メレメレのビーチに散る夢のような夜
アシレーヌは走レーヌ
「波音」「マスク」「神経衰弱」
「さーて今日もこのお時間がやって参りました、毎月恒例、バトル・ロイヤル!本日は特別にいつものロイヤルドームを離れ、波音の響く美しきメレメレのビーチよりお送りしております!」
メレメレのビーチに響くテレビでしか聞いたことの無い実況者の声。テレビでしか見たことの無いリング。何もかもが夢のようだ。
そうそう、僕はメレメレのトレーナーズスクールに通ってるごく普通の生徒。2年先に控えるしまめぐりの始まりに備えて日々勉強してる。
今日は家の近くの砂浜で暮らしてる友達のオシャマリを連れ、バスに乗ってこのハウオリシティのビーチにやってきた。
「どう?オシャマリ。面白そう?」
「♪」
オシャマリは嬉しそうに頷いた。
ただ僕はオシャマリの笑顔を見て完全には喜べなかった。オシャマリと遊べるのは今日が最後だからだ。
もうじき十年に一度起こる海流の流れの変化が発生するため、オシャマリたちの群れは遠く離れた海岸に行ってしまうそうだ(byククイ博士)。
少し寂しいけど....今日は楽しもう。オシャマリとの思い出作りのためにね。
「さーあ赤コーナー!みんなのヒーロー、ロイヤルマスク!!」
メレメレのビーチは大歓声だ。隣にガオガエンを引き連れてご登場。
「緑コーナー!今日こそ打倒、ロイヤルマスク!ブラックロイヤリティ!」
ロイヤルマスクのライバル的存在。場内から大ブーイングが沸き起こる。連れているのはシザリガー。アローラでは滅多に見ないポケモンだ。
「青コーナー!ルール違反?そんなの知らねぇぜ!ダークネススター!」
こちらもロイヤルマスクの敵役。連れはヨノワール。しばしばルールを完全無視するため嫌われている存在だ。大ブーイングはやむ気配なし。
「黄コーナー!今日は誰が標的?イエローブロッカー!」
この人は毎日一人の人に執着して攻撃する。この人の気分によって試合時間が大きく左右される。が、コールされても出てこない。おかしいな?
「おおっと!今入ってきた情報によると、イエローブロッカーは寝坊のためここに間に合わないそうだ!」
場内のブーイングはさらに大きくなる。しかし、
「では、今日の黄コーナーはここに来ている観客の皆さんから選ばせて頂きます!リングに上がれるラッキーピーポーは~?」
スポットライトが場内をぐるぐる駆け巡る。皆が我先にと手を挙げる。僕?そんなことしないよ。僕なんかがリングに上がってもロイヤルマスクの足を引っ張ることしかしないと思うから。
「その方はーー、こちら!」
その瞬間、僕にスポットライトの光が集まる。
「ま、まさか!」
「さあ!ラッキーボーイ!リングの上にどーぞ!」
皆に押されるようにしてリングに上げられる。それも憧れのロイヤルマスクの隣に。
「君、名前は?」
憧れのロイヤルマスクの声。近くで聞くとどこかで聞き覚えのある声に聞こえるな、と思いつつ、
「リュウヤ...です」
と答える。
「さあ、黄コーナーも決まった!!乱闘の始まりだーーっ!!」
ゴングが鳴り響く。観客の歓声も熱くなってきた。
「君のパートナーはオシャマリか。よろしくな!」
ロイヤルマスクはそう言うと、早速ガオガエンに指示を飛ばす。
「ガオガエン、ヨノワールにDDラリアットだ!!」
「ヨノワール、影うちで背後を取れ。」
冷静な指示。これもダークネススターの持ち味だ。
「そのままガオガエンを羽交い締め!」
ガオガエンは羽交い締めにされ身動きが取れなくなる。
「お兄ちゃんはこっちだぜ!シザリガー、クラブハンマー!」
ブラックロイヤリティがニヤリと笑う。まずい!ガオガエンに気を取られていた!
「オシャマリ、アクアジェットで緊急回避して!」
オシャマリは激流に乗り辛うじて鉄拳を回避する。
「なんてな。シザリガー、拘束されてるガオガエンにクラブハンマーだーー何っ!?」
既にガオガエンは拘束を解き、ヨノワールを吹き飛ばしていた。しかし、シザリガーの行動も素早かった。ガオガエンにすぐ接近し、クラブハンマーを直撃させる。怯むガオガエン。そこにシャドーパンチを入れるヨノワール。
「まずいよオシャマリ...」
僕はオシャマリに呟く。だが、オシャマリは違った。熱い眼差しだった。
「そうだよね、諦めちゃだめだよね。オシャマリ、行くよ!シザリガーにチャームボイス!」
確かにオシャマリの火力では焼け石に水かも知れない。しかし、その少しの水が状況を変えることもある。シザリガーの気がそれたのだ。その隙をロイヤルマスクとガオガエンが逃す訳がない。
「ガオガエン、ヨノワールに地獄突き!」
ヨノワールが吹き飛ぶ。シザリガーがクラブハンマーの構えを見せるが、それを回避し、シザリガーに向き直る。ふと吹き飛んだヨノワールの方を見ると、かなり体力は減っているようだがダークネススターから何か金属っぽいものを受け取っていた。それを腕にはめる。よく見ると、それは『メリケンサック』だった。それもヨノワール用に作られた。
「なんとかしなきゃ...そうだ!オシャマリ、アクアジェット!」
ヨノワールが影に潜る前に!なんとか間に合って!そう念じる僕。
オシャマリの必死の一撃は、影に潜りかけたヨノワールに直撃。影に潜る途中だったからか、少なくないダメージを与えることに成功する。また、ヨノワールが影から引きずりだされたことに起因する一瞬の隙も生んだ。
「決めるよ!ハイドロポンプ!」
この前特訓して覚えたばかりの技でヨノワールをリングから吹き飛ばす。こちらに気付いたロイヤルマスクがこちらを向いてグーサインを出してくれた。観客も大歓声。よくやったな!ハラハラして神経衰弱になるところだったぞ!色々な声が聞こえてきた。
しかし、勝利の影響はこれだけでは無かった。オシャマリの体が光り始めたのだ。
「オシャマリ...?」
その光はオシャマリの体全体を包み込む。この光、幼いころに見た今のオシャマリがアシマリからオシャマリに進化したときに見た光だ!進化だ!
その光が夜空に散った時、そこにいたのはとても綺麗で、美しいポケモンだった。
「凄いぞ!アシレーヌじゃないか!」
ロイヤルマスクの叫ぶ声。
「アシレーヌ...?凄いよ!凄い凄い!」
喜びまくる僕の傍らで、アシレーヌも嬉しそうに笑っていた。
「ーー感動の時間に水を差して悪いが、シザリガー、ガオガエンに再度クラブハンマー!」
ガオガエンはシザリガーのクラブハンマーを喰らい、ついに手を地につける。かなり辛そうだ。
「オシャ...いやアシレーヌ!チャームボイス改めムーンフォース!!」
夜空に輝く月の力を借りて、アシレーヌはエネルギーの塊をシザリガーに向け飛ばす。効果抜群、シザリガーをリングの外へ吹き飛ばす。既にオシャマリのころの火力とは段違いに強くなっていた。観客の歓声は最高潮。あらゆる角度から指笛や僕とアシレーヌを称える声が聞こえる。
だが戦いは終わらない。僕とアシレーヌはロイヤルマスク、ガオガエンと決着を着けなくてはならない。それがバトル・ロイヤルのルールだからだ。
「君の技は封じさせてもらうよ!ガオガエン、地獄突きだ!」
効果はいまひとつ。しかしアシレーヌには効果てきめんだ。喉を押さえるアシレーヌ。アシレーヌの水技、うたかたのアリアはアシレーヌの喉を活かして打つ技だ。その喉を封じられるとムーンフォースしか有効打が無くなる。
「残念だが、君に負ける訳にはいかない。ガオガエン、日本晴れ!」
辺りが急に現れた太陽の光に包まれる。これではムーンフォースも大した威力が出ない。
「こんな...ところで、憧れの人に負けてたまるかーーっ!!」
僕の腕に着けていたZリングが光り輝く。それと同時にアシレーヌの体にZパワーが集まる。
「まずい、あれは!」
ロイヤルマスクもびっくり仰天。僕は叫ぶ。
「わだつみのシンフォニア!!」
巨大な水の塊がガオガエンの上空に。水蒸気で日光も隠れてしまう。
僕は腕を振る。と同時に水の塊はガオガエンの上に落ちる。効果抜群だ!
「成る程...Zパワーは地獄突きの効果を無視するのを忘れていたよ。君の勝ちだ。」
観客の大歓声は収まる気配がない。その歓声に包まれながら、メレメレの夜は更けていく...
メレメレのビーチに響くテレビでしか聞いたことの無い実況者の声。テレビでしか見たことの無いリング。何もかもが夢のようだ。
そうそう、僕はメレメレのトレーナーズスクールに通ってるごく普通の生徒。2年先に控えるしまめぐりの始まりに備えて日々勉強してる。
今日は家の近くの砂浜で暮らしてる友達のオシャマリを連れ、バスに乗ってこのハウオリシティのビーチにやってきた。
「どう?オシャマリ。面白そう?」
「♪」
オシャマリは嬉しそうに頷いた。
ただ僕はオシャマリの笑顔を見て完全には喜べなかった。オシャマリと遊べるのは今日が最後だからだ。
もうじき十年に一度起こる海流の流れの変化が発生するため、オシャマリたちの群れは遠く離れた海岸に行ってしまうそうだ(byククイ博士)。
少し寂しいけど....今日は楽しもう。オシャマリとの思い出作りのためにね。
「さーあ赤コーナー!みんなのヒーロー、ロイヤルマスク!!」
メレメレのビーチは大歓声だ。隣にガオガエンを引き連れてご登場。
「緑コーナー!今日こそ打倒、ロイヤルマスク!ブラックロイヤリティ!」
ロイヤルマスクのライバル的存在。場内から大ブーイングが沸き起こる。連れているのはシザリガー。アローラでは滅多に見ないポケモンだ。
「青コーナー!ルール違反?そんなの知らねぇぜ!ダークネススター!」
こちらもロイヤルマスクの敵役。連れはヨノワール。しばしばルールを完全無視するため嫌われている存在だ。大ブーイングはやむ気配なし。
「黄コーナー!今日は誰が標的?イエローブロッカー!」
この人は毎日一人の人に執着して攻撃する。この人の気分によって試合時間が大きく左右される。が、コールされても出てこない。おかしいな?
「おおっと!今入ってきた情報によると、イエローブロッカーは寝坊のためここに間に合わないそうだ!」
場内のブーイングはさらに大きくなる。しかし、
「では、今日の黄コーナーはここに来ている観客の皆さんから選ばせて頂きます!リングに上がれるラッキーピーポーは~?」
スポットライトが場内をぐるぐる駆け巡る。皆が我先にと手を挙げる。僕?そんなことしないよ。僕なんかがリングに上がってもロイヤルマスクの足を引っ張ることしかしないと思うから。
「その方はーー、こちら!」
その瞬間、僕にスポットライトの光が集まる。
「ま、まさか!」
「さあ!ラッキーボーイ!リングの上にどーぞ!」
皆に押されるようにしてリングに上げられる。それも憧れのロイヤルマスクの隣に。
「君、名前は?」
憧れのロイヤルマスクの声。近くで聞くとどこかで聞き覚えのある声に聞こえるな、と思いつつ、
「リュウヤ...です」
と答える。
「さあ、黄コーナーも決まった!!乱闘の始まりだーーっ!!」
ゴングが鳴り響く。観客の歓声も熱くなってきた。
「君のパートナーはオシャマリか。よろしくな!」
ロイヤルマスクはそう言うと、早速ガオガエンに指示を飛ばす。
「ガオガエン、ヨノワールにDDラリアットだ!!」
「ヨノワール、影うちで背後を取れ。」
冷静な指示。これもダークネススターの持ち味だ。
「そのままガオガエンを羽交い締め!」
ガオガエンは羽交い締めにされ身動きが取れなくなる。
「お兄ちゃんはこっちだぜ!シザリガー、クラブハンマー!」
ブラックロイヤリティがニヤリと笑う。まずい!ガオガエンに気を取られていた!
「オシャマリ、アクアジェットで緊急回避して!」
オシャマリは激流に乗り辛うじて鉄拳を回避する。
「なんてな。シザリガー、拘束されてるガオガエンにクラブハンマーだーー何っ!?」
既にガオガエンは拘束を解き、ヨノワールを吹き飛ばしていた。しかし、シザリガーの行動も素早かった。ガオガエンにすぐ接近し、クラブハンマーを直撃させる。怯むガオガエン。そこにシャドーパンチを入れるヨノワール。
「まずいよオシャマリ...」
僕はオシャマリに呟く。だが、オシャマリは違った。熱い眼差しだった。
「そうだよね、諦めちゃだめだよね。オシャマリ、行くよ!シザリガーにチャームボイス!」
確かにオシャマリの火力では焼け石に水かも知れない。しかし、その少しの水が状況を変えることもある。シザリガーの気がそれたのだ。その隙をロイヤルマスクとガオガエンが逃す訳がない。
「ガオガエン、ヨノワールに地獄突き!」
ヨノワールが吹き飛ぶ。シザリガーがクラブハンマーの構えを見せるが、それを回避し、シザリガーに向き直る。ふと吹き飛んだヨノワールの方を見ると、かなり体力は減っているようだがダークネススターから何か金属っぽいものを受け取っていた。それを腕にはめる。よく見ると、それは『メリケンサック』だった。それもヨノワール用に作られた。
「なんとかしなきゃ...そうだ!オシャマリ、アクアジェット!」
ヨノワールが影に潜る前に!なんとか間に合って!そう念じる僕。
オシャマリの必死の一撃は、影に潜りかけたヨノワールに直撃。影に潜る途中だったからか、少なくないダメージを与えることに成功する。また、ヨノワールが影から引きずりだされたことに起因する一瞬の隙も生んだ。
「決めるよ!ハイドロポンプ!」
この前特訓して覚えたばかりの技でヨノワールをリングから吹き飛ばす。こちらに気付いたロイヤルマスクがこちらを向いてグーサインを出してくれた。観客も大歓声。よくやったな!ハラハラして神経衰弱になるところだったぞ!色々な声が聞こえてきた。
しかし、勝利の影響はこれだけでは無かった。オシャマリの体が光り始めたのだ。
「オシャマリ...?」
その光はオシャマリの体全体を包み込む。この光、幼いころに見た今のオシャマリがアシマリからオシャマリに進化したときに見た光だ!進化だ!
その光が夜空に散った時、そこにいたのはとても綺麗で、美しいポケモンだった。
「凄いぞ!アシレーヌじゃないか!」
ロイヤルマスクの叫ぶ声。
「アシレーヌ...?凄いよ!凄い凄い!」
喜びまくる僕の傍らで、アシレーヌも嬉しそうに笑っていた。
「ーー感動の時間に水を差して悪いが、シザリガー、ガオガエンに再度クラブハンマー!」
ガオガエンはシザリガーのクラブハンマーを喰らい、ついに手を地につける。かなり辛そうだ。
「オシャ...いやアシレーヌ!チャームボイス改めムーンフォース!!」
夜空に輝く月の力を借りて、アシレーヌはエネルギーの塊をシザリガーに向け飛ばす。効果抜群、シザリガーをリングの外へ吹き飛ばす。既にオシャマリのころの火力とは段違いに強くなっていた。観客の歓声は最高潮。あらゆる角度から指笛や僕とアシレーヌを称える声が聞こえる。
だが戦いは終わらない。僕とアシレーヌはロイヤルマスク、ガオガエンと決着を着けなくてはならない。それがバトル・ロイヤルのルールだからだ。
「君の技は封じさせてもらうよ!ガオガエン、地獄突きだ!」
効果はいまひとつ。しかしアシレーヌには効果てきめんだ。喉を押さえるアシレーヌ。アシレーヌの水技、うたかたのアリアはアシレーヌの喉を活かして打つ技だ。その喉を封じられるとムーンフォースしか有効打が無くなる。
「残念だが、君に負ける訳にはいかない。ガオガエン、日本晴れ!」
辺りが急に現れた太陽の光に包まれる。これではムーンフォースも大した威力が出ない。
「こんな...ところで、憧れの人に負けてたまるかーーっ!!」
僕の腕に着けていたZリングが光り輝く。それと同時にアシレーヌの体にZパワーが集まる。
「まずい、あれは!」
ロイヤルマスクもびっくり仰天。僕は叫ぶ。
「わだつみのシンフォニア!!」
巨大な水の塊がガオガエンの上空に。水蒸気で日光も隠れてしまう。
僕は腕を振る。と同時に水の塊はガオガエンの上に落ちる。効果抜群だ!
「成る程...Zパワーは地獄突きの効果を無視するのを忘れていたよ。君の勝ちだ。」
観客の大歓声は収まる気配がない。その歓声に包まれながら、メレメレの夜は更けていく...