは、頭の割れそうな超音波、次いで全身の力が抜ける嫌な音。

「ぐあ、げふっ!」

 不快音波の二重奏の中でしたたかに地面に打ちつけられ、ブラッキーは肺の中で潰れた空気を吐きだした。イーブイとチラーミィの高い声がブラッキーを呼ぶ。ブラッキーはなんとか起き上がり、素早く周囲を見回した。
 三体ほどのビブラーバが群れから離れ、こちらに向かってわんわん羽音を立てていた。先のビブラーバと同じように、チカラを見てくれ! とかスバラシイ進化! とか騒いでいる。とても話の通じる状態ではない。といってさすがのブラッキーも一度に複数を相手にすることはできない。

(逃げなければ。)

 ブラッキーの判断と、ビブラーバたちの宴の開始は同時だった。
 あっ、と思った時にはもうビブラーバたちはイーブイとチラーミィを見つけ、技を繰り出す動作に入っていた。
 電光石火で突撃したブラッキーにより、一体が放った力は形になる前に散った。さらにその反動でもう一体を足蹴にし、なんとか攻撃の軌道をそらす。だが、残り一体だけはどうしようもなかった。
 竜の息吹が、イーブイたちめがけて襲いかかった。

「チラーミィちゃん!」

 その後の出来事は、まるでコマ送りの静止画のようにブラッキーの目に映った。イーブイたちに迫るエネルギーの塊。それに向かってためらうことなく飛びだしたイーブイ。イーブイの顔が強い光に照らされる。そして頭からしっぽまで、丸ごと竜の力に飲みこまれた。一瞬のことだった。


「イーブイ!!」
「イーブイちゃん!!」

 ブラッキーとチラーミィが急いでイーブイに駆け寄った。イーブイはぐったりと地に伏しており、チラーミィに名前を呼ばれて揺すられて、ようやく薄目を開けた。チラーミィちゃん、と名前を呼び返して微笑んだ後、イーブイはブラッキーの方を見た。

「ブラッキーさん……ぼく、大切なものを守れたよ。ぼく、大人になれたかなあ……?」

 バカ者と叱るにはイーブイはあまりにも健気で、よくやったと褒めるには事態はあまりにも悪い方向に転がっていた。ビブラーバの戦闘態勢はまだ解かれていない。どころか、こちらを見つめる緑色の目の数はさらに増えていた。
 どうする……!? 焦るブラッキーの耳に、かすかな声が届いた。

「こっち、こっちです! ここに逃げて! 早く!」

 驚いて声の方角を探すと、崖の下に小さな割れ目があるのが見えた。洞穴だ。声はあそこから聞こえる。
 迷っている時間はなかった。数体のビブラーバがすでに羽を激しくこすり合わせ、力を見せつけようと準備していた。

「チラーミィ、抜け殻をできるだけ遠くに投げ捨てろ! タマゴを持って私に付いてこい!」

 叫んでブラッキーは、倒れているイーブイの首根っこをむんずとくわえ、残りの力を振り絞って走り始めた。チラーミィはほんの少し戸惑ったが、すぐにブラッキーの言う通りにした。宙を舞いきらきら輝く抜け殻にビブラーバたちの視線は吸いこまれ、一斉に攻撃の軌道をそちらに向けた。
 その隙に、ブラッキーたちはからがら洞穴に滑りこんだ。

「はあ、はあ、はあ……」

 イーブイを降ろし、チラーミィとタマゴが無事に付いてきたことを確認すると、ブラッキーは激しい呼吸を繰り返しながらも、目付きは鋭く洞穴の様子を観察した。
 洞穴の出入口は草に隠され、ビブラーバたちはその存在にまったく気が付いていなかった。仮にあの狂乱の頭でブラッキーたちを探そうと思いついたとしても、見つかる可能性はかなり低いだろう。ここは安全だ。
 中は意外と広かった。ブラッキーたち三人が入っても、まだ奥に空間がある。その空間の暗がりの中に、ブラッキーは影を二つ見いだした。

「大丈夫ですか……?」

 影の一つがしゃべった。それはビブラーバに襲われるブラッキーたちを呼び、導いた声と同じだった。
 イーブイはまだぐんにゃりしていたが、時折うーんとうめいていて意識はある。命に別条はないだろう。ブラッキーの息も落ち着き始めていた。

「ああ、なんとか無事だ。ここに逃げられなかったら、危なかった。助けてくれてありがとう……」

 言いながらブラッキーは目を凝らし、はっとして大声を出した。

「ヌメイルか!」

 ブラッキーの興奮の理由が分からず、そうですが、と首を傾げるヌメイルたちの前に、ブラッキーはタマゴをずいと押しやって近付けた。とたん、ヌメイルたちが息を飲む。

「ああ……っ! 私たちのタマゴ! 一体どこで、どうして、これを、ああ! ありがとう! ありがとう!」

 予想的中だった。ブラッキーたちはほっとして、しばらくの間タマゴに抱きつきむせび泣くヌメイル夫妻を見守った。目のないヌメイルにとって涙を流すという動作はないのかもしれないが、感極まった言葉がぽろぽろこぼれるのと同時に身体中がてらてら粘液に光っていたから、きっと泣いていたのだろう。
 ヌメイルたちが落ち着くと、ブラッキーはタマゴの親を探していた経緯を説明した。それに答えてヌメイルたちも、突然ビブラーバの群れに襲われ、タマゴを置いて逃げざるをえなかったことを話してくれた。抜け殻はタマゴを隠すため、そして後で自分たちが見つける時の目印に、一緒に置いていったらしい。ビブラーバから逃げるために抜け殻を投げ捨ててしまったことをチラーミィが謝ると、全然気にしないでください、と笑った。

「私たちのタマゴを守ってくれて、本当にありがとう。」

 そう言って夫妻は、再度タマゴを二人で包みこみ、互いの存在を確かめあうように頭をくっつけ、触角をからませた。
 なんとか体を起こせるようになったイーブイが、そんなヌメイル一家の姿をぽーっと眺めていた。

「いいなあ。ぼくもいつか、チラーミィちゃんと……。」
「イーブイちゃん、何か言った?」
「あっ、チラーミィちゃん。いやっ、その、なんでもないよ。」

 隣にやって来たチラーミィに、イーブイは慌ててそう言い繕った。初めてチラーミィに告白した時の大失敗以来、自分の希望ばっかり相手に押しつけないようにとブラッキーにきつく戒められていたのを思い出したからだ。
 チラーミィは、ふうんとしっぽを二、三度揺らし続きを待ったが、イーブイがすっかり黙ってしまったので、やがて自分から口を開いた。

「……アタシもいつか、あんな家族ができたらいいな。いざという時は守ってくれる優しいパートナーと一緒に。」

 イーブイはちょっとびっくりしたように、目をぱちくりさせてチラーミィの顔を見た。チラーミィはいたずらっぽく微笑んで、イーブイの顔を見つめ返した。
 やれやれ、とブラッキーは深く息をついて地面に横たわり、大切な相手と時間を重ねる彼らを邪魔しないよう、そっと目を閉じた。



◇◇◇◇◆

 人間の暮らす場所からは少し離れた森の中。ブラッキーの巣穴の近くに、お月見するには最適の大きな岩が一つあった。
 時刻は真夜中、今日は満月。
 天然のベンチの上に寝そべって、ブラッキーは天頂高くにあるまん丸な月を眺めていた。遠くの空にビブラーバの群れが舞い、満月に時々模様を落とす。蝶のようにも花のようにも見える彼らの影のおかげで、月はまるで施された繊細な彫刻がひらひらと動く、不思議なランプのようだった。
 その青白い光に照らされて、ブラッキーは一つ大きく息を吸った。するとブラッキーの体毛の黄色い部分が内側からほんのりと輝いて、月の光に溶けこんだ。混ざりあった二つの波長は、優しい癒やしの力となる。自身に満ちていくエネルギーを感じながら、ブラッキーは一つ大きく息を吐いた。

「いい夜だなあ。」

 不意に聞こえた声の方向に、ブラッキーはぴくと耳を向けただけだった。それは警戒するに及ばない音だったからだ。ブラッキーの古い友人、ドダイトスが、のっそりとお月見岩に近づいた。

「今年はナックラーの進化の当たり年だったんだな。月に群れるビブラーバ、なんとも美しい。羽音も少し聞こえるね。まるで歌っているようじゃないか。あれがフライゴンになるのも納得できる。」
「確かにこうして見る分には、なかなか幻想的な景色だが。」

 大変だったんだぞ、とブラッキーは岩の隣に腰を落ち着けたドダイトスに向かって口をとがらせた。イーブイがタマゴを拾ってきて、親探しの結果ビブラーバたちに襲われた今日の出来事を、ぶすぶすと聞かせてやる。

「みんなで進化するってのは、あんなに頭が狂うもんかね、まったく……。おかげでまだ体中ずきずきするから、こうして月の光を浴びてるってわけだ。」

 ぽわ、とブラッキーの体に浮かぶ月輪が天上の光を吸った。その温かさに包まれていくらかは心地良さそうに目を閉じたブラッキーに、ドダイトスは「すまなかったね」と暗い声を差しだした。ブラッキーはぴょいと頭をもたげ、いぶかしげにドダイトスを見た。

「なぜおまえが謝る?」
「イーブイに君を紹介したことだよ。どうやっても君の心が晴れないようだから、もしかしてイーブイの無邪気な恋心に触れれば、何か変わるかもしれないって思ったんだ。あの子の目、とてもきらきらしていただろう。まるで光が意思を持ったような、そんな目だと俺は思った。だけどあの子の光は、かえって君を傷付けてしまったよね。……すまなかった。」

 ああ、とブラッキーはドダイトスの謝意を理解した。それから「いいよ、別に」と付け加えた。

「そんなんじゃないさ。それにイーブイと一緒にいれば多少にぎやかだし、まあうるさいぐらいだが……そこまで悪くない。」

 月が黙って二人を照らしていた。
 静かに満ちる時間にぽつりと言葉を落としたのは、ドダイトスだった。

「エーフィは、きっと帰って来るよ。」

 ブラッキーはしばらく答えなかった。やっと口から吐き出された空気は、「どうだか」と冷たくかすれた音になった。

「私はたぶん、あいつは人間のいる場所に行ったんだと思う。自分から人間に付いて行ったのか、それともゲットされてしまったのかは分からないけど。」
「……ああ。エーフィの人間好きは、本当に筋金入りだったね。人間の文字も読めたものな。それに君ら、人間の真似事をして、何か集めていただろう。エーフィは『図鑑埋め』って言ってたかな。」
「うん。人間の落とし物を拾ったのさ。きのみとかポケモンの羽とか、その辺にある物を人間が絵に描いたノート。それを使って、描かれてるのと同じ物を見つけて印を付ける遊びをしてたんだ。二人でほとんど見つけたんだよ。すごいだろ。」

 しかも、知ってるか? とブラッキーの話は続く。

「エーフィのやつ、人間が使う日付ってのまで覚えてさ。絵と同じ物を見つけたら、その日付をきのみの汁で書き加えるんだ。『数字』を使うんだと。私は数字を書くなんて器用なことはできなかったから、見つけたという印だけ……こういうバツの模様を、エーフィが書いた日付の横に加えていたんだ。エーフィが一緒に書きたいって言うから。でも、私の書く線はふにゃふにゃで、あんまり上手くいかなくてさ。じゃあ点をつなげて書くといいってエーフィが言うから、こう、汁を指先に付けて、てんてんって印を書いて……」

 その時と同じように指を動かし、身振りを加えて話すブラッキーの口は、しばらく止まらなかった。エーフィが何を言って、どんなことをし、その時ブラッキーがどう思ったのか。ブラッキーとエーフィが共に過ごした時間の話に、ドダイトスは時々うんうんと相づちを打ちながら、楽しそうに耳を傾けていた。
 けれどもブラッキーの声は、それを過去形でしか語れない事実にやがて弾力を失い、夜と同じ色になって地面に転がった。

「あいつは、人間が大好きだった。」

 その言葉を最後にブラッキーは、ぺっとりと力なく岩に寝そべった。
 ドダイトスは友人の小さな影を見つめ、そっと一つ息を吐いた。

「エーフィが一番大好きだったのは君だと、俺には見えたよ。」

 ビブラーバたちの飛行はまだ続いていた。側にいればあんなにうるさく凶暴だった彼らの羽音も、今は安らかなメロディだ。彼らがいるのは、仮に近づきたいと思ったってもう届かない、はるかな天空。昼間の出来事など幻だったかのような、遠い場所。

「なあドダイトス……。」

 ブラッキーはもうすっかり沈黙してしまったと思っていたから、ドダイトスはちょっと不意を突かれて顔を上げた。

「もしも、もしもの話だが。エーフィが人間に捕まってて、その人間がエーフィと他のポケモンを交換していたら。あいつはもう私たちの手なんて届かないどこか遠い場所に、行っちまった可能性もあるのかな。
 私は、もう、永遠に、エーフィと時間を重ねられないのかな。」

 いつまでも止まない雨のような、細く小さな声だった。
 ドダイトスは少し考えた後、そんなわけないだろう、と答えた。

「永遠なんてないさ。平凡に見えたって、日々は変わる。ナックラーは集まって進化するし、どこかで恋やタマゴが育つ。イーブイだって見違えたよ。君のおかげで、チラーミィとは上手くやっているんだろう? この間、仲良さそうに一緒に歩いているのを見たよ。」

 だから、とドダイトスは語気を強めた。

「エーフィも、きっと帰ってくるよ。」

 本当は、それが順接でつながる話ではないとドダイトスには分かっていた。それは合理的な説得ではなく、ひとえにドダイトスの慰めだったし、だからその後ブラッキーが返した「うん」という小さなうなずきもまた、友人の思いやりに対する感謝の言葉にすぎなかった。

「ああ……こんなに胸が痛いのに、月の光を使っても、ちっとも楽にならないな。」

 ブラッキーの月光は今にも消えいりそうだった。体の傷はもうすっかり治っているのにその技を使い続けていることを、ドダイトスは初めから知っていた。
 月に浮かぶビブラーバの影が、一つ、また一つと、闇夜の中に消えていった。



◇◇◇◇◇

 タマゴの親探し事件から、何度目かの太陽が昇った日のことだった。
 ひとりぼっちの広い巣穴で目を覚ましたブラッキーは、うーんと伸びをして、あくびして、きのみをかじりながら、今日は何をしようと考えた。
 ここでエーフィを待ち続けることがあまり賢い選択ではないことを、ブラッキーはなんとなく理解していた。毎日は平凡に過ぎていたけれども、実は昨日と同じものは何一つない。つぼみはいつか花開いているし、川原に転がっていたすべすべの石は気がつくとどこかに消えていた。よく遊びに訪れるイーブイとチラーミィが、だんだん彼らの時間にブラッキーを必要としなくなってきているのも、分かっていた。ブラッキーも、少しずつ変わらなければならない。

(決めた。今日はイーブイとチラーミィに会いに行こう。そしてこの巣穴をあの子らに引き渡すことを提案しよう。)

 イーブイとチラーミィは最近、一緒に暮らすためのねぐらを探していた。ここなら二人暮らしにはちょうどいい大きさだ。ブラッキーはどちらかの巣を譲ってもらえればいい。そうすればブラッキーも、眠っている時にふっと目を覚まして、隣がぽっかり空いている寒さに震えることはなくなるだろう。
 引っ越しとなると巣穴の物を片付けないとな、と思ったブラッキーの目は、自然と例のノートに引き寄せられた。エーフィと一緒に図鑑埋めごっこをして遊んだ、人間の落とし物。この絵が一番お気に入りだと話したり、本物はどんなだろうねと想像したりした二人の思い出が詰まった、ブラッキーの宝物。実はあと一つで、すべてのページに印がついていた。絶対に全部見つけてみせるぞ! と意気込んでいたエーフィの輝く決意が果たされることは、きっとない。もしもそんなことがあるとすればそれはよっぽど上手く何かがビンゴした時で、そんな偶然が起きる可能性は限りなくゼロに近いということは、ブラッキーが一番よく知っていた。ノートはこれからもずっと、最後に二人で印を付けたあの時のままだ。

(けれど世界がいつも何か少しずつ変化していくものならば、そんなちっぽけな永遠を抱きしめることくらい、許されたっていいよな。)

 一度心を決めてしまえば、踏み出す足は結構軽い。ブラッキーはいつもよりちょっと元気よく、巣穴の外に飛びだした。イーブイたちの所に行こう!
 と歩き始めた矢先、がさがさと目の前の茂みが揺れたから、ああイーブイたちが来たなと思った。これは手間が省けて好都合だ。
 ところが現れたのは、藤色の絹毛を持つ一匹のポケモンだった。
 一瞬、イーブイが進化したのかと思った。チラーミィへの愛を成就させ、その幸福に満ちて進化したのかと。でも違う。今、目の前にいるそのポケモンを進化させることになった愛情と幸福はもっとずっと前のもの。紛れもなく、ブラッキー自身に由来するもの。


「ただいま。」


 あまりにも唐突なことで、ブラッキーはただ立ち尽くすばかりだった。でも何度見ても、それはブラッキーがずっと待っていた、あのエーフィだった。最後に会った時よりちょっと汚れて毛づやも悪くなっていたけれど、やっぱりそれはブラッキーがずっと待っていた、あのエーフィに間違いなかった。
 エーフィは草を編んで作ったスカーフを首に巻いていた。スカーフの胸元は小さな袋になっていて、きらりと光る白い石が一つ、編みこむように固定されていた。

「『ひかりのいし』、やっと見つけたんだ。」

 にこっとエーフィが笑う。

「あなたの一番のお気に入り。これだけは絶対、絶対、本物を見つけたくって。遅くなっちゃって、ごめんね?」

 ブラッキーの口元が、ふるふると震える。喉がからからに乾いて、胸がじんじん焼けるように熱くて、伝えたい言葉がはち切れそうなくらい湧いてきた。視界がにじんで、エーフィの姿がじわりとぼやける。だからその姿が完全に見えなくなってしまう前に、ブラッキーは急いでエーフィに向かって突進し、我先に飛び出そうと大混乱を起こしている単語の一つをひっつかんで思いっきり口を開けた。

「バカーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!!」

 押し倒されてぐえっと潰れたエーフィのうめき声の後、わんわん泣きじゃくるブラッキーの大声が森中に響き渡った。





 ここは、人間の暮らす場所からは少し離れた森の中。大きな樹の下に掘ったちょうどいい広さの巣穴の中で、一匹のブラッキーと一匹のエーフィが一冊のノートを仲良くのぞきこんでいた。開いたページに描いてある石と同じ物が、側に置かれて輝いていた。
 きのみをすりつぶして作ったインクに、エーフィがちょんと指先を浸す。そして人間が使う文字を、器用に丁寧に書き加えた。同じようにしてブラッキーも、エーフィよりは少しぎこちなく、紙面に色を加えていく。
「ひかりのいし」の名前の横に、きのみの汁で書いた日付と、てんてんで描いたバツ印が、浮かびあがった。